Webサイト改善の進め方は、デザインの感性やトレンドではなく、データを起点にしたPDCAサイクルで進めるのが基本です。具体的には、計測環境を整える→現状を数値で把握する→改善仮説を立てて優先順位をつける→1施策ずつ実行する→効果を測定して次に活かす、という流れになります。「見た目を変える」ことと「成果を改善する」ことはまったく別の作業で、後者にはデータの裏付けが欠かせません。

「うちのサイト、去年リニューアルしたばかりなのに、問い合わせがむしろ減ったんです」

BtoB向けの産業機器メーカーのマーケティング担当者から、こう相談されたのは2025年の秋でした。話を聞くと、デザインを今風に刷新して、スマホ対応も済ませて、写真もプロに頼んで撮り直した。制作会社に300万円近く払ったのに、リニューアル後3ヶ月で問い合わせが月14件から月8件に落ちている。

「何が悪いのか、正直わからないんです。見た目はよくなったのに」

GAを一緒に確認したら、原因はすぐ見えました。リニューアル前は製品ページからの導線が明確で、ユーザーは「製品一覧→個別製品ページ→問い合わせ」と自然に流れていた。ところが新サイトでは、デザインを優先した結果、CTAボタンの配置が変わり、製品ページから問い合わせフォームへの遷移率が62%も落ちていたのです。

この話が象徴しているのは、「見た目を変える」と「改善する」はまったく別の作業だということです。

サイト改善は、デザイナーの感性やトレンドで進めるものではなく、データを起点にした地道な作業です。この記事では、クライアント案件で実際に行っている「データドリブンなサイト改善」の進め方を、具体的な手順とセットで解説します。

「直感的な改善」がうまくいかない理由

最初に、なぜ「なんとなく」の改善がうまくいかないかを整理しておきます。

サイト改善の現場で一番よくあるのが、担当者やデザイナーの直感でいきなり施策を実行するパターンです。「このボタン、色が地味だから赤にしよう」「問い合わせフォームが長いから項目を減らそう」。こうした判断自体が間違いとは言いませんが、データを見ずに進めると、次のようなことが起きます。

あるBtoBのSaaS企業で、営業チームから「料金ページを見てから離脱する人が多いから、料金表を隠した方がいいのではないか」と提案がありました。直感的には理解できる話です。料金を見て「高い」と思って離脱しているのだろう、と。

でもGAでファネル分析をしてみたら、事実は逆でした。料金ページを閲覧したユーザーのCVR(問い合わせ到達率)は4.8%。料金ページを経由しなかったユーザーは0.9%。料金ページは離脱の原因ではなく、CVの後押しになっていたのです。

もしデータを見ずに料金表を隠していたら、CVRはおそらく下がっていたでしょう。

直感的な改善が危ういのは、「間違いだとわかるのが遅い」ことです。データがないから効果を正確に測れない。「なんとなくよくなった気がする」で終わる。これが繰り返されるうちに改善活動への社内の信頼が失われ、予算も打ち切られるという悪循環に陥ります。

改善の起点は「現状の数値化」から

ここからが本題です。データドリブンなサイト改善の進め方を、実際にクライアント案件で踏んでいるステップに沿って説明します。

まず最低限の計測環境を整える

改善の第一歩は「改善」ではなく、計測です。

驚くほど多くの企業が、GAを入れているのにまともにデータが取れていない状態でサイト改善の話をしています。GAのキーイベント設定(CV設定)が漏れている、GTMが正しく発火していない、内部アクセスのフィルタが設定されていない。こうした基本的な問題が放置されたまま「CVRが低い」と言われても、そもそもそのCVRの数字が正しいかどうかがわかりません。

GAの設定・分析についてまだ整理できていない方は、「GAでCVRを分析する方法|コンバージョン設定から改善まで」で基本的な設定手順を解説しています。計測環境が整っていない状態で改善施策を回しても効果が検証できないので、まずはそちらを読んでから戻ってきていただくのがおすすめです。

