「Google Optimizeが終わってから、ABテストはどうしていますか?」

クライアントや制作会社の方から、この質問を受ける機会が増えました。Googleが2023年9月にOptimizeを終了してから2年半ほど経ちますが、いまだに「代替ツールを探しているけれど決められていない」という企業は少なくありません。ツールの選択肢が一気に増え、料金体系も機能もバラバラなので、比較しきれずに止まってしまうのは自然なことだと思います。

ABテストツールは、無料で始められる国産ツールから年間数百万円のエンタープライズ製品まで価格帯が幅広く、自社のトラフィック規模やテスト経験のフェーズによって最適解が変わります。この記事では、代表的な8ツールを無料・有料に分けて比較し、クライアント案件で実際に複数ツールを運用してきた経験をもとに「どのフェーズでどれを選ぶか」を整理します。ABテストそのものの考え方や進め方を先に押さえたい場合は、ABテストとはから読むと理解がスムーズです。8ツールを取り上げますが、すべてを均等に紹介するわけではありません。中小BtoB企業にとって現実的な選択肢を重点的に扱います。

まず比較表で全体像をつかむ

細かい話に入る前に、8ツールの概要を一覧にまとめます。

ツール名料金目安無料プラン主な特徴向いている企業規模
OptimizeNext0円〜月額79,900円あり(Freeプラン)国産・ノーコード・GA連携・Clarity連携・サーバーレス中小〜中堅
Microsoft Clarity完全無料無料のみヒートマップ・セッション録画・AI分析全規模(ABテスト前の分析用)
GrowthBook0円(セルフホスト)〜あり(オープンソース)OSS・フィーチャーフラグ・データウェアハウス連携エンジニアチームがある企業
VWO要問合せ(Growth/Pro/Enterprise)なし(30日間の無料トライアル)分析〜テスト〜パーソナライズの統合プラットフォーム中堅〜大企業
Optimizely年間約36,000ドル〜なし世界シェア上位・大規模テスト対応・GA公式連携大企業(月間数十万セッション以上)
KARTE Blocks初期10万円+月額14.8万円〜なしフラッシング(ちらつき)なし・ブロック単位の編集・国産中堅〜大企業(EC・メディア向き)
AB Tasty要問合せ(カスタム価格)なしAI活用のパーソナライゼーション・感情ベースセグメント中堅〜大企業
DLPO初期20万円+月額10万円〜なし国産・多変量テスト・AIパーソナライズ・コンサル支援中堅〜大企業

無料で使えるABテストツールはどれか

「まず費用をかけずに試したい」という前提で探している方が多いので、無料で使える範囲を先に整理しておきます。

ずっと無料でABテストを実行できるのは、OptimizeNextのFreeプランと、GrowthBookのセルフホスト版の2つです。

ツール無料の形態無料でできること制約
OptimizeNextFreeプラン(期限なし)要素変更テスト・リダイレクトテスト・GA連携・Clarity連携3パターン以上のテスト、ページ横断テスト、ターゲティング設定は有料
GrowthBookセルフホスト版(OSS)機能制限なしで実験基盤を構築できるサーバーの構築と運用が前提。エンジニアリソースが必要
Microsoft Clarity完全無料ヒートマップ・セッション録画・AI要約ABテストの実行機能そのものがない
VWO30日間の無料トライアル期間中はABテスト・多変量テストを利用可能期間終了後は有料。恒久的な無料プランではない

注意したいのはVWOです。以前は無料プランが案内されていましたが、2026年8月時点の公式料金ページではGrowth・Pro・Enterpriseの有料3階層のみが提示されており、無料で使えるのは30日間のトライアルです。無料前提で候補に入れている場合は、この前提が変わっている点を確認してください。

このうち、専任のエンジニアがいない中小企業が最初に選ぶならOptimizeNextのFreeプランが現実的です。GrowthBookはサーバーの構築と運用を自前で行う前提なので、エンジニアチームがない場合は運用負荷が見合いません。

