先日、ある人材系サービスを運営しているクライアントとの定例ミーティングで、こんなやり取りがありました。

「先月の広告レポートに”CVR 0.8%“って書いてあったんですけど、これって普通なんですか?」

聞けば、広告代理店からは毎月レポートが届くものの、そこに並ぶ数字が良いのか悪いのか、判断する基準がないまま半年が過ぎていたそうです。

この話は珍しくありません。CVRという言葉は知っていても、自社の数字をどう評価して次に何をすべきかまで落とし込めている会社は多くありません。この記事では、そこまでを一続きで解説します。

そもそもCVRとは

CVRは「Conversion Rate」の略で、コンバージョン率や成約率と訳されます。

サイトに来た人のうち、どれだけの人が目的のアクションを起こしてくれたか。その割合です。

何を「目的のアクション」とするかはサイト次第です。ECなら購入、BtoBなら問い合わせや資料請求、求人サイトなら応募完了。サイトごとにゴールが違うので、CVRの意味合いも変わります。

だからこそ、この数字を見ていないと「サイトがうまく機能しているかどうか」が永遠にわかりません。広告でどれだけ人を集めても、サイトに来た人が動いてくれなければ売上にはならないからです。

CVRの計算方法と、よくある落とし穴

CVR(%)= コンバージョン数 ÷ セッション数 × 100

月に10,000セッションあって、問い合わせが50件なら、CVRは0.5%です。

計算式自体は単純ですが、判断が分かれるのは分母を何にするかです。

GA(Google Analytics)では「セッション」ベースと「ユーザー」ベースの2つの方法でCVRを出せます。どちらを使うかで数字がまるで変わります。

たとえば、常連が多くて1人あたり月3回訪問するサイトの場合:

計算方法分母CVR
セッションベース30,000セッション0.17%
ユーザーベース10,000ユーザー0.5%

同じサイト、同じ期間なのに3倍近い差が出ます。

以前あるクライアント先で「先月よりCVRが改善しました」という報告があったものの、確認すると先月のレポートはセッションベース、今月はユーザーベースで計算されていた、ということがありました。制作チームと広告運用の担当者が、それぞれ違う定義を使っていたためです。

こうなると月次の比較自体が成り立ちません。分母の定義は最初に決めて、関係者全員で揃えておく必要があります。ここを曖昧にしたまま「CVRが上がった・下がった」と議論しても、判断材料にはなりません。GAでの具体的な設定と分析手順はGAでCVRを分析する方法にまとめています。

業界別の平均CVR(参考値)

「結局、自社の数字は高いのか低いのか」。ここは気になるポイントですよね。

業界ごとの目安を挙げますが、先にお伝えしておくと、この手の平均値は参考程度にとどめるのが望ましいです。理由は表のあとで説明します。

以下は、First Page Sageの2026年版B2Bコンバージョン率レポート、IRP Commerceのeコマース業界データをもとにした数字です。

業界CVR平均(目安)出典
EC(総合)約1.89%IRP Commerce全業界平均
EC(食品・飲料)4.0〜6.0%同上。EC内で最も高い
EC(アパレル)1.5〜2.5%価格帯・ブランドで差が激しい
BtoB(全般)中央値2.9%First Page Sage
BtoB(SaaS)LP平均 約1.1%同上
BtoB(専門サービス)4.0〜6.0%弁護士・コンサル等
不動産0.5〜1.5%検討期間が長い
人材・求人2.0〜5.0%応募導線の設計で大きく変わる

平均値を参考程度にとどめたほうがよい理由は、CVRが流入元によって全く別の数字になるからです。BtoBの水準をより細かく確認したい場合はBtoBサイトのCVR平均で業界別のベンチマークを整理しています。

冒頭の人材系クライアントの話に戻ります。全体CVRは0.8%でしたが、中身を分解すると景色がガラッと変わりました。

流入元CVR構成比
社名での指名検索12.3%15%
リスティング広告2.1%40%
SEO記事経由0.3%35%
SNS広告0.1%10%

このサイトのCVR 0.8%を「低い」と断じるのは早いです。SEO記事はそもそも情報収集段階のユーザーが来ているので、CVRが低いのは構造的に当たり前です。問題は「リスティング広告で2.1%」のほうで、ここは広告費を直接投下しているのに業界水準を下回っていました。

