BtoB企業のリード獲得を支援していると、ホワイトペーパーの相談は必ずと言っていいほど出てきます。ただ、その多くは「作ったけれどダウンロードされない」という段階からの相談です。

中身を見せてもらうと、共通する原因があります。自社のサービス紹介がそのままPDFになっているケースです。会社概要があって、機能一覧があって、料金表があって、最後に問い合わせ先。これは営業資料であって、ホワイトペーパーではありません。

ホワイトペーパーは、見込み客の課題を解決する情報を提供する代わりに連絡先を受け取る資料です。読み手にとっての価値が先で、自社の紹介は後ろに置きます。この順番が逆になっている資料は、そもそもダウンロードされませんし、されても商談につながりません。

作り方の流れは、テーマ決め、構成、フォーム設計、配布の4つです。順に整理します。

テーマは「検討フェーズ」から逆算する

最初に決めるのはテーマですが、ここで自社が話したいことを起点にすると失敗します。起点にするのは、見込み客が今どの検討段階にいるかです。

段階ごとに、刺さるテーマは変わります。

検討フェーズ読み手の状態向いているテーマ
課題認識前問題があることに気づいていない業界動向のまとめ、他社の取り組み調査、チェックリスト
課題認識後解決したいが方法を知らない手法の比較、進め方の手順書、失敗事例集
比較検討中発注先を選んでいる選定基準の整理、費用相場、導入事例、RFPの作り方

課題認識前の層に「導入事例集」を出しても響きませんし、比較検討中の層に「業界動向まとめ」を渡しても検討は進みません。獲得したいリードの質によって、狙うフェーズを決めます。

すぐ商談化するリードが欲しいなら比較検討フェーズ向け、母数を積み上げてナーチャリングしたいなら課題認識前後のテーマになります。前者はダウンロード数が少なく商談率が高い、後者はその逆です。どちらが正しいということはなく、営業体制がどちらを処理できるかで決まります。リード獲得手法全体の中での位置づけはBtoBのリード獲得方法で整理しています。

構成テンプレート

テーマが決まったら構成です。実務でよく使う型を挙げます。20〜30ページ程度を想定しています。

  1. 表紙(タイトル・サブタイトル)
  2. 目次
  3. この資料で分かること(3〜4行)
  4. 課題の整理(読み手が直面している状況を言語化する)
  5. 課題が起きる原因(構造的な説明)
  6. 解決の選択肢(複数案を並べ、それぞれの向き不向きを書く)
  7. 進め方の手順(読み手が明日から動ける粒度で)
  8. よくあるつまずき
  9. 事例(数値付き。出せない場合は業種と施策だけでも可)
  10. 自社サービスの紹介(1〜2ページ)
  11. 会社概要・問い合わせ先

重要なのは、10番が全体の1割程度に収まっていることです。ここが5ページも6ページもあると、読み手は「結局売り込みか」と受け取ります。

3番の「この資料で分かること」は省略されがちですが、離脱を防ぐ意味で効きます。ダウンロードした人が最初に確認するのは、自分に関係がある資料かどうかです。ここで示せていないと、開いてすぐ閉じられます。

6番で複数の選択肢を並べる点も外さないでください。自社の手法だけを書くと、資料としての信頼性が落ちます。他の選択肢にも触れたうえで「こういう条件ならこちらが向いている」と整理するほうが、結果的に自社の説得力が上がります。

タイトルで大半が決まる

ダウンロード数に一番効くのはタイトルです。中身が同じでもタイトルを変えるだけで数字が変わります。

避けたいのは、抽象的で範囲が広いタイトルです。「BtoBマーケティングのすべて」のような資料は、何が得られるか分からないため選ばれません。

具体的にする方向は3つあります。対象を絞る、数字を入れる、得られる結果を書く。「製造業向け」「7つの」「商談化率を上げる」といった要素を組み合わせます。「製造業のWebサイトで商談化率を上げる7つのチェックポイント」であれば、誰向けで何が得られるかが一読で伝わります。

タイトルの付け方の考え方はSEO記事の書き方とも共通する部分があるので、あわせて参考にしてください。

ダウンロードフォームの設計

資料の中身と同じくらい、フォームで数字が変わります。

項目数は3〜5に絞るのが基本です。会社名、氏名、メールアドレス。この3つがあれば最低限のフォローはできます。役職、電話番号、従業員規模、課題の選択肢と増やしていくと、1項目ごとに完了率が落ちます。