無料のままどこまで戦えるか

無料で足りなくなる分岐点は、テストの本数ではなくテストの複雑さです。

1つのページで見出しやボタンのA/B2パターンを比べている間は、無料のままで支障が出にくいと考えて差し支えありません。有料プランが必要になるのは、3パターン以上を同時に比べたくなったとき、複数ページをまたいで同じテストを当てたくなったとき、そして「スマートフォンの新規訪問者だけ」のように配信条件を絞りたくなったときです。

順序としては、まず無料で数本テストを回して、勝ち負けの判断ができる状態を作るほうが先です。ツールの機能が足りなくて困るより、テストの仮説が浮かばなくて止まるケースのほうが実際には多いです。

それぞれの詳細を見ていきます。

1. OptimizeNext——料金・特徴と実際に使った評価

選定の理由

OptimizeNextはPROJECT GROUP株式会社が提供する国産のABテストツールで、Google Tag Managerの仕組みを利用したサーバーレス設計が特徴です。2024年10月時点で3,500以上のWebサイトに導入されています。

クライアント案件で代替ツールを10種類ほど比較した結果、メインツールとして採用したのがこのOptimizeNextでした。理由は3つあります。

1つ目は、Google Optimizeに近い操作感です。管理画面の構成がOptimizeと似ているため、Optimizeに慣れていた担当者が迷わず使えました。乗り換え時の負担が少ない点は大きなメリットです。

2つ目は、無料プランの実用性です。Freeプランでも要素変更テストとリダイレクトテストという基本的なABテスト機能が使えます。「まず無料で始めましょう」と案内しやすく、テスト運用が本格化してきた段階でも最初の有料プランが月4,000円前後なので、予算の壁が低めです。

3つ目は、GAとの連携です。テスト結果をGAのレポートで確認できるため、クライアントへの報告時に別のダッシュボードを開く手間が省けます。

料金プラン

プラン構成は改定されており、2026年8月時点では次の5段階です。年間利用と月間利用で金額が変わるため、両方を並べます(表示はいずれも税別)。

プラン年間利用(月あたり)月間利用
Free無料無料
Mini3,900円4,900円
Growth12,900円16,900円
Pro36,900円46,900円
Max79,900円99,900円

上位プランで増えるのは、3パターン以上のテスト、複数ページを横断するテスト、ターゲティング条件の設定、テスト期間のスケジュール、パターン比重のカスタマイズといった機能です。テストの本数ではなく、テストの複雑さで必要なプランが決まる設計になっています。

なお、プランはアカウント単位ではなくコンテナ単位で適用されます。複数サイトを運用している場合、サイトごとに契約が必要になる点は見積もり時に注意してください。

導入の流れ

導入手順もシンプルです。アカウントを作成し、Google Tag Manager経由で計測タグを設置すれば準備は完了します。テストの作成はビジュアルエディタ上で対象ページの要素(見出し・ボタン・画像など)を編集してバリエーションを作り、配信比率と目標(CV)を設定して開始する、という流れです。コードを書かずに完結するため、マーケティング担当者だけで初回テストまで到達できます。

運用してみての評価

完成度の高いツールですが、いくつか限界もあります。

ヒートマップ機能そのものは搭載されていません。ただし、この弱点は2025年6月のMicrosoft Clarity連携で実質的に埋まりました。詳しくは次のClarityの項で触れますが、ヒートマップを別ツールで見るという回避策ではなく、テストのパターン別にヒートマップを見られる形になっています。

残る制約は、パーソナライゼーション(ユーザーセグメント別に表示を出し分ける機能)がないことです。その段階に進むなら別のツールを検討することになります。

逆に言えば、「シンプルにABテストだけ回したい」用途なら余計な機能がなく使いやすいです。月間数万セッション規模の中小BtoBサイトであれば、FreeプランかMiniプランで十分に運用できます。

こんな企業に向いている

  • ABテストをこれから始める中小企業
  • Google Optimizeからの乗り換え先を探している
  • 月額予算をなるべく抑えたい
  • エンジニアのリソースが限られている(ノーコードで運用したい)

