LINE公式アカウントで集客を設計するときに最初に決めるべきなのは、配信の内容ではなく配信できる通数です。料金プランは月額0円・5,000円・15,000円(いずれも税別)の3種類で、それぞれ月200通・5,000通・30,000通の無料メッセージが割り当てられています。友だち数が増えるほど1回の一斉配信で消費する通数も増えるため、友だちを集める施策と配信の頻度は、同時に設計しないと途中で破綻します。この記事では、通数の制約から逆算した運用設計の考え方を整理します。

飲食店を数店舗展開しているクライアントから、「LINEの友だちは3,000人まで増えたのに、売上への効果が見えない」という相談を受けたことがあります。

配信内容を見せてもらうと、週1回、全員に同じクーポンを送っていました。開封率もクリック率も落ち続けており、ブロック率は上がっている。さらに調べると、月の途中で無料メッセージの上限に達して、配信が止まっていた月もありました。友だちを集めることには成功していたのに、集めた結果として配信コストが跳ね上がる構造に気づいていなかったわけです。

なぜLINEが集客の選択肢になるのか

前提として、母数の話をしておきます。

LINEヤフーの発表によると、LINEの国内月間利用者数は2025年12月末時点で1億ユーザーを突破しています。日本国内のインターネット関連サービスとして、この規模に達しているものは多くありません。

集客の観点で意味があるのは、単に利用者が多いことよりも、日常的に開かれるアプリの中に自社の通知を置けることです。メールマガジンが開封されないまま埋もれるのに対して、LINEの通知は他の個人的な連絡と同じ場所に届きます。

ただし、これは長所と短所が裏表です。個人的な連絡と同じ場所に届くからこそ、不要だと判断された瞬間にブロックされます。メールマガジンのように「読まれないまま放置される」という中間状態がなく、要る・要らないの判断が早い。この性質が、後述する配信設計の制約になります。

集客チャネル全体の中でどう位置づけるかについては、Web広告の種類と特徴BtoB企業のSNSマーケティング活用法もあわせて参考にしてください。

料金プランと無料メッセージ通数

LINE公式アカウントの料金体系は、月額固定費と、そこに含まれる無料メッセージ通数で決まります。

プラン月額固定費(税別)無料メッセージ通数追加メッセージ
コミュニケーション0円200通不可
ライト5,000円5,000通不可
スタンダード15,000円30,000通従量課金で可(配信数に応じて1通3円から2円)

ここで見落とされやすいのが、コミュニケーションプランとライトプランでは追加メッセージが送れないという点です。上限に達した時点で、その月の配信は止まります。冒頭のクライアントで起きていたのがこれです。

もうひとつ、通数のカウント単位にも注意が必要です。消費される通数は「配信回数」ではなく「送信した人数×回数」です。この一点が、運用設計のすべてに影響します。

通数の壁がどこに来るか、先に計算しておく

友だち数と配信頻度から、必要な通数は単純な掛け算で出ます。

必要通数 = 友だち数 × 月間の配信回数

この式で、各プランの上限に達する分岐点を出しておきます。

友だち数月2回配信月4回配信月8回配信
500人1,000通2,000通4,000通
1,000人2,000通4,000通8,000通
3,000人6,000通12,000通24,000通
5,000人10,000通20,000通40,000通

グラフにすると、どこで壁にぶつかるかがはっきりします。

友だち数と月間配信回数から必要な通数を計算し、ライトプラン5,000通・スタンダードプラン30,000通の上限に達する地点を示した折れ線グラフ

オレンジの点が、それぞれの配信頻度で無料通数を使い切る地点です。月8回配信なら友だち625人、月4回なら1,250人、月2回でも2,500人でライトプランの5,000通に到達します。

コミュニケーションプランの200通は、友だちが100人いれば月2回の一斉配信で使い切ります。無料で始められるとはいえ、集客チャネルとして機能する規模ではありません。

ライトプランの5,000通も、友だち1,000人で月4回配信すると4,000通なので、ほぼ余裕がありません。冒頭のクライアントは友だち3,000人で週1回の配信だったため、月12,000通が必要で、ライトプランの上限を大きく超えていました。

そしてスタンダードプランの30,000通も、友だち5,000人で月8回配信すると40,000通になり、超過分は従量課金になります。

この計算をしておくと、ひとつの事実が見えてきます。友だちを増やす施策は、そのまま毎月の固定費を押し上げる施策でもあるということです。友だち数を成果指標に置いてしまうと、増やせば増やすほど配信コストが上がり、しかも一斉配信の効果は薄まっていきます。

全員配信をやめるところから始める

通数の制約を踏まえると、取るべき方向ははっきりします。全員に同じものを送るのをやめることです。

LINE公式アカウントには、属性や行動に応じて配信先を絞り込む機能があります。全員に週1回送るのではなく、条件に合う人にだけ送る。これは通数の節約になると同時に、内容の精度も上がります。

