あるBtoB向けSaaS企業のマーケティング担当者から、「とにかくリードが足りない。展示会に出て名刺は集めているが、商談にほとんどつながらない」という相談を受けたことがあります。話を聞くと、獲得手段が展示会一本に偏っていて、集めたリストにその後どう接触するかの設計がありませんでした。

BtoBのリード獲得で成果を出すには、手法を一つに頼らず、すぐに商談化する見込み客を狙う「刈り取り型」と、時間をかけて見込み客を育てる「資産型」を組み合わせることが基本になります。そのうえで、集めたリードを商談へ引き渡す導線まで設計して初めて数字が動きます。この記事では、代表的なリード獲得手法を検討フェーズ別に整理し、選び方と獲得後の進め方までまとめます。

リード獲得の前提として押さえたい購買行動の変化

手法の話に入る前に、いまのBtoB購買がどう動いているかを押さえておく必要があります。ここを外すと、手法を増やしても空振りが続きます。

調査会社6senseの調査によると、BtoBの買い手が営業担当者に接触する時点で、購買プロセスの約70%はすでに完了しているとされています(過去2年以内に1万ドル以上の購買経験がある934人が対象)。買い手は平均11か月の検討期間のうち、およそ8か月を営業と接触しないまま自力の情報収集に費やしています。

Gartnerの調査でも、買い手が購買プロセス全体のうち営業担当者と直接会話に使う時間はわずか17%程度とされています。つまり、営業がアプローチできる前の長い期間に、買い手は自分でWebやコンテンツを見て候補を絞り込んでいるということです。

この変化が意味するのは、「見つけてもらえる場所に、判断材料になる情報を置いておく」ことがリード獲得の土台になる、という点です。だからこそ、その場で名刺を集める刈り取り型だけでなく、検討期間中ずっと働き続ける資産型の手法が欠かせません。

短期でリードを獲る「刈り取り型」の手法

いま検討している、あるいは近い将来に検討する見込み客と接点を作る手法です。成果が出るまでが速い一方、出稿や出展をやめると流入も止まる特徴があります。

  • 展示会・カンファレンス出展:短期間でまとまった名刺を獲得できます。ただし、獲得後のフォロー設計がないと商談化しにくく、費用対効果が読みにくくなります
  • Web広告(リスティング・ディスプレイ・SNS広告):予算を投じた分だけ露出を増やせます。検索広告は「今すぐ客」に強く、ディスプレイやSNS広告は認知拡大に向きます。媒体ごとに入稿できるバナーの規格が違うため、着手前にSNS広告バナーのサイズ一覧で確認しておくと制作の手戻りが減ります
  • ウェビナー:オンラインで見込み客を集め、テーマへの関心度が高い層を絞り込めます。録画を資産として再利用できる点も利点です
  • インサイドセールス・メール施策:既存のリストに対して接触し、検討が進んだ層を営業へ引き渡します

刈り取り型は「今すぐ客」の総量が上限になります。母数を広げるには、次に挙げる資産型を並行して育てることが必要です。

中長期で効く「資産型」の手法

一度作れば検索やシェアを通じて流入し続け、時間の経過とともに効いてくる手法です。立ち上がりは遅いものの、広告のように出稿を止めると消える性質がないため、リード獲得の土台になります。

代表的なのがオウンドメディアやSEOです。見込み客が検討段階で調べるキーワードに記事を用意しておくと、営業接触前の情報収集フェーズで自社を見つけてもらえます。前述のとおり買い手の大半は自力で情報を集めているため、この接点の有無が候補入りを左右します。立ち上げ方はオウンドメディアの作り方で解説しています。

ホワイトペーパーや導入事例などの資料も資産型に含まれます。記事で関心を持った訪問者に資料ダウンロードを用意し、社名やメールアドレスと引き換えに提供することで、匿名の訪問者を連絡先の分かるリードに変換できます。SNSでの情報発信も、継続することで指名検索や問い合わせにつながります。BtoBでの具体的な進め方はSNSマーケティング戦略(BtoB)にまとめています。

資産型は成果が出るまでに数か月単位の時間がかかります。刈り取り型で短期の数字を確保しながら、並行して資産を積み上げる二本立てが現実的です。

検討フェーズに合わせて手法を選ぶ

手法をやみくもに増やすより、見込み客がいまどの段階にいるかに合わせて配置するほうが効率的です。購買プロセスを段階で捉える考え方はマーケティングファネルで整理しています。

まだ課題に気づいていない、あるいは情報収集を始めたばかりの層には、SEO記事やSNS発信のように広く浅く届く資産型が向いています。課題が明確になり、解決策を比較し始めた層には、ホワイトペーパーやウェビナー、導入事例が効きます。すでに発注先を選定している層には、展示会での商談や検索広告、個別相談への導線が刺さります。

一つの手法ですべての段階をカバーしようとすると、メッセージがぼやけて成果が出ません。「どの段階の見込み客を、どの手法で捕まえるか」を先に決めることが、限られた予算で成果を出す近道です。

獲得したリードを商談につなげる設計

リード獲得は、数を集めて終わりではありません。冒頭の相談のように、名刺やダウンロードのリストがあっても、その後の設計がなければ商談は増えません。

まず、獲得したリードを検討度合いで仕分けます。すぐ商談したい層はインサイドセールスや営業へ引き渡し、まだ情報収集中の層にはメールやウェビナーで接触を続けて検討度を高めます。この育成の流れを持たないと、せっかく集めたリードの多くが放置され、時間とともに冷えていきます。

評価する指標も、リード獲得数だけでは足りません。獲得数に加えて、商談化率、受注率、リード1件あたりの獲得コストまで見て初めて、どの手法が本当に効いているかが分かります。追うべき指標の決め方はKPI設計の基本で解説しています。獲得した後にサイト上でどれだけ問い合わせや資料請求に転換できているかは、BtoBサイトのCVR平均と照らして現状を把握しておくと、改善の優先順位を付けやすくなります。

よくあるつまずき

現場でリード獲得がうまくいかないケースには、共通するパターンがあります。

一つは、手法が一本に偏っていることです。展示会だけ、広告だけに依存していると、その手法の調子が悪くなった途端にリードが枯れます。もう一つは、獲得後の受け皿ができていないことです。問い合わせフォームが入力しづらい、資料請求後の連絡が遅い、といった導線の不備で、せっかくのリードを取りこぼしてしまいます。

さらに、獲得数だけを目標に置いてしまうケースもよく見ます。数は増えても質の低いリードばかりだと、営業の工数を圧迫するだけで受注にはつながりません。獲得の入口を広げると同時に、商談化までの流れを整えることが欠かせません。BtoBマーケティング全体の設計はデジタルマーケティング戦略の立て方で扱っています。

まず取り組むなら

リード獲得を強化するなら、いきなり新しい手法を足すより、いまサイトに来ている訪問者を取りこぼしていないかを先に確認するのが効率的です。広告や展示会で流入を増やしても、受け皿となるサイトの問い合わせ導線が弱いと、費用をかけたリードが最後の一歩で離脱してしまいます。

流入を増やす前に転換率を底上げしておくと、同じ獲得施策でもリード数が変わってきます。獲得したアクセスを問い合わせや資料請求にどうつなげるかでお困りの場合は、株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズにご相談ください。サイトの導線を診断し、リード獲得の成果を左右するボトルネックから優先的に整理します。

参考文献