2. Microsoft Clarity——ABテストの前段を支える無料分析ツール

ClarityだけでABテストはできるのか

結論から言うと、できません。Clarity自体にABテストの実行機能はなく、ヒートマップとセッション録画に特化した無料の行動分析ツールです。Clarityを「ABテストツール」として紹介している記事をたまに見かけますが、テストのパターンを配信する機能は持っていません。

それでもこの比較記事に入れているのには理由があります。ABテストの成否は「仮説の質」で決まり、ヒートマップとセッション録画は仮説を立てるための最重要データだからです。ヒートマップから改善仮説を導く具体的な手順はヒートマップ分析のやり方で解説しています。

ClarityでABテストのパターン別に分析する方法

「ClarityとABテストを組み合わせたい」という場合、現時点でもっとも手軽なのはOptimizeNextとの連携機能を使う方法です。

OptimizeNextは2025年6月にClarity連携を追加しており、ABテストを配信する際に「その訪問者がどのパターンに振り分けられたか」を示すテストパターンIDをClarityへ送信できます。このIDでClarity側にフィルタをかけると、特定のパターンを見た人だけのヒートマップやセッションリプレイを確認できます。OptimizeNextの管理画面にはフィルタ適用済みのClarityダッシュボードへ飛ぶリンクが用意されているため、手動でフィルタを設定する必要もありません。

この連携は当初は上位プラン限定でしたが、2026年1月にFreeプランを含む全プランへ開放されています。

実務での効き方が変わるのはここです。従来は「Aパターンのほうがコンバージョンが高かった」という結果しか分からず、なぜ高かったのかは推測するしかありませんでした。パターン別にヒートマップとセッション録画を見られると、勝った理由と負けた理由を行動レベルで確認できます。負けたテストから次の仮説を引き出せるかどうかが改善速度を決めるので、この差は小さくありません。

クライアント案件の運用フローでは、Clarityで離脱ポイントやクリック偏り、スクロール到達率を分析して仮説を立て、OptimizeNextでテストを実施し、結果をふたたびパターン別にClarityで確認する、という流れが定着しています。この2つの組み合わせは、無料でABテストのPDCAを回す方法として費用対効果が高いと考えています。

主な機能

  • クリック・スクロール・エリアヒートマップ
  • セッション録画(ユーザー行動の動画リプレイ)
  • AIによるセッション要約(Copilot機能)
  • Shopify連携(2025年7月〜)
  • モバイルアプリのセッション録画(SDK対応)

料金

完全無料。トラフィック上限なし。Microsoftのアカウントがあればすぐ使えます。

運用してみての評価

無料でこれだけの機能が使えるのは、コストパフォーマンスの面で群を抜いています。ただし、繰り返しになりますがClarity単体ではテストの「実行」はできません。AB Tastyなど外部のABテストプラットフォームと連携する機能もありますが、中小企業の運用としては、前述のパターン別分析まで無料で完結するOptimizeNextとの組み合わせがもっともシンプルです。

こんな企業に向いている

  • ABテストの前段階として「どこを改善すべきか」を把握したい
  • ヒートマップツールに予算をかけたくない
  • GAだけでは行動データが不十分だと感じている

3. GrowthBook——エンジニア主導で実験文化を作る場合

特徴

GrowthBookはオープンソース(MITライセンス)のフィーチャーフラグ+ABテストプラットフォームです。Y Combinator出身のスタートアップが開発しており、GitHubで9,000以上のスターを獲得しています。

最大の特徴は「データウェアハウスネイティブ」である点です。BigQuery、Snowflake、Databricksなど既存のデータ基盤に直接接続し、ユーザーデータを外部に送信せずに実験分析を行えます。統計エンジンもベイジアン、CUPED(分散削減手法)、逐次テストなどに対応しており、技術的な信頼性は高いです。

