BtoBサイトのCVR平均値は、業界によって1%前後から7%超までかなりの幅があります。ただし、自社の数字を平均と並べて一喜一憂するのはあまり意味がありません。本当に見るべきは、チャネル別・ページ種別に分解したCVRと、自社の過去との比較です。この記事では業界別ベンチマークを整理したうえで、その理由を解説します。

「うちのCVR、1.2%なんですけど、BtoBだとこんなものですか?」

先月、製造業向けのクラウド在庫管理サービスを提供しているクライアントから、定例ミーティングでこの質問をもらいました。広告代理店の月次レポートにはCVR 1.2%と書いてあるけれど、それが高いのか低いのか判断できない。業界の平均を知りたい、と。

気持ちはよくわかります。ただ、その場で返したのは「平均値は調べられますが、それだけで判断すると間違えます」でした。

この話、半分は事実で、半分は注意喚起です。BtoBのCVR平均値は確かに存在しますし、目安として知っておく意味はあります。ただ、平均値と自社の数字を並べて一喜一憂するのは危険です。

この記事では、まず業界別のベンチマークデータを整理したうえで、なぜ平均との比較だけでは改善につながらないのか、実際に見るべき数字は何なのかを書きます。(CVRの基本的な計算方法や定義については「CVRとは?計算方法と業界別平均値を徹底解説」で詳しく解説しています。)

BtoB業界別のCVR平均値

まず、手元に置いておく意味のあるデータを出します。

以下は、First Page Sageが2026年版として公開しているB2B業界別コンバージョン率レポート(※1)のデータです。対象は主にオーガニック検索経由のWebサイトCVRで、コンバージョンの定義は問い合わせ・資料請求・デモ申し込みなどのリード獲得です。

業界CVR平均
法務・リーガルサービス7.4%
HVACサービス(空調設備)3.1%
人材・スタッフィング2.9%
高等教育2.8%
不動産(BtoB)2.7%
石油・ガス2.5%
PCB設計・製造2.4%
製造業(全般)2.2%
依存症治療2.1%
金融サービス1.9%
重機1.7%
IT・マネージドサービス1.5%
エンジニアリング1.2%
BtoB SaaS1.1%
ソフトウェア開発1.1%

(出典:First Page Sage「B2B Conversion Rates By Industry – 2026」※1)

業界によって1.1%から7.4%まで、かなりの幅があります。法務サービスが突出して高いのは、「今すぐ弁護士に相談したい」という緊急性の高いニーズで検索するユーザーが多いためです。一方、SaaSやソフトウェア開発が低めなのは、検討期間が長く、1回目の訪問で問い合わせまで至るケースが少ないという構造的な要因があります。

もう1つ、別のソースも見ておきます。Ruler Analytics(現Ruler by CallRail)が14業界・数百万セッションを分析した調査(※2)では、BtoB全業界の平均CVRは2.9%と報告されています。内訳として、フォーム経由が1.7%、電話経由が1.2%です。

チャネル別のCVR(ここを見落とすと判断を間違える)

冒頭のクライアントの話に戻ります。製造業のクラウドサービスでCVR 1.2%。First Page Sageのデータだと製造業の平均は2.2%なので、一見すると平均を下回っています。

ただ、この「1.2%」はサイト全体の数字でした。GA(Google Analytics)でチャネル別に分解してもらったところ、こうなっていました。

チャネルセッション構成比CVR
指名検索(社名・サービス名)12%8.7%
リスティング広告28%1.9%
SEO記事ページ経由42%0.3%
SNS広告10%0.2%
メルマガ・メール8%3.4%

全体で1.2%という数字は、CVR 0.3%のSEO記事トラフィックが全体の42%を占めていることで大きく引き下げられていたわけです。

リスティング広告の1.9%は、First Page Sageの製造業平均2.2%と比べれば改善の余地はあるものの、致命的に低いわけではない。一方、指名検索のCVR 8.7%は非常に健全です。

つまり、このサイトの「全体CVR 1.2%」を見て「平均以下だからサイト改善が急務」と判断するのは間違いで、実態は「SEO記事のトラフィック比率が大きいので全体の数字が薄まっている」だけだった、ということになります。