計測環境で確認すべき項目を整理します。

  • キーイベントの設定:問い合わせ完了、資料DL完了など、ビジネスのゴールに直結するアクションが設定されているか
  • 内部トラフィックの除外:自社社員のアクセスがデータに混ざっていないか
  • データ保持期間:GAのデフォルトは2ヶ月。最長14ヶ月に変更しているか
  • クロスドメイン設定:フォームが別ドメインの場合、セッションが途切れていないか
  • GTMの動作確認:プレビューモードで各イベントが意図通りに発火するか

この確認作業だけで、たいてい1〜2個は問題が見つかります。

改善前の「健康診断」で現状を把握する

計測環境が整ったら、次はサイトの現状把握です。ここでは「何を改善するか」はまだ考えません。純粋に「今、何が起きているか」を数値で把握するフェーズです。

クライアントのサイト改善に入るとき、最初の1〜2週間で必ず見るのは以下の指標です。

GAで見る指標

指標確認の意図
流入チャネル別のセッション数・CVRどこから来たユーザーが成果につながっているか
ランディングページ別の直帰率入口で離脱しているページがないか
デバイス別のCVRモバイルとPCで体験に差がないか
ページ遷移パス(探索レポート)ユーザーがどういう順番でページを見ているか

ヒートマップで見る指標

指標確認の意図
スクロール深度ページのどこまで読まれているか
クリックマップどこが押されていて、どこが押されていないか
アテンションマップページのどの部分で滞在時間が長いか

ヒートマップツールはMicrosoft Clarityが無料で使えます。サイト規模に関係なく利用可能で、GAでは見えない「ページ上でのユーザー行動」を可視化できるため、併用をおすすめします。

この「健康診断」フェーズで重要なのは、発見を具体的に記録することです。「なんとなくモバイルの数字が悪い気がする」では不十分で、「モバイルのCVRは0.4%、PCは2.1%。モバイルの直帰率は78%でPCの52%より26ポイント高い」というレベルで書き留めます。数字が具体的であるほど、後のステップで優先順位がつけやすくなります。

PDCAの「P」:改善仮説を立てて優先順位をつける

現状把握ができたら、いよいよ改善の設計です。ただし、ここでもいきなり施策に飛びつかないことが大切です。

「課題」と「仮説」を分ける

データを見ると、いくつかの問題点が浮かんでくるはずです。でもここで「問題点を見つけた、すぐ直そう」となるのが、改善が空回りする典型パターンです。

たとえば「モバイルのCVRがPCの5分の1しかない」。これは課題です。では、なぜモバイルのCVRが低いのか。ここには複数の仮説が考えられます。

  • フォームがモバイルに最適化されておらず、入力に手間がかかるのではないか
  • CTAボタンがファーストビューに入っていないのではないか
  • 読み込み速度が遅く、ページを見る前に離脱しているのではないか

課題は1つでも、仮説は複数あり得ます。そして、どの仮説が正しいかで打つべき施策がまったく変わります。ここの見極めをデータで行うのが、直感型との最大の違いです。

モバイルの読み込み速度はGoogleのPageSpeed Insightsで確認できます。LCP(Largest Contentful Paint)が2.5秒を超えていたら、速度改善が最優先になるケースが多いです。

インパクト×実装難易度マトリクスで優先順位を決める

仮説が複数出そろったら、全部を同時にやろうとしないことが大切です。リソースは有限です。

使っているのは、シンプルな2軸マトリクスです。

実装が簡単実装が難しい
インパクト大最優先(すぐやる)計画的に実施
インパクト小手が空いたときにやらない(捨てる)

「インパクト」は、影響を受けるトラフィック量とCVR改善幅の掛け算で見積もります。たとえば月間5,000セッションのページのCTAを改善してCVRが0.5%上がれば月25件のCV増。月間200セッションのページなら同じ施策でも月1件しか増えません。

実装難易度は、「テキスト修正だけで済むか」「デザイン変更が必要か」「開発リソースが必要か」で大まかに分類します。

あるBtoBのコンサルティング会社の案件で、この優先順位づけをやったときの実例を紹介します。

健康診断で見つかった課題は5つありました。

  1. サービスページの直帰率が72%と高い
  2. 問い合わせフォームの入力完了率が31%と低い
  3. ブログからサービスページへの遷移率が2.3%しかない
  4. モバイルのCVRがPCの3分の1
  5. 料金ページの滞在時間が平均12秒と短い

