リスティング広告のCVRを高めるには、キーワード設計・広告文・ランディングページ(LP)の3つを順番に整えることが基本になります。CVRが低いとき、原因は「広告側」と「LP側」のどちらか、または両方にあります。CTRは高いのにCVRが低いならLPを、CTRもCVRも低いならキーワード設計を先に見直す。この切り分けができると、広告費を増やさずにCVを伸ばせる余地が見えてきます。クリックは取れているのにCVが出ない状態は、たいていどこかに構造的な問題があります。
BtoB向けのクラウドサービスを提供しているクライアントから、月次の振り返りでこんな数字を見せられたことがあります。「リスティング広告のCTRは3.2%出ているんですが、CVRが0.4%しかありません。クリックは取れている気がするのに、問い合わせが全然来ないんです」というものでした。
管理画面のキャンペーン一覧を見ると、確かにクリック数は月3,800を超えています。ところが、そこから問い合わせフォームに到達している人が180人、実際に送信まで完了しているのがわずか15件。CVRにすると0.39%。CTRは悪くないのに、CVがほとんど出ていない状態でした。
このクライアントでは、広告文の改善、キーワード設計の見直し、LPの修正という3つを並行して回した結果、3か月でCVRが1.3%まで上がり、月間CVは15件から36件に増えました。広告費はほぼ変えていません。ポイントは、どこから手をつけるかの順番と、それぞれの施策の精度でした。この記事では、リスティング広告のCVRを上げるために実務レベルで何をするかを一通り整理します。
CTRとCVRの関係を正しく理解する
リスティング広告のCVRが低いとき、原因は大きく2つに分かれます。広告側の問題と、LP側の問題です。両方に問題があるケースも当然あります。
まず整理しておきたいのは、CTR(クリック率)が高いのにCVRが低い場合と、CTRもCVRも低い場合とでは、対処が異なるということです。
CTRが高くてCVRが低い状態は、「興味を引けてはいるが、クリック先で期待を裏切っている」ことを意味します。この場合、最優先はLPの改善です。広告文が約束していることとLPの内容にギャップがあるか、LPの使い勝手に問題がある可能性が高くなります。
逆にCTRもCVRも低い場合は、そもそもキーワード選定やマッチタイプの設定に問題があり、意図と合わないユーザーに広告が出ている可能性があります。この場合はキーワード戦略の見直しが先になります。
WordStreamが2025年に公開したGoogle広告のベンチマークレポートによると、Google検索広告の全業種平均CTRは6.42%、平均CVRは4.40%です。業界ごとにバラつきが大きいので、この数字だけで良し悪しは判断できません。ただ、検索広告のCVRが1%を切っている状態は、ほぼ確実にどこかに構造的な問題があると考えてよいでしょう。
キーワードのマッチタイプ戦略(広すぎる網をまず絞る)
CVRが上がらない原因の中で、最も見落とされやすいのがキーワード設計です。
Google広告のマッチタイプには、完全一致、フレーズ一致、部分一致(インテントマッチ)の3種類があります。2025年のアップデート以降、部分一致はGoogleのAIが検索意図を解釈して拡張する「インテントマッチ」として動作するようになりました。
部分一致は配信量を増やすには便利ですが、CVRを高めたい場合には諸刃の剣になります。BtoBサービスで「勤怠管理 システム」を部分一致で入稿すると、「勤怠管理 エクセル 無料テンプレート」や「勤怠管理 やり方」といった情報収集段階の検索にも広告が表示されます。クリックはされても、CVにはつながりにくい。
先ほどのクラウドサービスのクライアントでは、検索語句レポートを確認したところ、部分一致で拡張された検索語句の63%が、サービスの契約検討とは無関係な情報収集系クエリでした。広告費の4割近くが、CVの見込みがほぼゼロの検索に消えていた計算です。
マッチタイプの見直し手順
実際にやったことを順に書きます。
ステップ1は、検索語句レポートの全件チェックです。過去90日分の検索語句レポートをダウンロードし、全語句をCV有無で分類します。手間はかかりますが、ここを飛ばすと以降の施策がすべて空振りする可能性があります。
ステップ2は、CV実績のある語句をフレーズ一致・完全一致に昇格させることです。実際にCVが出ている検索語句を、そのまま完全一致またはフレーズ一致の新しいキーワードとして追加します。部分一致だけで拾っていた「当たりキーワード」を、より確実に配信するための措置です。
ステップ3は、CV見込みの低い語句を除外キーワードに登録することです。「無料」「やり方」「テンプレート」「とは」など、BtoBの問い合わせにつながりにくい語句を除外キーワードとして設定します。