Ruler Analyticsの調査(※2)でも、チャネル別のCVR平均は以下のように報告されています。

チャネルCVR平均
直接流入(Direct)3.3%
有料検索(Paid Search)3.2%
リファラル(紹介・被リンク)2.9%
オーガニック検索2.7%
メール2.6%
SNS(ソーシャル)1.5%

社名を知っている人が直接来るのと、SNSでたまたま広告を見た人では、購買意欲がまるで違います。ここが「BtoB CVR 平均」で検索して出てくるデータの落とし穴です。業界平均はサイト全体を平均したものですが、トラフィック構成はサイトごとに違います。SEO記事中心のサイトと指名検索中心のサイトでは、全体CVRが違って当然です。

LPとコーポレートサイトでは「普通」が違う

もう1つ見落とされがちなのが、ページの種類によるCVRの違いです。

BtoBの場合、ユーザーがコンバージョンするページは大きく分けて2種類あります。

  1. ランディングページ(LP)

広告やメールから直接飛ばすことを前提に設計された1枚もの。情報は絞られていて、CTAは1つ。訪問者の意図が比較的揃っているので、CVRは高めに出ます。

  1. コーポレートサイト・サービスサイト

複数ページで構成されていて、サービス紹介、事例、ブログ記事、会社概要など多様なコンテンツがある。情報収集目的の訪問者も多いため、サイト全体のCVRは低く出ます。

WordStreamの分析(※3)では、ランディングページの中央値CVRは約2.35%、上位25%は5.31%以上、上位10%は11.45%以上と報告されています。

一方、コーポレートサイト全体のCVRは一般に0.5〜2%程度に落ち着くことが多いです。理由は単純で、ブログやお知らせを読みに来た人もセッション数にカウントされるからです。

ここを区別せずに「うちのサイトのCVRは0.8%しかない」と悩んでいるケースが多く見られます。0.8%がコーポレートサイト全体の数字なのか、特定のLPの数字なのかで、意味合いが全く変わります。

以前、ITコンサルティング会社のサイト改善に入ったとき、こんなことがありました。マーケティング担当者が「サイトのCVRが0.6%で、業界平均の1.5%に遠く及ばない」と焦っていたのですが、内訳を見ると以下の通りでした。

ページ種別セッション数CVR
サービス紹介LP(3ページ)月2,4003.2%
事例紹介ページ月1,8001.9%
ブログ記事(50記事以上)月18,0000.1%
会社概要・採用など月2,8000.04%

サイト全体で見ると月25,000セッションに対してCV数150件で0.6%。ですが、サービスLPのCVR 3.2%は業界平均の2倍以上出ています。「CVRが低い」のではなく、ブログ記事のトラフィックが多いから全体が薄まっているだけでした。

このケースでは、サイトのCVRを改善する方法は「LPを改善する」のではなく、「ブログ記事からサービスページへの導線を強化する」でした。記事の読了後にサービスLPへ誘導するバナーを設置したところ、ブログ経由のCVRが0.1%から0.4%に改善し、月間CV数が30件ほど増えました。

「平均より上か下か」で一喜一憂しても意味が薄い理由

ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、BtoBのCVR平均値が「目安」以上の意味を持たない理由は3つあります。

理由1:コンバージョンの定義が統一されていない。「資料請求」をCVにしている会社と「有料契約」をCVにしている会社では、同じ業界でも数字が全く違います。ホワイトペーパーDLを含めるか問い合わせだけにするかで、平均値自体が変わります。

理由2:トラフィック構成が違う。前述の通り、チャネル構成とページ構成でCVRは大きく変動します。SEO中心のサイトと広告中心のサイトでは、全体CVRを比べること自体に意味がありません。

理由3:平均は「目指すべき数字」ではない。WordStreamの分析(※3)では、上位10%のLPはCVR 11.45%以上で、平均の5倍近い差があります。平均に届いたから安心、というものではありません。

重要なのは自社の過去の数字との比較です。施策を打った前後で変化があったか。外部ベンチマークは「大きく外れていないか」の健全性チェックであって、改善の指針にはなりません。

自社のCVRを正しく評価するための3ステップ

では、BtoBサイトのCVRを平均と比較するのではなく、どう評価すればいいのか。クライアントに最初にお願いするのは以下の3つです。

ステップ1:コンバージョンの定義を明確にする

GAのキーイベント設定(CV設定)を確認してください。問い合わせ完了なのか、資料DLなのか、電話タップなのか。定義が曖昧なまま「CVR 1.2%」と言っても、分析の方向がブレます。