React、Python、Android、iOSなど24のSDKが用意されており、Webだけでなくモバイルアプリやサーバーサイドのテストにも対応しています。

料金

  • セルフホスト版:完全無料(Docker環境があればすぐ起動可能)
  • クラウド版:無料プランあり、有料は月額20ドル/ユーザー〜
  • エンタープライズ:カスタム価格

運用してみての評価

エンジニアが社内にいて、自前でインフラを運用できる企業には魅力的なツールです。オープンソースなのでベンダーロックインがなく、コストも抑えられます。

ただし、OptimizeNextやVWOのような「ノーコードでマーケ担当者がテストを作成」という使い方はしにくいです。ビジュアルエディター機能は上位プランにしか含まれておらず、基本的にはSDK経由でコードを書いてテストを実装する前提になります。マーケ担当者だけでABテストを回したい場合は、別のツールを選んだほうが良いでしょう。

クライアント案件では、自社プロダクトを持つSaaS企業に紹介したことがあります。開発チームが実験文化を作りたいという文脈にはよくフィットしますが、LP改善やサイト改善の文脈ではOptimizeNextのほうが適しています。

こんな企業に向いている

  • 社内にエンジニアチームがあり、自前でツールを運用できる
  • データウェアハウスを既に持っており、データを外部に出したくない
  • Webだけでなくアプリやサーバーサイドのテストも行いたい
  • オープンソースでベンダーロックインを避けたい

4. VWO——分析からテストまでを1つで完結させたい企業向け

特徴

VWO(Visual Website Optimizer)はインド発のCRO(コンバージョン率最適化)プラットフォームで、ABテストだけでなくヒートマップ、セッション録画、ファネル分析、パーソナライゼーションまで1つのツールで完結できるのが強みです。

2025年にはAIを活用した予測セグメンテーションやテスト前の成果予測モデリングも搭載され、ツールとしての進化が著しいです。

料金

  • 30日間の無料トライアル:期間中はABテスト・多変量テスト・機能実験を利用可能
  • Growth / Pro / Enterprise:要問合せ(交渉次第で割引あり)

以前は無料プランが提供されていましたが、2026年8月時点の公式料金ページでは有料3階層のみの提示に変わっており、恒久的な無料枠は確認できません。正確な金額は非公開ですが、有料プランは年間数十万円〜が目安です。

運用してみての評価

1つのツールでヒートマップからテストまで完結するため、管理は楽です。クライアント側で複数ツールのアカウントを管理する手間がなくなります。

ただ、管理画面は英語です。日本語対応がないので、クライアントのマーケ担当者が直接操作するケースでは導入のハードルが高くなります。クライアント案件では代行運用する前提で使うことがあります。

また、テスト本数が増えてくるとGrowth以上のプランが必要になりますが、価格交渉が必要な点はやや手間です。

こんな企業に向いている

  • 分析ツールとテストツールを別々に管理したくない
  • 月間セッション数が多く、テストを同時に複数回したい
  • 英語の管理画面に抵抗がないチームがある
  • トライアル期間中に集中して検証し、有料前提で判断できる

5. Optimizely——大企業・ハイトラフィックサイト向けの最高峰

特徴

Optimizelyは世界シェア上位のABテスト・実験プラットフォームです。Google Optimize終了時にGoogleが公式に推奨した代替ツールの1つでもあり、GAとの連携がスムーズです。

大規模なトラフィックに対応し、複数ページを横断したテスト、多変量テスト、フィーチャーフラグ(新機能の段階的リリース)など、エンタープライズ向けの機能が充実しています。

料金

年間36,000ドル(約540万円)〜。料金はトラフィック量やテスト本数によって変動し、年間10万ドル以上になるケースも珍しくありません。年間契約のみで、自動更新の契約形態には注意が必要です。

運用してみての評価

クライアント案件で使っているケースはありません。月間セッションが数万〜十数万レベルの中小BtoBサイトにはオーバースペックだからです。年間500万円以上のツール費用を正当化できるのは、ECやメディアで月間数百万セッションがあり、ABテストの改善効果が直接売上に跳ね返る企業に限られます。