全体CVRの数字だけを見ていると、本当に改善すべき場所を見誤ります。

First Page Sageのレポートでも、オーガニック検索のCVRは約2.6%、PPC広告は約1.5%、ソーシャルメディアは1%以下と報告されています。チャネルごとに「普通」が違うので、全体平均と比較しても判断材料としては弱いです。

CVRが低いとき、最初に見るべき場所

サイト改善の相談を受けると、「サイト全体をリニューアルしましょう」という話になりがちです。ただ大半の場合、問題は全体ではなく特定のポイントに集中しています。

最初に行うのは、GAとヒートマップを見ながら「どこでユーザーが止まっているか」を突き止める作業です。ほとんどのケースで、以下のどれかに原因があります。より網羅的な原因の切り分けはCVRが低い原因と対策で解説しています。

ファーストビューの話

ページを開いて最初に目に入るエリアです。ここの離脱率が極端に高いサイトは、ほぼ確実に「誰に向かって話しているのかわからない」状態になっています。

以前、あるBtoB SaaSのLPを改善したとき、ファーストビューのコピーは「次世代クラウドプラットフォームで業務改革を」でした。かっこいい印象はありますが、これを読んで「自分のことだ」と受け取る人がどれだけいるでしょうか。

これを「月末の請求書処理、まだExcelで回していませんか?」に変えたら、スクロール率が20ポイント以上改善しました。やったことはテキストを1行変えただけです。

重要なのは、「会社が言いたいこと」ではなく「ユーザーが頷くこと」を最初に見せることです。理屈としてはわかりやすい話ですが、自社のことになると途端に難しくなります。外部の視点が必要になるのはこのためです。ファーストビューを含めたLPの改善点はLPのCVRを上げるUI改善ポイント10選にまとめています。

CTAの話

CTA(お問い合わせボタン等)がページ最下部にしかないサイトは、いまだに多く見られます。

特にBtoBサイトで多いのが、3,000〜5,000字の説明文をずっと読ませて、最後にようやく「お問い合わせはこちら」が出てくるパターンです。ここまでスクロールする人がどれだけいるかというと、ヒートマップを見ると大体3〜4割。残りの6割はCTAの存在に気づかないまま帰っています。

解決策は単純で、記事の中盤——ユーザーの関心が高まるポイントにもCTAを配置するだけです。具体的に言うと、改善事例や具体的な数字を出した直後がいい。「へえ、そんなに変わるんだ」と思った瞬間が、行動に一番近いタイミングだからです。

ボタンの文言も影響します。「お問い合わせ」という表記は、読み手にとって心理的な重さがあります。「まずは無料で相談する」に変えるだけでクリック率が動くことは珍しくありません。どちらが効くかはサイトによって変わるため、ABテストで検証するのが望ましいです。文言とデザインの詰め方はCTAの最適化で扱っています。

フォームの話

問い合わせフォームにたどり着いたのに、そこで離脱してしまう。かなりもったいないパターンです。

クライアントの問い合わせフォームを見直す機会がありました。項目数が14。会社名、部署、役職、電話番号、メールアドレス、郵便番号、住所、従業員数、業種、予算規模と並んでいました。最初のコンタクトでこれをすべて聞く必要があるかは、一度見直す価値があります。

名前、メールアドレス、おおまかな相談内容。初回はこの3つで足ります。残りは商談に入ってから聞けば問題ありません。このクライアントの場合、14項目を5項目に削ったところCVRが1.8倍になりました。フォーム側の具体的な打ち手はフォーム最適化(EFO)でCVRを改善で7つに整理しています。

ページ速度とモバイル対応の話

Think with Googleが公表したレポート「The Need for Mobile Speed」(2017年、Google/SOASTA Research)によると、ページの読み込みが3秒を超えると、モバイルユーザーの53%が離脱するとされています。

2017年時点のデータであり、現在はさらに要求水準が上がっていると考えられます。表示速度の具体的な改善手順はサイト表示速度の改善方法で解説しています。

もうひとつ、総務省の令和7年版情報通信白書によれば、2024年時点でスマートフォンによるインターネット利用率は74.4%です。4人に3人がスマートフォンで見ている計算になります。