複数のCV地点がある場合は、それぞれ別に計測してください。合算した数字では、どちらに問題があるかわからなくなります。

ステップ2:チャネル別・ページ種別でCVRを分解する

GAの「トラフィック獲得」レポートでチャネルごとのCVRを出してください。注目すべきはチャネル間のCVR格差です。

  • 指名検索と非指名検索でCVRに10倍以上の開き → LPの訴求がズレている可能性
  • 広告経由のCVRがオーガニックより著しく低い → ターゲティングかLPマッチングに問題
  • メール経由のCVRが他の2〜3倍 → ナーチャリングが機能している良い兆候

全体CVRの高低よりも、こうした「歪み」のほうが重要な情報を含んでいます。

ステップ3:時系列で追う

月次でCVRを記録してください。全体に加えてチャネル別のCVRも。

3か月分のデータがあれば、季節変動なのか構造的な問題なのかが見えてきます。BtoBは年度末(3月)と年度初め(4月)で問い合わせ数が大きく変動するので、1か月だけ切り取って判断するのは危険です。逆に、3か月以上CVRが下がり続けている場合は構造的な原因を探る価値があります。

「平均を超えている」のに成果が出ない場合

CVRがベンチマーク以上なのに問い合わせが少ない。これもBtoBではよくあるパターンです。

あるSaaS企業でLPのCVRは3.8%と業界平均の3倍以上でしたが、月間問い合わせは10件。原因はLPへのトラフィックが月260セッションしかなかったことでした。

トラフィック量 × CVR = CV数です。CVRが十分高いなら、改善の軸をトラフィック増加に切り替える。逆にトラフィックは多いのにCVRが0.1%なら、集客を増やすより先にサイト改善。CVRの良し悪しは、この算式の中で自社のボトルネックがどちらにあるかを見極めて初めて判断できます。

BtoBならではの注意点

BtoCと比べてBtoBのCVR評価で気をつけるべき点を補足します。

検討期間が長い

BtoBの購買には複数の意思決定者が関与し、初回訪問から問い合わせまで数週間〜数か月かかるのが普通です。初回訪問のCVRだけ見ていると低く出るのは当然で、GAでリピーター(Returning visitors)のCVRを確認すると初回訪問者の5〜10倍になっていることも珍しくありません。

マイクロコンバージョンの活用

「問い合わせ」だけを追うと、改善のPDCAが回しにくくなります。資料DL、事例ページの閲覧、料金ページへの遷移といった中間行動をマイクロコンバージョンとして計測しておくと、ファネルのどこで詰まっているかが可視化できます。

決裁者と情報収集者の導線が違う

現場の担当者は機能詳細や導入事例を読み込みたい。決裁者は費用感と実績を短時間で把握したい。この両方に対応できているサイトとそうでないサイトでは、CVRに差がつきます。

まとめ:平均値は入り口でしかない

ここまでの内容を整理します。

BtoBサイトのCVR平均値は、業界や計測条件によって1%前後から7%超まで幅があります。自社の数字が平均を上回っているか下回っているかは、あくまで健全性のチェックにすぎません。

本当に見るべきなのは以下の3つです。

  1. チャネル別・ページ種別のCVR分解:全体の数字に惑わされない
  2. 自社の過去との比較:外部ベンチマークより自社の時系列が重要
  3. CVRとトラフィック量のバランス:どちらがボトルネックかを特定する

「数字は出せた。でも次に何をすべきかわからない」という声は実際に多いです。データから仮説を立て、施策を設計し、テストして検証する。このサイクルを通常業務と並行して回し続けるのは負荷が大きい。

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出典

※1:First Page Sage「B2B Conversion Rates By Industry – 2026」https://firstpagesage.com/reports/b2b-conversion-rates-by-industry-fc/

※2:Ruler Analytics「Conversion Rate by Industry(2024)」https://www.ruleranalytics.com/blog/insight/conversion-rate-by-industry/

※3:WordStream「What Is a Good Conversion Rate?」https://www.wordstream.com/blog/ws/2014/03/17/what-is-a-good-conversion-rate