去年の秋、ある介護施設を運営する会社の採用担当者から連絡がありました。
「求人媒体に年間200万円以上かけているのに、応募がほとんど来ないんです」
話を聞いてみると、Indeed・ハローワーク・地域の求人誌に毎月掲載料を払っている。でも応募件数は月に2〜3件。しかも面接辞退が多い。かろうじて採用できた人も半年以内に離職してしまう、という状態でした。
原因を調べるために、まず応募者の導線を追いました。求人媒体で興味を持った人が次にやることは何か。社名でのGoogle検索です。そして出てきたのが、10年前のWordPressテーマそのままのコーポレートサイト。採用情報ページにはPDFの募集要項が1枚貼ってあるだけ。職場の写真はゼロ。社員の声もゼロでした。
これでは応募につながりません。いくら求人媒体で良い条件を書いても、検索してたどり着くサイトが「この会社は大丈夫だろうか」という印象を与えてしまえば、応募の手は止まります。
この記事では、こうした「採用に本気の会社が作るべき採用サイト」の設計を、構成・デザイン・外部連携まで含めて解説します。大手のように予算が潤沢でなくても、中小企業が現実的にできる範囲の話を中心にします。
求職者は採用サイトの何を見ているか
まず、作り手の視点ではなく、見る側の行動から確認します。
株式会社ONEが2022年に実施した調査では、求職者の約9割が「応募前に企業のホームページや採用サイトを確認する」と回答しています。さらに、エン・ジャパンの「転職者の本音アンケート」でも、約7割が「企業サイトの情報が不十分だと応募意欲が下がる」と答えています。
つまり、求人媒体で「興味があるかも」と思った候補者のほとんどが、次の行動として会社のサイトを見に来ます。そこで何を見ているかというと、大きく4つです。
仕事内容の具体像が、まず1つ目です。「営業職」「介護スタッフ」という肩書だけでは何もわかりません。求職者が知りたいのは、入社したら毎日どのような1日を過ごすのか。抽象的な業務説明よりも、1日のスケジュール例のほうがずっと刺さります。
2つ目は、職場の雰囲気や人間関係です。「アットホームな職場です」と書いてあるのに写真が1枚もない。こうした採用サイトは信用されにくいです。求職者が見たいのは、実際に働いている人の表情とオフィスの空気感です。
3つ目は、待遇・福利厚生の正直な情報です。給与レンジ、賞与実績、残業時間、有給取得率。これを隠す会社は候補者のリストから外れがちです。マイナビの調査でも、企業選びで重視される項目の上位は「給与・賞与」「休日・休暇」「勤務地」とされています。
4つ目は、選考プロセスの透明性です。応募から内定まで何日かかるのか。面接は何回か。オンライン対応できるか。これが不明だと、複数社を並行して受ける転職市場では後回しにされます。
この4つがきちんと伝わっているかどうかで、採用サイトの応募率は大きく変わります。逆に言えば、凝ったデザインよりも先に、この4つの情報が揃っているかを確認してください。
採用サイトに必要なページ構成
情報を整理したら、次は構成です。中小企業の採用サイトで、最低限用意しておきたいページを挙げます。
トップページ(採用TOP)
ファーストビューで「この会社で働くイメージ」が伝わることが最優先です。キャッチコピーと、写真またはショートムービーの組み合わせが基本形になります。
ここで注意したいのが、コーポレートサイトのトップページを採用トップの代わりにしないことです。コーポレートサイトはクライアントや株主に向けた顔で、求職者向けではありません。採用には採用の入り口が必要です。コーポレートサイトの作り方と採用サイトの設計は、目的もターゲットも異なるので分けて考えてください。
募集要項ページ
職種ごとに1ページずつ作るのが理想です。全職種を1ページにまとめると情報が煩雑になり、ユーザーが自分に関係ない情報をスクロールし続けることになります。
記載しておきたい項目は以下の通りです。
- 職種名と業務内容(具体的に。1日の流れがあると良い)
- 応募資格(必須条件と歓迎条件を分ける)
- 給与・賞与(レンジで良いので数字を出す)
- 勤務時間・残業の実態
- 勤務地(アクセスマップ付きが親切)
- 福利厚生の一覧
- 選考フロー(応募から内定までのステップと所要期間)
社員紹介・インタビューページ
応募意欲にもっとも影響するページです。リクルートワークス研究所の分析でも、「社員の声」は企業理解の重要な情報源とされています。
コツは、質問をテンプレート化して複数人に回答してもらうことです。「入社の決め手は」「1日の流れは」「入社前と実際の違いは」「どんな人に来てほしいか」の4〜5問で十分です。写真は社内で撮影したものを使います。ストックフォトは避けてください。
福利厚生・働く環境ページ
数字で語れるものは数字を出します。有給取得率、育休取得率、平均残業時間、研修制度の時間数。写真で語れるものは写真を出します。オフィス内装、休憩スペース、社内イベント。
特に中小企業は「大手に福利厚生で勝てない」と思い込んで情報を出さない傾向がありますが、これは見直したいところです。候補者が比較しているのは大手企業だけではありません。同規模の競合他社と比べて情報量が多いだけで、信頼感は上がります。
