「最近、SEOからのトラフィックが減ってるんですけど、何か変えましたか?」

2025年の秋ごろから、この相談が明らかに増えました。あるBtoBのクライアントは、主力記事群のオーガニック流入が3か月で約25%落ちていた。サイトに技術的な問題はない。記事の内容も古くなっていない。Search Consoleを見ても、インデックスは正常。検索順位もほとんど変わっていない。

順位が変わっていないのにトラフィックが減っている。この矛盾の原因を探っていくと、1つの変化に行き当たりました。GoogleのAI Overview(以下AIO)です。

検索結果の一番上に、AIが生成した要約が表示される。ユーザーはそれを読んで満足し、その下に並ぶ従来の検索結果をクリックしない。結果として、順位は維持しているのにクリックが減る。これが2025年後半から2026年にかけて、多くのサイトで起きていることです。

この記事では、AIO対策とは何か、従来のSEOと何が違うのか、そしてどうすればAI検索の時代にコンテンツの価値を維持できるのかを、現場で実際に取り組んでいることをベースに書きます。

AIO(AI Overview)とは何か

AIOは、Googleが検索結果ページの最上部に表示するAI生成の要約回答です。2024年5月のGoogle I/Oで「AI Overviews」として正式発表され、まず米国で展開が始まりました。日本では2024年8月から本格的に表示されるようになっています。

検索窓に質問を入れると、従来の青いリンク一覧の前に、AIがWeb上の複数ソースから情報を統合した回答が表示される。ユーザーはそれを読んで事足りてしまうことが多い。Googleの公式発表(2025年10月)によると、AIOは200以上の国と地域で展開され、月間10億人以上のユーザーに表示されています(出典:Google The Keyword, 2025年10月)。

数字で見ると事態の深刻さがわかりやすいです。SEOツール大手のSE Rankingが2025年8月に発表した調査によれば、AIOが表示されたクエリでは、オーガニック検索結果1位のCTR(クリック率)が従来比で最大約30%低下する傾向が確認されています(出典:SE Ranking「Google AI Overviews Study」2025年8月)。検索1位を取っても、3割の人がクリックせずにAIOの回答で済ませている計算です。

これは「SEOが終わった」という話ではありません。ただ「SEOだけやっていれば大丈夫」の時代は確実に終わりました。

従来のSEOとAIO対策の違い

ここが一番混乱しやすいところなので、整理します。

従来のSEOは「検索結果で上位に表示されること」がゴールでした。上位に出れば人が来る。来た人をサイト内で動かしてコンバージョンにつなげる。この流れが前提です。

AIO対策は、そこにもう1つレイヤーが加わります。「AIの要約回答に自社コンテンツが引用されること」。あるいは、AIOでは答えきれない深い情報を持つことで、クリックの理由を作ること。この2軸です。

もう少し具体的に書くと、こうなります。

観点従来のSEOAIO対策
主なゴール検索結果で上位表示AI要約への引用 + クリック理由の創出
評価対象ページ単位の品質・関連性情報の構造化・明確さ・一次情報
コンテンツ形式長文・網羅性重視定義文・FAQ・構造化データが重要
信頼性の担保被リンク・ドメインパワーE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)
トラフィックの考え方クリック数の最大化引用獲得 + ゼロクリック対応の両面

誤解しないでいただきたいのは、AIO対策は従来のSEOを否定するものではないということ。むしろ、これまでのSEOの基盤があってこそAIO対策が成り立ちます。ドメインの信頼性が低いサイトのコンテンツは、AIOに引用されにくいです。検索上位に入れる品質のコンテンツを持っていることが、AIO対策の前提条件になります。

AIOに引用されるコンテンツの特徴

ここからが実務的な話になります。AIOがどのコンテンツを引用するかについて、Googleは明確なアルゴリズムを公開していません。ただ、この半年くらい観察してきた傾向と、複数のSEO調査レポートをまとめると、いくつかの特徴が浮かび上がります。

冒頭に明確な定義文がある

「○○とは、△△のことです」。この一文がページの冒頭付近にあるコンテンツは、AIOに引用される確率が高いです。Zyppy社のCyrus Shepard氏の分析でも、AIOに引用されたページの多くが検索クエリに対する直接的な回答を冒頭で提供していたと報告されています(出典:Zyppy「How to Optimize for AI Overviews」2024年)。

昔から言われていた「結論ファースト」と同じ考え方ですが、AIO時代はその重要度が段違いに上がっています。曖昧な前置きが長いコンテンツは引用対象から外れやすい傾向があります。