営業部門からは「電話番号がないと動けない」と要望が出ることが多いですが、ここは獲得数とのトレードオフになります。判断の考え方としては、獲得後にどこまでフォローする体制があるかで決めます。インサイドセールスの人員が限られているなら、項目を増やして数を絞り込むほうが結果的に効率が良いこともあります。逆に、メール中心のナーチャリングをするなら項目は最小限で構いません。

入力そのものの負担を下げる工夫はフォーム最適化(EFO)にまとめています。項目数以外にも、エラー表示の出し方や入力補助で完了率は動きます。

個人情報の取り扱いで押さえる点

フォームで個人情報を取得する以上、法令上の対応が必要です。

個人情報保護法では、個人情報を取り扱うにあたって利用目的をできる限り特定することが求められ(第17条)、取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人へ通知または公表することが定められています(第21条)。本人から直接書面等で取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示する必要があります(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/ )。

実務としては、フォームの近くにプライバシーポリシーへのリンクを置き、取得した情報を営業連絡やメール配信に使う旨を書いておく形が一般的です。「資料送付のみに使用します」と書いておきながら営業電話をかけると、明示した利用目的の範囲を超えることになります。ここは営業部門と事前にすり合わせておいたほうが安全です。

配布して初めて数字になる

作って自社サイトに置くだけでは、ダウンロードはほとんど発生しません。配布の設計まで含めて1つの施策です。

自社サイトからの流入では、関連するテーマの記事から誘導するのが基本になります。記事を読んで課題を認識した直後が、資料をダウンロードする動機が最も強いタイミングです。記事の末尾だけでなく、本文中の関連する箇所にも設置します。オウンドメディア側の設計はオウンドメディアの作り方で、記事とホワイトペーパーを組み合わせた全体設計はコンテンツマーケティングとはで扱っています。

広告を使う場合は、ホワイトペーパーのダウンロードを直接のコンバージョンに設定します。問い合わせと比べてハードルが低いため、獲得単価を抑えやすい手法です。予算配分の考え方は広告費を抑えてCVを増やす方法を参考にしてください。

メールマガジンや展示会でのQRコード配布も有効です。特に展示会は、その場で名刺交換した相手に後日資料を送る流れが自然に作れます。

効果の測り方

ホワイトペーパーの評価をダウンロード数だけで行うと、判断を誤ります。見るべき指標は3つあります。

1つ目はダウンロード数。テーマとタイトルと配布量の結果です。

2つ目は商談化率。ダウンロードした人のうち、どれだけが商談に進んだか。ここが低い場合、テーマの検討フェーズが実際の営業ターゲットとずれています。

3つ目は受注につながった件数。最終的にはここで判断します。ダウンロード数が多くても受注ゼロなら、獲得しているリードの層が違うということです。

この3つを並べて見ると、次に作るべき資料のテーマが見えてきます。商談化率が高いテーマがあれば、その周辺で2本目、3本目を作る。数だけ多くて商談化しないテーマは、配布を止めるか内容を見直します。指標の設計そのものはKPI設計の考え方にまとめています。

1本目に何を作るか迷ったら

これから始める場合、最初の1本は比較検討フェーズ向けのテーマをお勧めします。

理由は、効果が測りやすいからです。商談化までの期間が短いため、資料の良し悪しを数ヶ月で判断できます。課題認識前の層向けの資料は、成果が出るまでに時間がかかるので、1本目としては評価が難しくなります。

具体的には、「選定基準の整理」「費用相場」「よくある失敗と対策」あたりが作りやすく、かつ検討中の相手に刺さります。自社が普段の商談で繰り返し説明している内容が、そのままテーマになることも多いです。営業担当が同じ説明を何度もしているなら、それは資料化する価値があるということです。

サイト側の受け皿ができていない場合

ここまで資料の作り方を書いてきましたが、ダウンロードされる前段として、そもそもサイトに人が来ていて、資料の存在に気づける状態になっているかという問題があります。

相談を受けるケースでは、資料そのものより導線に原因があることが少なくありません。記事は読まれているのにダウンロードボタンが本文の最下部にしかない、フォームがスマートフォンで操作しづらい、ページの表示に時間がかかって離脱している。こうした部分は、資料を作り直すより先に手を入れたほうが効果が早く出ます。

株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズでは、サイトの現状分析から導線設計、フォーム改善、ABテストによる検証までを一貫して支援しています。ホワイトペーパーを用意したものの成果が出ていない場合、どこがボトルネックになっているかを数字で切り分けるところからお手伝いできます。

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参考文献