サイト改善の外注は、専門知見をすぐに使える一方で、ノウハウが社内に残りにくいという弱点があります。外注が向くのは専任の改善担当者がいない会社や月間セッションが一定規模以上ある会社、内製で回せるのはスキルのある担当者がいて改善箇所が限定的な会社です。どちらか一方ではなく、分析は外注・実装は社内といったハイブリッドも現実的な選択肢になります。
昨秋、あるBtoB SaaSの会社から相談を受けました。マーケティング担当が1人で、広告もSEOもサイト改善も兼務している。月に1回ヒートマップを見てボタンの色を変えているものの、CVRは半年間横ばいでした。「これは外に出したほうがいいんでしょうか」と聞かれて、こうお答えしました。「御社の場合は、まだ外注しないほうがいいと思います」と。
理由は後述します。この相談で感じたのは、外注するかどうかの判断材料が世の中にあまり出回っていないということです。外注会社のサイトには外注すべき理由が並び、内製推進派の記事には自社でやるべき理由が書いてある。どちらもポジショントークが混じっていて、読んだ側は結局判断できないままになりがちです。
弊社はサイト改善を外注として請け負う側です。外注のメリットを語る立場ですが、同時にデメリットも把握しています。この記事では、外注が向いている会社と内製で回せる会社の境界線を、できるだけ率直に整理します。
外注と内製は二択ではない
実際に多いのは、分析と戦略は外注・実装は社内、あるいはABテストの設計だけ外注して結果の判断は自社で行う、といったハイブリッド型です。フルアウトソースか完全内製か、どちらか一方を選ぶ必要はありません。
ただ、比較の軸がないと判断しづらいので、この記事ではあえて外注寄りと内製寄りに分けて整理します。
サイト改善を外注するメリット
専門知見をすぐに使える
CVR改善は「分析 → 仮説 → 施策 → 検証」のサイクルを回す仕事です。GAの設計、ヒートマップの読み方、ABテストの統計判定、UI/UXの知識と、必要な知見の幅がかなり広い領域になります。
経済産業省の推計では2030年までにIT人材が最大79万人不足するとされており(参照:経済産業省 IT人材育成の状況等について)、IPAの調査でも6割以上の企業がDX人材の確保に困難を抱えています(参照:IPA DX動向2024)。サイト改善の専門人材となると、採用の難易度はさらに上がります。
外注であれば、採用も育成もスキップして、プロジェクト開始と同時に動き出せます。
他社事例という引き出し
複数のクライアントのサイト改善に関わっていると、業界横断で打ち手が蓄積されます。BtoBのフォームではこのパターンが効く、ECのカート離脱にはこの施策が相性が良い、といった社内だけでは見えにくい知見です。
ただし、汎用的なベストプラクティスを持ってくるだけの会社では、この利点は薄くなります。自社サイトの文脈に合わせてカスタマイズできるかどうかが分かれ目です。
コア業務へのリソース集中
マーケ担当者がサイト改善に時間を取られると、広告運用や商談対応にしわ寄せがきます。少人数の会社では深刻になりやすい問題です。外注に出すことで、社内リソースを本業に集中できます。数字には見えにくいものの、実は一番大きなメリットかもしれません。
第三者視点
自社サイトを毎日見ていると、ユーザー目線を失いがちです。外部の人間が「なぜこのボタンがここにあるのですか」と問うだけで、改善の起点になることは少なくありません。
サイト改善を外注するデメリット
外注を請け負う側として、ここは率直に書きます。
ノウハウが社内に残りにくい
外注の最大の構造的弱点です。外注先が分析・施策・テスト・レポートまで担っても、「なぜその仮説を立てたか」という思考プロセスは外注先の頭の中にあります。契約が終わったあと、同じクオリティで改善を回せるかというと、そのままでは難しいのが実情です。
対策としては、レポートに仮説のロジックを含めてもらうこと、社内担当者がミーティングに毎回参加することが挙げられます。ただ、忙しい現場では後回しにされがちです。
コミュニケーションコスト
サイト改善は事業の文脈を理解して施策を考える仕事です。外注先の解像度が上がるまでには時間がかかり、初月はほぼヒアリングと分析で終わることも珍しくありません。
また、内製なら当日中に着手できることも、外注では依頼 → 確認 → 実装というプロセスが入ります。このタイムラグは避けられません。
継続的な費用
サイト改善のコンサルティングは月額5万〜50万円が相場です(参照:PRONIアイミツ Webコンサルティングの費用相場)。施策の実行込みだと月額20万〜50万円、包括的なマーケ支援だと30万〜100万円になることもあります(参照:Web幹事 Webコンサルティングの費用相場)。
成果が出ていればROIで正当化できますが、効果が見えにくい月が続くと、社内で「この費用は必要か」という議論になりやすい部分です。
内製のメリット・デメリット
公平のために内製側も整理します。
内製のメリットは3つです。スピード感(気づいたその日のうちに直せる)、ノウハウの蓄積(失敗を含めて経験が溜まる)、事業理解の深さ(外注先がヒアリングで3時間かけて聞き出すことを、社内担当者は感覚で把握している)。