それにもかかわらず、PCでの表示だけ確認して公開しているサイトは少なくありません。特にBtoBサイトで目立ちます。「BtoBだからPCで見られるはず」という前提は、現状には合っていません。あなたも移動中の電車で、スマートフォンからtoB商材のサイトを開いていませんか。モバイル側の設計はレスポンシブデザインとはで整理しています。

一度、自分のスマホで自社サイトのフォームに入力してみてください。それだけで2〜3個は改善点が見つかるはずです。

広告を増やすのは、サイトを直してから

施策現状改善後月間CV数
広告費を2倍にする10,000訪問 × CVR 1%20,000訪問 × CVR 1%100 → 200件
CVRを2倍にする10,000訪問 × CVR 1%10,000訪問 × CVR 2%100 → 200件

結果は同じ200件です。でも広告費の2倍は来月も再来月もかかり続けます。CVR改善は一度やれば効果が残ります。

この話をすると「CVRを2倍にするのは現実的なのか」と聞かれることがあります。すべてのサイトで簡単に実現できるわけではありません。ただ、前述のフォーム改善の例(1.8倍)のように、手をつけていないサイトほど伸びしろは大きくなります。

そしてCVRが上がった状態で広告を回せば、CPAが下がります。同じ広告費でCV数が増えます。CVR改善は広告の費用対効果まで改善してくれるわけです。

予算が潤沢にあるなら同時並行でも問題ありませんが、限られた予算の中で優先順位をつけるなら、サイト改善を先に行うことが望ましいです。広告の増額はその後で構いません。この考え方は広告費を抑えてCVを増やすでも具体的に扱っています。

計測できなければ、改善もできません

すぐに改善施策に走りたい気持ちはわかりますが、その前に計測環境を整えてください。「なんとなくCVが少ない」では打ち手の出しようがないですし、やった施策が効いたのかどうかもわかりません。

  • GAのキーイベント設定(CV設定):最優先の項目です。問い合わせ完了ページへの到達やボタンクリックを計測対象に登録しておけば、流入元ごと・ページごとのCVRが自動で出ます。「GAは入れているがコンバージョン設定はまだ」という状態のサイトは意外と多く、かなりもったいない状態です。
  • ヒートマップ:数字で「CVRが低い」ことはわかっても、「なぜ低いか」は数字だけでは見えません。ユーザーがどこまでスクロールしたか、どこで手が止まったか、どこをクリックしたか。これが見えると仮説の精度が上がります。Microsoft Clarityであれば無料で、タグを1つ入れるだけで導入できます。

見方の詳細はヒートマップ分析の見方と活用法にまとめました。

おわりに

CVR改善には必殺技がありません。仮説を立てて、小さくテストして、効果があったものだけ残す。この繰り返しです。

ただ、このサイクルを自社だけで回し続けるのは非常に難しいのが実情です。分析して、仮説を立てて、デザインを直して、テストを設計して、結果を検証する。通常業務の合間にこれを毎月続けるのは、担当者が1〜2人の会社では現実的ではありません。具体的な施策の型はCVR改善の方法7選にまとめています。

株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズは、この「分析→施策→検証」のサイクルを丸ごと引き受けるサービスです。分析と施策は弊社で行い、貴社は意思決定と方向性の判断に集中していただく形になります。

まずは現状のサイトにどれだけ改善余地があるか、無料で診断もやっているので、気になった方は資料を見てみてください

参考文献

  1. First Page Sage「B2B Conversion Rates By Industry – 2026」https://firstpagesage.com/reports/b2b-conversion-rates-by-industry-fc/
  2. IRP Commerce「eCommerce Industry Benchmark Data」https://www.irpcommerce.com/en/gb/ecommercemarketdata.aspx
  3. Unbounce「Conversion Benchmark Report」(2024 Q4)https://unbounce.com/conversion-rate-optimization/b2b-conversion-rates/
  4. Think with Google / Google/SOASTA Research「The Need for Mobile Speed」(2017)https://www.thinkwithgoogle.com/consumer-insights/consumer-trends/mobile-site-load-time-statistics/
  5. 総務省 令和7年版情報通信白書「インターネット接続端末」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111110.html