FAQ形式で疑問に直接答えている

「○○のメリットは?」「○○と△△の違いは?」といった疑問に対して、Q&A形式で明確に答えているコンテンツは引用されやすいです。

理由はシンプルで、AIO自体がユーザーの「質問」に対する「回答」を生成する仕組みだからです。FAQ形式のコンテンツは、AIにとって情報を抽出しやすい構造になっています。

構造化データ(スキーママークアップ)が実装されている

FAQPage、HowTo、Article。これらのSchema.org構造化データが実装されているページは、AIにとってコンテンツの意味を理解しやすくなります。以前は「やっても効果が見えない」と言われていましたが、AIO時代になってAIがコンテンツ構造を正確に理解するための「ラベル」として機能し、価値が再評価されています。

E-E-A-Tが高い

Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)。Googleの品質評価ガイドラインのこの4要素が、AIO引用でも重要です。特にExperience(経験)の比重が増していると感じています。「実際にやった人が書いている」コンテンツは、AIの一般的な回答との差別化になるからです。

一次情報・独自データがある

これが最も強い武器といえます。AIOは複数のWebソースから情報を統合しますが、どこにでもある一般論なら、AIOの回答だけで十分。逆に、そのサイトにしかないデータや分析結果があると、引用ソースに選ばれやすく、クリック理由にもなります。

クライアントの求人メディアで出した「エリア別の応募率比較データ」のような独自情報は、AIOが引用したくても代替がないため引用される可能性が高まります。

具体的なAIO対策——実務で何をするか

理屈はわかった、では何をすればいいのか。実際にクライアントのサイトで行っていることを書きます。

既存コンテンツの構造を見直す

まず手をつけるのはここです。新しい記事を量産するより、既存の資産を最適化するほうが費用対効果が高い。

具体的にやることは3つ。

1つ目:主要記事の冒頭に定義文を追加する。記事タイトルに含まれるキーワードに対して、「○○とは、△△です」という一文を200字以内で冒頭に入れる。既存の記事がエピソードから始まっている場合は、エピソードの直後、最初のH2の中で定義文を入れる形にしています。

2つ目:H2・H3をユーザーの疑問文に合わせる。「AIO対策のポイント」より「AIO対策で最初にやるべきことは?」のほうが、AIが質問と回答の対応関係を認識しやすいです。Search Consoleで実際に流入しているクエリを確認して、そのクエリに対応する見出しになっているかを点検します。

3つ目:FAQ構造化データを追加する。記事内にQ&Aセクションがある場合、FAQPageスキーマを実装します。WordPressならYoast SEOやRank Mathのプラグインで対応可能です。手動でJSON-LDを書いてもいいですが、運用負荷を考えるとプラグイン連携が望ましいです。

「AIOで答えきれない深さ」を持たせる

AIO対策というと「AIに引用されること」ばかりに目が行きがちですが、もう1つの軸として「AIOの回答だけでは不十分だと感じさせること」が重要です。

たとえば「AIO対策とは」で検索すると、AIOは一般的な定義と基本的な対策方法を回答します。でもユーザーが知りたいのは「自分のサイトで具体的に何をすればいいのか」で、そこはAIOの汎用的な回答ではカバーしきれない。

だから記事には、業界固有の事例、具体的な数値の変化、ツールの使い方のような個別性の高い情報を入れる。これがクリック理由になります。

あるクライアントのSEO記事群で、一般的なハウツー情報だけの記事と、自社データを含む記事のCTR(Search Consoleベース)を比較したことがあります。AIOが表示されるクエリに限定して見ると、自社データを含む記事のCTRは含まない記事の約1.4倍でした。サンプルとしては限定的ですが、一次情報の価値を実感した事例です。

E-E-A-Tを意識した著者情報の整備

見落とされがちですが、著者情報のページはAIO時代にこそ整備する必要があります。

記事ごとに著者名を明示し、著者プロフィールページを用意する。そこに経歴、資格、実績を書く。組織としての信頼性だけでなく、書いている個人の専門性と経験をGoogleに伝える。

Schema.orgのPerson構造化データ、Article構造化データでauthorを指定するのも有効です。これは技術的にはそこまで難しくないですが、多くのサイトがまだやっていません。