全部やりたくなりますが、リソースは限られています。マトリクスに当てはめた結果、最初に着手したのは2番のフォーム改善でした。

理由は、フォームに到達したユーザーは「問い合わせしようとしている」意欲の高い層で、そこの離脱を減らすインパクトが最も大きいからです。しかも入力項目の削減とバリデーション改善だけで済むため実装もそこまで重くない。結果、フォーム完了率は31%から48%に改善し、月間のCV数は約1.5倍になりました。

PDCAの「D」:施策を正しく実行する

優先順位が決まったら実行フェーズです。ここで大事なのは、1つずつ変えることです。

「同時に3つ変えました」が最悪のパターン

複数の施策を一度にまとめて実装すると、結果が良くなっても悪くなっても「何が効いたのか(何が悪かったのか)」がわからなくなります。

たとえば「CTAの色変更」「フォーム項目削減」「ファーストビューのコピー差し替え」を同時にリリースしてCVRが上がったとします。どれが効いたのか。CTAの色だけで効果があったなら、フォーム項目削減は不要だった(むしろリード品質が下がるリスクがある)。これがわからないと、次の改善に知見が積み上がりません。

1施策ずつ実施して、効果を計測する。時間はかかりますが、これが知見の蓄積という点では最も効率的です。

ただし現実には、複数施策を完全に分離できないこともあります。その場合は、少なくとも「大きな変更は1つだけ」にして、付随する小さな調整は記録しておきます。完璧な実験設計でなくても、何を変えたかが明確であれば、結果の解釈はある程度可能です。

A/Bテストか、Before/Afterか

可能であれば、改善施策はA/Bテストで検証するのがベストです。ただしA/Bテストには十分なトラフィックが必要で、月間1,000セッション以下のページでは統計的に有意な結果が出るまでに数ヶ月かかります。BtoBサイトではトラフィックが限られるため、全ページでA/Bテストを回すのは現実的ではありません。

トラフィックが多いページはA/Bテスト、少ないページは一定期間のBefore/After比較、というように使い分けるのが実務的です。

PDCAの「C」:効果測定で「成功」と「失敗」を切り分ける

施策を実行したら、必ず効果測定をします。当たり前のことですが、これをやらない、あるいは「なんとなく見る」で終わらせている会社は意外と多いです。

測定のタイミングと見るべき数字

効果測定のタイミングは、施策の種類によって変わります。

施策の種類計測開始の目安判断に必要な期間
コピー変更・CTA色変更即日2〜4週間
フォーム項目の変更即日2〜4週間
ページ構成の大幅変更即日4〜8週間
サイト構造の変更2〜4週間(SEO影響含む)8〜12週間

見るべき数字は、改善仮説に直結する指標です。

フォーム改善であれば「フォーム到達数→完了数の通過率」。CTAボタン改善であれば「CTAのクリック率」。ファーストビュー改善であれば「直帰率」と「スクロール深度」。全体のCVRだけを見ていると、季節変動や広告出稿量の変化など他の要因に振り回されてしまいます。

「失敗」も記録する

効果が出なかった施策、あるいは逆効果だった施策も、きちんと記録として残すことが大切です。

「ボタンの色を赤に変えたらCVRが0.3%下がった」。これは失敗ではなく、資産です。次に同じ施策が提案されたとき、過去のデータを示して「以前試したときはこうだった」と言える。これがデータドリブンな改善の蓄積効果です。

クライアントごとに「施策ログ」を残すことをおすすめしています。項目は以下の通りです。

  • 施策名と実施日
  • 改善仮説(なぜこの施策をやるのか)
  • 変更内容の具体的な記述(スクリーンショット含む)
  • 計測期間
  • Before/Afterの数値
  • 判定(成功/失敗/判定不能)
  • 学び(次に活かせること)