機能は最高峰の部類ですが、「自社に必要かどうか」はトラフィック規模とテスト頻度で判断するのが望ましいです。

こんな企業に向いている

  • 月間セッション数が数十万〜数百万以上のサイト
  • 社内にCRO(コンバージョン率最適化)専任チームがある
  • 大量のテストを同時並行で回す必要がある
  • 予算に年間500万円以上を確保できる

6. KARTE Blocks——ちらつきゼロのブロック編集型

特徴

KARTE Blocksはプレイド社が提供する国産ツールで、Webページの構成要素を「ブロック」単位で編集・ABテスト・パーソナライズできるのが特徴です。

技術的な強みは、フラッシング(ちらつき)が発生しない点です。一般的なクライアントサイドのABテストツールでは、テスト配信時に元のページが一瞬見えてから差し替えが起きる「ちらつき」が問題になることがあります。KARTE Blocksはこの問題を技術的に解消しており、ファーストビュー周辺のテストでもユーザー体験を損ないません。

ブロック単位のクリック率や表示回数を自動計測する分析機能も備えており、テスト前の仮説立案にも使えます。

料金

  • 初期費用:10万円
  • 月額:14.8万円〜(PV数に基づいて決定。従量課金による自動変動はなし)

ベースプランで月間50万PVまで、管理画面アカウント20個、登録ページ20個が含まれます。

運用してみての評価

ちらつきの問題を気にしているクライアントには推薦しやすいツールです。特にファーストビューのキャッチコピーやメインビジュアルをテストする場合、ちらつきが発生するとテスト結果そのものが歪む可能性があります(ちらつきによる離脱がテスト結果に影響するため)。ここが解消されているのは実用上の価値が高いです。

一方で、月額14.8万円〜は中小企業にとって軽い金額ではありません。ZOZOTOWNやベイクルーズなど大手ECの導入実績が目立つ通り、ある程度のPV規模があってテスト改善の効果が売上に直結するサイトでないと、費用対効果が合いにくいです。

こんな企業に向いている

  • ファーストビューのテストが多く、ちらつきを許容できない
  • EC・メディアなどPV規模が大きいサイトを運営している
  • ノーコードでページ編集からテストまで完結させたい
  • 国産ツールで日本語サポートを重視する

7. AB Tasty——AI活用のパーソナライゼーションが強み

特徴

AB Tastyはフランス発のABテスト・パーソナライゼーションプラットフォームで、世界1,100社以上が導入しています。マクドナルド、ロレアル、ディズニーランド・パリなど大手ブランドの利用実績があり、特にAIを活用した感情ベースのセグメンテーションが他ツールとの差別化ポイントです。

ビジュアルエディターによるノーコード操作で、マーケティング担当者が技術的な知識なしにテストを作成・実行できます。ABテストだけでなく、スプリットテスト、多変量テスト、予測テストなどにも対応しています。

料金

カスタム価格で非公開。問い合わせが必要です。一般的に中堅〜大企業向けの価格帯と言われています。

運用してみての評価

クライアント規模の都合上、本格導入したケースはまだありません。展示会やウェビナーでデモを見た限りでは、パーソナライゼーション機能の精度は高そうです。ただ、ABテストの「はじめの一歩」として選ぶツールではなく、テスト文化が社内に定着してきた段階で検討するツールだと考えています。

Microsoft Clarityとの連携機能があり、Clarityのセッション録画をテストのバリエーション別に確認できる点は、分析の深度を上げるうえで有効です。

こんな企業に向いている

  • ABテストの先にパーソナライゼーションまで見据えている
  • グローバル展開しており、フランス・欧州圏のサポートとの親和性が高い
  • AI活用のマーケティング施策を推進している

8. DLPO——国産の老舗LPOツール

特徴

DLPOは国内実績の多いLPO(ランディングページ最適化)ツールで、850社以上に導入され、75,000件以上のテスト実績があります。ABテスト、多変量テスト、パーソナライズを包括的にカバーしています。