このクライアントでは、除外キーワードを287語追加しました。結果、クリック数は月3,800から2,600に減少しましたが、CVは15件から22件に増加。CTRはほぼ変わらず、CVRが0.4%から0.85%に改善しています。無駄なクリックが減った分、広告費の効率が上がったということです。
ここまでは、まだ広告側の改善です。
除外キーワードは「攻め」の施策
除外キーワードの設定を「守り」として軽視する運用者は多いですが、これは見直したほうがよい考え方です。Googleの公式ヘルプでも、除外キーワードが広告の関連性向上と費用対効果の改善に直結すると明記されています。スマート入札を使っている場合はなおさらで、学習データからノイズが減る分、アルゴリズムの精度が上がります。
注意点を2つ挙げておきます。除外キーワードの部分一致は通常の部分一致とは挙動が違い、類義語には拡張されません。「無料 テンプレート」を除外しても「テンプレート」単体の検索は除外されないので、別途追加が必要です。また、共通の除外キーワード(「求人」「無料」など)はアカウント単位の除外リストで一括管理すると、新規キャンペーン追加時に設定し直す手間がなくなります。
品質スコアを上げる(CPCを下げながらCVRも上げる)
品質スコアの話をすると地味だと感じる方が多いのですが、実はCVR改善と密接に関係しています。
Google広告の品質スコアは、推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性の3つの要素で構成されます。このうち「ランディングページの利便性」が、CVRに直結する要素です。
品質スコアが高いと、同じ入札額でも広告ランクが上がり、上位に表示されやすくなります。逆に言えば、同じ掲載順位を維持するために必要なCPCが下がる。Googleの公式情報によれば、品質スコアが高い広告ほどオークションでの実質CPCが低くなる仕組みです。
つまり品質スコアを上げる取り組みは、CPCを下げてCVRも上げるという、一石二鳥の効果を持っています。
品質スコア改善の具体策
推定クリック率を上げるには、広告見出しにキーワードを自然に含め、「導入実績500社」「初期費用0円」のように具体的な数字を入れます。サイトリンクやコールアウトなどの広告表示オプションをフル活用することも有効です。
広告の関連性を上げるには、広告グループのキーワードを絞り、1グループあたりの主題を明確にします。20〜30個のキーワードを1つの広告グループに入れると関連性が薄まります。レスポンシブ検索広告の見出しに主要キーワードを複数パターン用意するのも効果的です。
ランディングページの利便性を上げるには、ページ表示速度の改善、モバイル操作性の確保、広告文とLPの内容の一貫性を整えます(一貫性は次のセクションで詳述します)。品質スコア7以上を安定維持できていれば、効率のよい運用ができている目安になります。
広告文とLPの一貫性(CVRに最も影響する見えにくい要素)
ここからがこの記事の核心です。
リスティング広告のCVRを左右する要因で、最もインパクトが大きいにもかかわらず最も見落とされているのが、広告文とランディングページの一貫性です。
あるSaaS企業のケースを紹介します。この会社は「業務効率化 ツール」というキーワードで出稿していて、広告の見出しには「業務効率を80%改善|30日間無料トライアル」と書いていました。
ところがクリック先のLPを開くと、ファーストビューには「次世代のワークマネジメントプラットフォーム」と書かれていて、無料トライアルの案内はページの一番下。「業務効率を80%改善」という数字も、ページ内のどこにも見当たりませんでした。
ユーザーの心理を想像してみてください。「業務効率を80%改善できるツールがあるらしい。30日間無料で試せるなら見てみよう」と思ってクリックしたのに、開いたページでは全然違う話が始まる。これでは離脱してしまうのが自然です。
Unbounceが公開している調査データでは、広告のメッセージとLPのメッセージが一致している場合、CVRが最大で2.5倍向上するとされています。
一貫性を保つためのチェックリスト
クライアントの広告とLPをレビューするときに確認しているのは、以下の5項目です。
見出しの一致は、広告文の主要な訴求ポイントがLPのファーストビューに含まれているかを見ます。完全に同じ文言である必要はありませんが、同じメッセージが伝わることが大切です。
数字の一致は、広告文で使った数字(「80%改善」「500社導入」など)がLP内にも明記されているかを見ます。広告で見た数字がLPにないと、信頼感が一気に下がります。
CTAの一致は、広告文で訴求したオファー(「無料トライアル」「資料ダウンロード」など)がLPのメインCTAになっているかを見ます。広告では「無料トライアル」と言いつつLPのCTAが「お問い合わせ」だと、心理的ハードルが上がります。
ターゲットの一致は、広告文が想定している読者層とLPのコンテンツが想定している読者層が同じかを見ます。中小企業向けの広告文でクリックしたのに、LPが大企業向けの事例ばかりだとミスマッチが起きます。