このログが10件、20件と溜まってくると、「自社サイトでは何が効きやすいか」というパターンが見えてきます。

PDCAの「A」:次の改善サイクルにつなげる

効果測定が終わったら、結果を踏まえて次のアクションを決めます。ここがPDCAの「A(Action)」です。

成功した施策は横展開できないか考えます。たとえばサービスAのページでCTA改善が効いたなら、サービスBやCのページでも同じ改善が有効な可能性が高いです。

失敗した施策は、仮説を見直します。仮説が間違っていたのか、仮説は正しいが施策が不十分だったのか。ここの切り分けが、次のサイクルの精度を上げるカギになります。

そして、改善サイクルの初期に作成した課題リストとマトリクスに戻って、次に着手する施策を選ぶ。この繰り返しがPDCAです。

改善サイクルの現実的な回し方

正直なところ、毎週PDCAを回し続けるのは、リソースが限られたBtoB企業ではかなり大変です。

クライアントに提案しているのは、月1回の定例サイクルです。

  • 月初(1週目):前月の施策の効果測定、結果のまとめ
  • 月初〜中旬(1〜2週目):データ確認、次の施策の仮説立案・優先順位づけ
  • 中旬〜下旬(2〜3週目):施策の実装
  • 月末(4週目):実装完了、計測開始

月1サイクルだと年間12回のPDCAが回ります。12回あれば、3ヶ月で明確な改善傾向が見え始めるケースがほとんどです。

よくある失敗は、最初に気合いを入れすぎて週次サイクルを宣言し、2ヶ月で息切れして改善活動が止まることです。それより、月1回を淡々と12ヶ月続ける方が、結果的には成果が出やすいです。

現場で効果が出やすい改善施策の傾向

最後に、これまでの案件で繰り返し効果が出ている施策のパターンを紹介します。全サイトに当てはまるわけではありませんが、参考にはなるはずです。

フォーム改善はほぼ確実に効きます。

BtoBサイトのフォームは、項目が多すぎるケースが大半です。「会社名」「部署名」「役職」「従業員数」「導入予定時期」。営業が後工程で欲しい情報をフォームに全部入れてしまう。気持ちはわかりますが、ユーザーにとっては問い合わせのハードルが上がるだけです。

Formstackの調査でも、フォーム項目数の削減がコンバージョン率向上に直結するという結果が出ています。実際の案件でも、入力項目を8個から4個に減らしたBtoB SaaSのサイトで、フォーム完了率が2.4倍になりました。

ファーストビューのコピー改善は低コスト・高リターンです。

テキストを変えるだけなので実装コストはほぼゼロ。にもかかわらず、CVRに直結しやすい施策です。特にBtoBサイトで「最先端の〜」「革新的な〜」のような抽象的なコピーが使われている場合、ターゲットの課題を具体的に言語化したコピーに差し替えるだけでCVRが1.5〜2倍になることも珍しくありません。

モバイル対応の穴を塞ぐことも効果が出やすい領域です。

2024年時点で、日本のインターネット利用端末はスマートフォンが73.4%です。BtoBサイトでも情報収集はスマホで始まるケースが増えていますが、PC前提で作られたサイトはまだ多くあります。モバイルの体験改善は全体のCVR底上げに直結します。

「改善を続ける仕組み」があるかどうか

ここまで読んでいただいた方はお気づきかもしれませんが、サイト改善に魔法の一手はありません。データを見て、仮説を立てて、施策を打って、結果を測定して、次に活かす。この繰り返しを、毎月淡々と続けられるかどうかがすべてです。

一番もったいないのは、「リニューアルしたから当分いいだろう」とサイトを放置してしまうことです。Webサイトはリニューアルした瞬間がゴールではなく、スタートです。

とはいえ、社内にWebマーケティングの専任者がいないBtoB企業が、計測環境の整備から仮説立案、施策実行、効果測定まで自前で回し続けるのは、かなりの負荷になります。本業の傍らでGAやヒートマップを毎月チェックして、施策を設計して、エンジニアやデザイナーと調整して。兼任の方がこれをやり続けるのは、現実的には難しい面があります。

株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズでは、計測環境の整備から月次の分析・施策実行まで、サイト改善のPDCAサイクルを一気通貫で支援しています。丸ごとお任せいただくことも、社内チームとの併走も可能です。

サイト改善の進め方に課題を感じている方は、まずはサービス資料をご覧ください


参考文献

  1. Microsoft「Clarity - Free Heatmaps & Session Recordings」 https://clarity.microsoft.com/
  2. Google「PageSpeed Insights」 https://pagespeed.web.dev/
  3. Formstack「Form Conversion Report」 https://www.formstack.com/resources/report-form-conversion
  4. 総務省「令和6年版 情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r06.html