多変量テストでは「クリエイティブAの何が・どこが勝因だったのか」を解析できるため、次のテスト仮説を立てやすくなります。また、約5億ユニークブラウザーの行動データを学習したAIパーソナライズ機能も搭載されています。

料金

  • 初期費用:20万円
  • 月額:10万円〜

コンサルティングオプションとして、LPOプロジェクト代行(月額50万円)、ABテスト代行(月額30万円〜)、DLPO設定代行(月額10万円〜)も用意されています。

運用してみての評価

国産ツールで日本語の電話・メールサポートが受けられる点は、社内にCRO専任がいない企業にとって大きなメリットです。コンサルティングサービスが充実しているので、「ツールは導入したけれど使いこなせない」という状態を避けやすい構成になっています。

一方で、月額10万円〜+初期20万円は中小企業にとってはハードルが高めです。ABテストの経験が浅い段階でいきなりDLPOに投資するよりは、まず無料〜低価格のツールで成功体験を積んでから移行するほうが合理的でしょう。多変量テストやAIパーソナライズは、テストを回す文化が定着した後のフェーズで真価を発揮する機能です。

こんな企業に向いている

  • ABテスト代行やコンサルティングも含めて外注したい
  • 多変量テストで勝因分析まで踏み込みたい
  • 国産ツール・日本語サポートを重視する
  • 月額10万円以上の予算を確保できる

結局、どう選べばいいのか(規模とフェーズで決まる)

8ツールを紹介しましたが、選び方の軸はシンプルです。自社のトラフィック規模とABテスト経験のフェーズで絞り込めます。

フェーズ1:ABテストをこれから始める(中小企業・月間数万セッション)

OptimizeNext(Freeプラン)+ Microsoft Clarity の組み合わせが、費用対効果の面で有力です。Clarityでユーザー行動を分析して仮説を立て、OptimizeNextでテストを実行し、結果をパターン別にClarityで確認する。この一巡りが費用ゼロで回ります。クライアント案件でも、この構成で最初の3〜6ヶ月を回してもらうことが多いです。テストで成果が出始めたら、OptimizeNextのMiniプラン(年間利用で月3,900円)に移行すれば十分対応できます。

フェーズ2:テストが定着してきた(中堅企業・月間数十万セッション)

VWO または KARTE Blocks が候補になります。テストの同時実行数が増えてきたり、パーソナライゼーションに踏み込みたくなったタイミングで検討するツール群です。ヒートマップからテストまで1つで完結させたいならVWO、ちらつきが気になるならKARTE Blocks。英語に抵抗がなければVWO、日本語サポート重視ならKARTE BlocksかDLPOという整理になります。

フェーズ3:CRO専任チームがある(大企業・月間数百万セッション)

Optimizely または AB Tasty が選択肢です。ここまで来ると、ツールの機能差よりも「社内のテスト文化をどう拡張するか」が論点になります。フィーチャーフラグや多ページ横断テスト、AIによる自動最適化など、エンタープライズ向けの機能が必要になるフェーズです。

注意すべき落とし穴

ツール選びで多い失敗は、自社のフェーズに合わないツールを導入してしまうことです。月間2万セッションのBtoBサイトにOptimizelyを入れても、トラフィックが足りなくて統計的有意差が出るまでに何ヶ月もかかります。逆に、月間100万セッションのECサイトでOptimizeNextのFreeプランだけを使い続けるのも、ターゲティングやページ横断テストの面で限界が出てきます。

ツールに投資する金額は、テストによる改善効果から逆算するのが正攻法です。テスト1回でCVRが0.3%改善し、それが月間売上に換算して大きなインパクトを生むなら、月額10万円のツール費用は十分にペイします。逆に改善効果が小さいなら、無料ツールで回したほうが合理的です。この逆算の具体的なやり方はCVR改善の費用とROIの考え方で解説しています。

テストを回すのに必要なセッション数の目安

「うちのトラフィックで、そもそもABテストは回せるのか」。ツールを選ぶ前に確認しておきたいのがここです。トラフィックが足りないサイトに高機能なツールを入れても、勝敗が判定できないまま契約期間だけが過ぎていきます。