絞り込みの軸として実務で使いやすいのは、次のような分け方です。

友だちになってからの経過日数。登録直後の人と半年経った人では、必要な情報が違います。登録直後は初回利用を促す内容、既存客には再訪を促す内容、と分けられます。

過去のクリック行動。特定のメニューやクーポンに反応した人だけに、関連する続きの案内を送る。反応しなかった人に同じものを送り続けるより、ブロック率が抑えられます。

来店や購入の有無。一度も利用がない層と、リピートしている層では、送るべき内容が正反対になります。

分け方が細かいほど良いというものではありません。運用が続かなくなるためです。最初は2つか3つのセグメントに分けて、反応の差が出るかを見るところから始めるのが現実的です。

配信の中身については、クリックしてもらう導線の作り方が効きます。文面の作り込みよりも、何をしてほしいかが1つに絞られているかのほうが効果に直結します。この考え方はCTA最適化で整理しているものと共通です。

友だちの集め方

配信設計の目処が立ったうえで、集める側の話に移ります。

店舗があるビジネスなら、接点は来店時が最も濃くなります。会計時のQRコード提示、テーブルやレジ横のPOP、レシートへの印字。すでに来店している人は関心が確認できている相手なので、ここで登録してもらうのがいちばん確実です。

Webサイトからの導線も基本です。フォームでの問い合わせをためらう層に対して、LINEでの相談を並べて置くと、心理的なハードルが下がる場合があります。問い合わせ導線全体の設計はフォーム最適化(EFO)の考え方が参考になります。

店舗型のビジネスであれば、地図検索からの流入も無視できません。Googleビジネスプロフィールの整備とあわせて設計すると、来店前と来店後の両方で接点が作れます。詳しくはMEO対策とはにまとめています。

登録の見返りとして特典を用意する方法は一般的ですが、設計を誤ると特典目当ての登録だけが増えます。クーポンを配って友だちが増えても、クーポンが尽きた瞬間にブロックされるなら、増えたのは配信コストだけです。特典で集めるなら、初回の特典より、継続して使う理由のほうを作っておく必要があります。

何を指標にするか

友だち数を主要な指標に置かないほうがよい、というのがここまでの話です。では何を見るか。

追いやすく、判断に使えるのは次の3つです。

ひとつはブロック率です。配信のたびにどれだけブロックされたかを見ると、内容と頻度が受け入れられているかが分かります。特定の配信で跳ね上がったなら、その内容か時間帯に原因があります。

ふたつめはクリック率です。配信に含めたリンクがどれだけ押されたか。全員配信からセグメント配信に切り替えた効果は、まずここに出ます。

みっつめは、LINE経由での来店や購入です。クーポンの利用や専用の予約導線を用意して、配信から実際の行動までを追えるようにしておきます。ここが取れていないと、配信の良し悪しを開封やクリックだけで判断することになり、コストに見合っているかの判断ができません。

指標の決め方そのものに迷う場合は、KPI設計の考え方で、最終成果から逆算して中間指標を置く手順を整理しています。

つまずきやすいところ

相談を受けていて繰り返し見かけるパターンを挙げておきます。

配信頻度を先に決めてしまうケース。「週1回は送る」と決めてから内容を考えると、送る理由のない週にも無理やり何かを送ることになります。通数を消費し、ブロックを増やし、効果は出ない。送る理由があるときに送る、という順序のほうが結果的に成果につながります。

プランを月額の安さだけで選ぶケース。ライトプランは月5,000円ですが、追加メッセージが送れないため、上限に達すればその月は打ち止めです。友だちが増える見込みがあるなら、通数の分岐点を先に計算したうえで選ぶ必要があります。

他のチャネルと分断して運用するケース。LINEだけを別の担当者が別の判断で運用していると、サイトや広告で打ち出している内容とずれます。顧客から見れば同じ会社からの発信なので、言っていることが揃っていないと信頼を損ないます。口コミへの対応も含めて、外向きの発信は一貫させておくのが安全です。この観点は口コミへの返信例文でも触れています。

着手する順番

整理すると、次の順で進めるのが無理がありません。

先に、想定する友だち数と配信頻度から必要通数を計算し、プランを決めます。ここを飛ばすと、運用が軌道に乗った時点でコストが跳ねます。

次に、セグメントを2つか3つ決めます。最初から細かく分ける必要はなく、登録直後とそれ以外、くらいの粒度で構いません。

そのうえで、集める導線を用意します。すでに接点のある相手から順に、来店時、サイト、地図検索の順で広げていきます。

最後に、ブロック率とクリック率を毎回記録します。数回分たまった時点で、どの内容が受け入れられているかが見えてきます。

LINEを含めた集客チャネル全体をどう組み合わせるか、どこにコストをかけるべきかで判断に迷う場合は、株式会社ティーラへご相談ください。現状の流入構成を踏まえて、優先順位をお伝えします。

参考文献