トーンの一致は、広告文がカジュアルなのにLPが堅い、あるいはその逆になっていないかを見ます。些細なことのように見えますが、「なんとなく違う」という違和感は離脱につながります。
先ほどのSaaS企業では、広告グループごとにLPのファーストビューを出し分けるようにしました。「業務効率化 ツール」の広告グループ用のLPでは「業務効率を80%改善。30日間の無料トライアルで効果を実感」というファーストビューに変更し、CTAも「無料トライアルを始める」をファーストビュー直下に配置。
この変更だけで、このキーワード群のCVRが0.6%から1.4%に上がりました。LPの下半分は何も変えていません。ファーストビューとCTAの配置を広告文と揃えただけです。
LP側の改善(広告運用だけでは天井がある)
正直なところ、広告運用の最適化だけでCVRを上げるのには限界があります。キーワードを絞り込み、除外設定を整え、広告文を磨いたとしても、クリック先のLPが問い合わせしにくい構造なら、CVは増えません。穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。
BtoB向けリスティング広告で、LP側のCVRに特に影響が大きいポイントを挙げます。
フォームの項目数
First Page Sageの2025年の統計によると、フォーム項目を7つから3つに減らすとCVRが20〜35%向上するとされています。BtoBサイトの問い合わせフォームは10項目以上あるケースが珍しくなく、ここに手をつけるだけでCVRが跳ね上がることもあります。
「情報が足りないと営業が困る」という社内の声はよく聞きます。しかし、フォームで聞くのか、初回の電話で聞くのかの違いでしかありません。フォームの項目が多くて問い合わせが来ないよりも、最低限の項目で問い合わせを増やし、あとから情報を補完するほうが合理的です。
CVRの基本的な考え方やフォーム改善の詳しい手法は、CVRとは?計算方法と業界別平均値を徹底解説でまとめています。
ファーストビューの離脱率
前述の広告文との一貫性にも関わりますが、LPのファーストビューでユーザーの半数近くが離脱しているケースはよくあります。ヒートマップ(Microsoft Clarityなら無料で使えます)でスクロール率を確認し、ファーストビューからの離脱が40%を超えている場合は、改善が望ましい状態です。
効果が出やすいのは、次のような要素です。メインコピーを抽象的なスローガンから具体的なベネフィットに変更する。社会的証明(導入社数、業界実績、受賞歴など)をファーストビューに配置する。CTAをファーストビュー内に設置し、スクロールしなくても行動できるようにする。
ページ表示速度
Googleの公開データでは、モバイルページの読み込みが1秒から3秒に増えると直帰率が32%増加するとされています。リスティング広告経由のユーザーは「今すぐ情報がほしい」というモチベーションで来ているので、表示が遅いと容赦なく離脱します。
Google PageSpeed Insightsでモバイルスコアが50点を下回っている場合は、画像の圧縮、不要なスクリプトの削除、サーバー応答時間の改善に取り組むことが望ましいです。
LP側の改善を含めた広告費の最適化については、広告費を抑えてCVを増やす|既存サイト改善という選択肢で詳しく解説しています。広告の運用テクニックだけでなく、サイト改善による費用対効果のシミュレーションも載せていますので、あわせてご覧ください。
実践:改善サイクルの回し方
ここまでの内容をまとめると、リスティング広告のCVR改善は3つのレイヤーで考える必要があるということです。
| レイヤー | 主な施策 | 期待効果 |
|---|---|---|
| キーワード設計 | マッチタイプ見直し、除外KW追加 | 無駄クリック削減→CVR向上 |
| 広告文の改善 | 品質スコア向上、訴求精度アップ | CTR・CVR同時改善、CPC低下 |
| LP改善 | フォーム削減、FV改善、速度改善 | クリック後のCVR大幅向上 |
では、実際にどういう順番で手をつけるべきか。優先順位の一例を紹介します。
フェーズ1(初月)は、計測基盤の確認と除外キーワードの設定です。GAのキーイベント設定(CV設定)が正しく動作しているか確認します。意外に思われるかもしれませんが、「広告経由のCVが計測できていない」という状態は珍しくありません。ここが壊れていると、以降の全施策の効果測定ができなくなります。並行して、過去90日分の検索語句レポートをチェックし、除外キーワードを一括設定します。これだけで明らかな無駄遣いが止まるので、初月から費用対効果が改善するケースが多いです。
フェーズ2(2か月目)は、広告文の改善とLPの一貫性チェックです。広告グループの構成を見直し、キーワードのテーマを絞り込む。テーマが明確な広告グループに対して、訴求が一致する広告文を作成します。同時に、広告文とLPのファーストビューの一貫性をチェックし、ミスマッチがあれば修正します。