AとBに差があったと言い切るには、統計的に十分なサンプル数が必要です。有意水準5%・検出力80%(ABテストツールが標準的に採用している設定値)で試算すると、各パターンに必要なセッション数は次の水準になります。

元のCVR+20%の改善を検出+30%の改善を検出+50%の改善を検出
0.5%85,90039,90015,600
1%42,70019,8007,700
2%21,1009,8003,800
3%13,9006,5002,500
5%8,2003,8001,500

数値は各パターンあたりのセッション数です。AとBの2パターンでテストする場合、この2倍が総必要数になります。

読み方の例を1つ。元のCVRが1%のサイトで20%の改善(1%→1.2%)を検出したい場合、AとBに42,700セッションずつ、合計85,400セッションが必要です。月間10万セッションのサイトなら約1ヶ月弱で到達しますが、月間2万セッションのサイトでは4ヶ月以上かかる計算になります。

表を縦に見ると、元のCVRが低いほど必要数が跳ね上がることがわかります。CVR 0.5%のサイトは、CVR 5%のサイトの10倍以上のセッションを必要とします。BtoBサイトのようにCVRが低く、かつトラフィックも潤沢ではない場合、小さな改善のABテストは現実的に判定できません。自社の水準が高いのか低いのかはBtoBサイトのCVR平均と照らし合わせてみてください。

セッション数が足りない場合、現実的な選択肢は3つあります。

  • 変更幅を大きくする:ボタン色のような微修正ではなく、ファーストビューやオファー自体を差し替えて、+50%以上の変化を狙う
  • 手前の指標で判定する:最終CVではなく、フォーム到達率やCTAクリック率など、発生数の多い中間指標をテストの判定指標に使う
  • ABテスト以外の手法を使う:ヒートマップやユーザーテストなど、定性的な手法で改善点を特定する

2つ目は実務でよく使う方法です。月間の問い合わせが20件しかないサイトでも、CTAのクリックは月に数百件発生していることがあります。CTAクリック率で勝敗を判定し、CVへの影響は中長期で確認する。この二段構えなら、トラフィックが少ない中小規模のサイトでもテストを回せます。

もう1点、必要セッション数に届いていない段階で「Bが勝っている」と判断するのは避けたほうがよいです。テスト開始直後の数字は大きく振れます。期間の途中で何度も結果を覗き、良さそうなタイミングで止める運用は、偶然の差を成果と取り違える原因になります。テスト期間は開始前に決めておき、曜日変動を1巡させるために最低2週間は回すことが望ましいです。そもそもCVRが低い原因が構造的なものである場合は、テスト以前にCVRが低い原因の切り分けから入るほうが早いこともあります。

ツール以前の話(計測環境が整っていなければ意味がない)

ここまでツールの比較を書いてきましたが、ツール選び以上に大事なことがあります。GAのキーイベント設定(CV設定)やコンバージョン計測が正しくできているかどうかです。

テストの勝敗を判定するには、正確なコンバージョンデータが必要です。GAの設定が不十分なままABテストツールを入れても、テスト結果の信頼性が担保できません。「ツールを入れたけれど使いこなせない」と相談に来る企業のうち、半分以上はそもそも計測環境に問題があるという印象です。

順番としては、まずGAの計測環境を整備し、ヒートマップ(Clarity)を入れて課題を特定し、そのうえでABテストツールを導入してテストを始める、という流れが望ましいです。GAでCVRを正しく計測・分析する方法はGAを使ったCVR分析にまとめています。

よくある質問

Q. 無料ツールだけでABテストを続けられますか。

サイトの規模によります。月間数万セッションで、テストするのが月に1〜2本という段階であれば、無料の範囲で十分回せます。無料プランの上限に当たりやすいのは、テスト本数が増えたときと、対象セッション数が伸びたときの2つです。この記事の無料ツールの節で、どこまで戦えるかを整理しています。