狙うクエリの選び方を変える

「うちのキーワードはAIOで完結されやすいのか、そうでないのか」——ここが対策の起点になります。

AIOの普及で「ゼロクリック検索」——検索結果ページで完結し、どのサイトにも訪問しない検索が増えています。SparkToroの調査(2024年)では、Google検索の約58.5%がゼロクリックで終わっていると報告されています(出典:SparkToro / Datos「Zero-Click Search Study」2024年)。

ただ、すべてのクエリで同じことが起きているわけではありません。「○○とは」「○○ 意味」のような定義系クエリはAIOで完結しやすい。一方で「○○ 比較」「○○ 事例」「○○ 費用」のようなクエリはクリックにつながりやすい傾向があります。AIO時代のコンテンツ戦略では、検索ボリュームだけでなく「AIOで完結しにくいクエリかどうか」を判断基準に加えることが望ましいです。

ティーラがAIO対策で実践していること

ティーラでは「SEO/AIO対応を意識する」を方針として明文化しています。クライアントサイトのトラフィック減少の相談が重なったことを背景に、2025年後半から標準プロセスに組み込んでいます。

具体的に何をしているかというと、クライアントの新規記事制作とサイト改善の両方で、以下のことを標準プロセスに組み込んでいます。

記事構成段階での設計。新規記事を作るとき、冒頭200字以内に定義文を入れること、H2にユーザーの検索意図を反映すること、FAQセクションを必ず設けることを構成テンプレートに入れています。ライターやディレクターが個別に判断するのではなく、フォーマットとして標準化しました。

構造化データの一括実装。クライアントのWordPressサイトで、既存記事にFAQPage、HowTo、Articleの構造化データをまとめて実装する作業を進めています。あるクライアントでは約80記事に対して一括で実装を行い、実装後3か月でAIOへの引用が確認できた記事が6本出ました。

一次情報の意図的な組み込み。クライアントの許可を得たうえで、改善施策の数値結果や業界特有のデータを記事に盛り込んでいます。「CVR改善でフォーム項目を14から5に減らしたらCVRが1.8倍になった」のような具体的な事例は、汎用的なハウツー記事では書けない。この差別化がAIO時代にはそのまま競争優位になります。

月次でのAIO表示モニタリング。主要キーワードで検索した際にAIOが表示されるかどうか、表示される場合にどのサイトが引用されているかを月次でチェックしています。手動での確認が中心ですが、表示傾向の変化を追うことで、Googleのアルゴリズム変更への対応が早くなります。

AIO対策で見落としがちなこと

AI生成コンテンツの大量投入は逆効果になりうる。AIO対策のためにAIで記事を量産するのは適切ではありません。品質の低いコンテンツの大量生産は2024年3月のコアアップデートで明確にペナルティ対象になりました。AIはツールとして使い、経験に基づく独自の価値を乗せる。この順番が逆転すると、SEOもAIOも両方失います。

AIO対策はSEOの代替ではない。AIOに引用されるためには、まずGoogleにインデックスされ、検索上位に入れる品質のコンテンツが前提です。技術的な健全性、コンテンツの品質、被リンクの構築——SEOの基本を疎かにしてAIO対策だけやっても良い結果は期待できません。

すべてのクエリでAIOが表示されるわけではない。特にYMYL領域(医療・法律・金融)ではAIOの表示が制限される傾向があります。自社が狙うキーワードでAIOが実際に表示されているかを確認した上で、対策の優先度を設定することが望ましいです。

まとめではなく、現在地の話

正直に言うと、AIO対策はまだ「こうすれば確実にうまくいく」と言い切れる段階ではありません。Google自体がAIOのアルゴリズムを頻繁に調整していますし、引用されるコンテンツの傾向も半年前とは変わっています。

ただ、確実に言えることが1つあります。何もしなければ、検索からのトラフィックは緩やかに減り続けるということです。AIOの表示範囲は拡大し続けていて、この流れが逆転する見込みはありません。

だからこそ、今の段階で「定義文の整備」「構造化データの実装」「一次情報の強化」「E-E-A-Tの向上」という基盤を固めておくことが大事です。これらは仮にAIOのアルゴリズムが変わっても、コンテンツの品質を高める施策であることに変わりはない。投資として無駄にならない打ち手です。

ティーラでは、SEO・AIO対策を含むWebマーケティング全般のご相談を受け付けています。「自社サイトのトラフィックが減っているが原因がわからない」「AIO対策として具体的に何から手をつけるべきか」といったご相談には、現状分析からお手伝いできます。まずはお気軽にお問い合わせください


参考文献