フェーズ3(3か月目以降)は、LP側の改善です。フォームの項目数、CTAの配置、ページ表示速度。インパクトが大きい順に着手し、月次でA/Bテストを回していきます。1か月に1〜2施策を検証し、効果が出たものを定着させます。
冒頭で紹介したクラウドサービスのクライアントは、このフェーズ1〜3をちょうど3か月で回しました。
| 指標 | 改善前 | フェーズ1後 | フェーズ2後 | フェーズ3後 |
|---|---|---|---|---|
| クリック数/月 | 3,800 | 2,600 | 2,700 | 2,800 |
| CVR | 0.39% | 0.85% | 1.1% | 1.3% |
| CV数/月 | 15件 | 22件 | 30件 | 36件 |
| CPA | 約66,000円 | 約45,000円 | 約37,000円 | 約28,000円 |
注目したいのは、広告費を増やしていないのにCVが3.4倍になっている点です。クリック数はむしろ減っているのに、CVRの改善で獲得効率が大幅に向上しました。CPAは66,000円から28,000円に下がっており、同じ予算で以前の2倍以上のCVが取れるようになっています。
補足:現場でよく聞かれる疑問
「スマート入札を使っているなら手動調整は不要では」という疑問をよく受けます。これは不要ではありません。除外キーワードの追加やマッチタイプの調整は「学習データの質」を改善する作業です。ノイズだらけの検索語句でスマート入札を回していると、AIが誤った学習をして配信が縮小するリスクすらあります。
「LP改善にはフルリニューアルが必要か」という質問もよくあります。むしろ最初はリニューアルしないほうがよい場面が多いです。ファーストビューのコピー変更、CTAの追加、フォーム項目の削減。この3つだけで始めて、効果検証をしてからリニューアルの要否を判断する。いきなり数百万円のリニューアルに突入するのは、健康診断をせずに手術するようなものです。
CVRの業界別平均値や基本的な考え方については、CVRとは?計算方法と業界別平均値を徹底解説で詳しくまとめています。
広告運用「だけ」で完結しない時代
Google広告のシステムは年々高度化していて、入札や配信の最適化はAIがかなりの精度でやってくれるようになりました。差がつくのは、AIが最適化しきれない領域、つまりクリック先のLP品質、フォーム設計、ユーザー体験です。
広告運用の競争優位は「管理画面の設定」から「LPの質」にシフトしています。同じキーワードで同じ入札額を出していても、CVRが3倍違えばCPAは3分の1。広告費の効率差は、LPの出来で決まる時代になりつつあります。
リスティング広告のCVRに課題を感じているなら、広告設定の見直しとLP改善の両面からアプローチすることをおすすめします。
株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズでは、広告運用の改善とLP改善を一体でご支援しています。GAとヒートマップの分析から改善の優先順位づけ、施策の実装、効果検証までを月次サイクルで回す形です。「広告費は変えずにCVを増やしたい」「CPAを下げたい」という課題をお持ちであれば、まずは今の状況にどれだけ改善余地があるか、サービス資料でご確認ください。
参考文献
- WordStream「Google Ads Benchmarks 2025」https://www.wordstream.com/blog/2025-google-ads-benchmarks
- Google広告ヘルプ「キーワードのマッチタイプについて」https://support.google.com/google-ads/answer/7478529
- Google広告ヘルプ「除外キーワードについて」https://support.google.com/google-ads/answer/2453972
- Google広告ヘルプ「品質スコアについて」https://support.google.com/google-ads/answer/6167118
- Unbounce「The Conversion Benchmark Report」https://unbounce.com/conversion-benchmark-report/
- First Page Sage「Conversion Rate Optimization Statistics 2025」https://firstpagesage.com/reports/conversion-rate-optimization-statistics-fc/
- Google/SOASTA「The Need for Mobile Speed」https://www.thinkwithgoogle.com/consumer-insights/consumer-trends/mobile-site-load-time-statistics/