Q. Google Optimizeの代わりとして、最も移行しやすいのはどれですか。

管理画面でビジュアル編集ができて、日本語で使えるという条件で探すなら、この記事で扱っているツールのうち国内向けのものが候補になります。移行時に見落としやすいのが、過去のテスト結果が引き継げないという点です。移行前に、これまでのテスト履歴と勝ちパターンを別途ドキュメント化しておくことをおすすめします。

Q. テストの結果、どのくらい差がついたら「勝ち」と判断してよいのですか。

見た目の数字だけで判断しないことが前提になります。CVRが1.8%から2.1%に上がっていても、母数が小さければ誤差の範囲です。必要なセッション数の考え方は、この記事の該当セクションにまとめています。ツール側が有意差を判定してくれる場合も、期間を途中で切り上げると判定が揺れるため、事前に決めた期間は回しきってください。

Q. ページの表示が一瞬崩れる「ちらつき」は避けられますか。

タグを後から読み込ませる方式のツールでは、程度の差はあれ発生します。気になる場合は、ちらつき対策を実装しているツールを選ぶか、テスト対象を表示速度の影響を受けにくい箇所に限定する方法があります。表示速度そのものが気になっている場合はサイト表示速度の改善方法も合わせて確認してみてください。

Q. ABテストツールとヒートマップ、どちらを先に入れるべきですか。

ヒートマップが先です。ABテストは「何をテストするか」が決まってから効果を発揮するツールで、その仮説の材料をくれるのがヒートマップです。順序を逆にすると、思いつきのテストを繰り返して時間だけが過ぎます。使い方はヒートマップ分析の見方と活用法にまとめています。

テスト運用で困ったら

ここまで読んで「ツールは選べそうだけれど、仮説の立て方やテスト設計がわからない」と感じた方も多いと思います。それは自然な感覚です。ツールの操作は覚えれば誰でもできますが、何をテストするか(仮説)とどう判断するか(統計的有意性)は、経験がないと難しい部分です。

最初のテスト対象に迷ったときは、影響が大きく検証もしやすい箇所から入るのが定石です。具体的にはLPのUI改善で扱うファーストビューまわり、CTAボタンの最適化で扱う文言と配置、フォーム最適化(EFO)で扱う入力項目の3つが、最初の数本のテーマとして扱いやすい領域です。

株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズでは、GAの計測環境整備、ヒートマップ分析、仮説立案、ABテストの設計・実施、結果検証、次の施策提案までを一気通貫で支援しています。ツール選定のアドバイスも含め、サイトの現状を見たうえで「どこから手をつけるべきか」をお伝えします。

まずは無料のサイト診断で、「自社サイトのどこに改善余地があるか」を把握するところから始めてみてください。

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参考文献

※料金・プラン構成は2026年8月時点で各公式ページを確認したものです。改定される場合があるため、契約前に公式ページで最新の内容をご確認ください。

  1. Optimize Next 公式サイト https://optimize-next.com/
  2. Optimize Next 料金プラン https://optimize-next.com/plans
  3. Optimize Next「Microsoft Clarityと連携開始」(2025年6月11日・2026年1月22日追記) https://optimize-next.com/news/20250611
  4. Microsoft Clarity 公式サイト https://clarity.microsoft.com/
  5. VWO 公式サイト・料金ページ https://vwo.com/pricing/
  6. Optimizely 公式サイト・プランページ https://www.optimizely.com/plans/
  7. KARTE Blocks 公式サイト https://blocks.karte.io/
  8. AB Tasty 公式サイト https://www.abtasty.com/pricing/
  9. DLPO 公式サイト https://dlpo.jp/
  10. GrowthBook 公式サイト https://www.growthbook.io/
  11. Evan Miller「Sample Size Calculator」(必要サンプル数の算出方法) https://www.evanmiller.org/ab-testing/sample-size.html
  12. VWO「A/B Test Duration Calculator」(テスト期間の試算) https://vwo.com/tools/ab-test-duration-calculator/

※必要セッション数の表は、有意水準5%(両側)・検出力80%の2群比率の検定に基づく試算値です。