デメリットも3つあります。担当者のスキル依存(GAもABテストもUIも1人でカバーするのは現実的に難しい)、視野の狭さ(自社データしか見ないため改善が偏りやすい)、属人化リスク(担当者が辞めると止まる)。
外注すべき会社、内製で回せる会社
冒頭のBtoB SaaSの話に戻ります。「まだ外注しないほうがいい」とお伝えした理由は3つでした。担当者のスキルが高くGAもABテストの考え方も理解していたこと。月間流入が3,000セッション程度でテストのサンプルが足りなかったこと。計測環境が整備途上だったこと。
ここから逆算すると、外注が効く条件と内製で回せる条件が見えてきます。
外注したほうがいい会社
専任の改善担当者がいない、またはスキルが足りない会社です。GAやABテストを独学で片手間にキャッチアップするのは難しく、プロの知見を使ったほうが早く、結果も出やすい傾向にあります。
月間セッションが一定規模以上ある会社も外注向きです。ABテストで統計的に有意な結果を出すには、目安として月間1万セッション以上が欲しいところ。数千セッション程度だとテスト期間が長くなりすぎて、外注費用に見合わないことがあります。
社内の意思決定が早い会社も相性が良いです。施策提案から翌週には実装できるくらいのスピード感があると、外注の機動力が活きます。承認に何週間もかかる組織では、その機動力が殺されてしまいます。
内製で回せる会社
スキルのある担当者がいて、時間も確保できている会社です。改善に週10時間以上使える担当者がGAとテスト設計をある程度こなせるなら、外注費用を人件費やツール費に充てるほうが効率的なケースがあります。
サイト規模が小さく、改善箇所が限定的な会社も内製向きです。ページ数が少なくCVポイントも1〜2つなら、自分たちでヒートマップを見て月に1〜2回テストを回すほうがコスパが良いでしょう。
長期的にマーケ組織を強化したい会社も、内製を軸にする価値があります。外注は今の穴を埋める手段です。組織を育てたいなら、最初から内製で経験を積むほうが、将来のケイパビリティにつながります。
費用感の目安
| 依頼内容 | 費用相場(月額) | 備考 |
|---|---|---|
| アクセス解析・レポートのみ | 5〜15万円 | 分析レポート提出。施策は提案のみ、実行は別 |
| 分析+施策実行(ABテスト含む) | 20〜50万円 | 仮説から検証まで一気通貫。中小企業に多い価格帯 |
| 包括的マーケティング支援 | 30〜100万円 | CVR改善+SEO・広告運用・コンテンツなど |
初期費用(計測環境構築・サイト診断)は別途10万〜30万円程度が目安です。
内製の場合、マーケ担当者の人件費を月40万〜60万円と仮定し、サイト改善に20%の時間を使うなら実質月8万〜12万円になります。ただし、ここには学習コストや手探りの非効率は含まれていません。単純な費用比較では内製が安く見えますが、同じ期間で出せる成果量まで含めると、外注のROIが上回るケースは十分にあります。
失敗しない発注のコツ
Web改善の外注でよくある失敗は、目的が曖昧・丸投げ・契約範囲が不明確の3パターンです(参照:レリゴ Web制作外注の失敗例と対策)。
改善したい指標を言語化しておくことが第一歩です。現在のCVR、改善したい指標、過去に試した施策と結果、課題を感じている箇所。完璧でなくて構いません。「フォーム完了率が低い気がする」だけでも、外注先には貴重な情報になります。
契約範囲を具体的に決めておくことも欠かせません。分析だけか施策実装まで含むか、デザイン修正は何回までか。とくにレポートの中身は確認したいところです。GAのスクリーンショットを貼っただけのレポートと、仮説・検証をロジカルにまとめたレポートでは、価値がまるで違います。
丸投げを避けることも重要です。外注を請け負う側として言いにくいことですが、全部お任せという形は困ります。外注先は改善のプロであって、貴社の事業のプロではありません。月1回30分の振り返りがあるだけで、成果は大きく変わります。
成果までの期間を共有しておくことも大切です。初月は分析と計測環境整備、2ヶ月目で最初のテスト、3ヶ月目以降で成果が見え始める、というのが現実的なペースになります。
データの所有権も確認しておきたいポイントです。GAやABテストツールのアカウント所有権が外注先にあると、契約終了後にデータへアクセスできなくなるリスクがあります。
外注を請け負う側として伝えたいこと
すべての会社に外注を勧めるのは、誠実ではないと考えています。向いている会社には、外注でしか出せない価値を提供できます。向いていない会社に無理に売っても、成果が出ず、双方の時間が無駄になるだけです。
外注すべきか内製でいくべきか迷っているなら、株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズで初回の無料診断を行っています。どちらが御社に合うかも含めて率直にお伝えし、「外注しなくていい」という結論になることもあります。気になった方はお気軽にお問い合わせください。
参照した一次ソース