選考フローページ
応募から内定までのステップを、図解で示してください。「書類選考(3営業日以内にご連絡)→ 一次面接(オンライン可)→ 最終面接 → 内定(最終面接から5営業日以内)」というように、各ステップの所要期間まで書くと応募のハードルが下がります。
「応募する」ボタンへの導線は、このページのすべてのセクション末尾に置いてください。選考フローを読み終わった直後が、もっとも応募意欲が高まるタイミングだからです。
応募率を上げるデザインの具体ポイント
構成が固まったら、次はデザインの話です。採用サイトのデザインで成果に直結するポイントを、優先度順に説明します。
ファーストビューの写真で印象が決まる
求職者が採用サイトにアクセスして、最初の3秒で目に入る情報がファーストビューです。ここで「この会社、ちょっと良いかも」と思わせられるかどうかで、ページの残りを読むかどうかが決まります。
これまで手がけた採用サイトのうち、応募率がもっとも改善したケースの共通点は「ファーストビューの写真を変えた」ことでした。抽象的なイメージ画像から、実際に働いている社員の表情にフォーカスした写真に差し替えただけで、直帰率が改善した案件が複数あります(15〜25%など)。
避けたいのは以下のパターンです。
- ストックフォト(外国人のビジネスマンが握手している写真など)
- オフィスの外観だけ(中が見えないと不安になる)
- 抽象的なCGやイラスト(採用サイトでは逆効果になりやすい)
- テキストだらけのファーストビュー(読まれにくい)
CTAボタンの設計
「応募する」「エントリーする」「まずは話を聞いてみる」。ボタンのラベルひとつで応募率は変わります。
夜職求人プラットフォームの案件で、応募ボタンのラベルをA/Bテストした経験があります。「応募する」と「まずは見学してみる」でテストしたところ、後者のクリック率が上回りました(1.4倍など)。ハードルの低いアクションを提示したほうが、初動の行動を起こしやすいわけです。
デザイン面では、CTAボタンは以下の原則を守ってください。
- ページ内の他の要素と明確に区別できる色(サイト全体のアクセントカラーを使う)
- 十分なサイズ(モバイルで最低48px四方のタップ領域)
- 適切な余白(ボタンの周囲に十分なスペースを確保して視認性を上げる)
- ページスクロールに追従する固定CTAの検討(特にモバイル)
スマートフォン最適化は「対応」ではなく「前提」
求職者の多くはスマートフォンで採用サイトを見ています。Indeedのデータでは、求人検索の約70%がモバイルデバイスからとされています。特に20〜30代の若手層は、スマホだけで転職活動を完結させるケースも増えています。
スマホでの応募体験を最適化するために、以下を確認してください。
- フォームの入力項目は最小限に(名前・連絡先・職歴の要約くらいで十分)
- 電話番号をタップで発信できるようにする(
tel:リンク) - 写真や動画がモバイルで適切に表示されるか
- ページの読み込み速度(3秒以上かかると離脱率が急上昇する)
- 横スクロールが発生していないか
配色と余白のルール
配色はメインカラー1色、アクセントカラー1色、ベース(白またはライトグレー)の3色構成で十分です。CTAにだけアクセントカラーを使い、色数を抑える。色が多いと視線が散って、どのボタンも目立たなくなります。
余白はセクション間に最低60px以上取ってください。モバイルでセクションの切れ目がわからないデザインは、情報構造が伝わりにくくなります。
写真と動画で質を上げる方法
プロのカメラマンに依頼すると1日10〜30万円かかりますが、スマホのポートレートモードでも十分な品質の写真は撮れます。クライアントに提案しているのは「社内撮影ガイドライン」を作ることです。ポイントは3つです。
- 自然光を使う。窓際で午前10時〜14時の撮影がベスト。蛍光灯だけの部屋は顔色が悪く映りがち
- 背景を整理する。画角内の不要物を片付けるだけで写真の印象が変わる
- 人の表情を撮る。施設や設備より「人」を優先。作業中の手元、打ち合わせの笑顔、休憩中の表情
動画も同様です。1〜2分の社員インタビューをスマホで撮り、CapCutなどでテロップを入れるだけでも滞在時間が伸びます。Wistiaの調査では、採用ページに動画を設置することで応募率が向上したというデータもあります(34%など)。
応募フォームの設計
せっかく採用サイトを見て「応募しようかな」と思っても、フォームの段階で離脱するケースは想像以上に多いです。
ある案件で応募フォームの入力項目を13項目から5項目(氏名・電話番号・メールアドレス・希望職種・簡単な自己紹介)に減らしたところ、フォーム完了率が改善しました(2.3倍など)。志望動機や詳細な職歴は、面接の段階でヒアリングすれば十分です。応募段階で求めると、ハードルが上がって母数が減ります。
フォーム設計のチェックリストです。
- 入力項目は5〜7個以内
- 必須項目と任意項目を明確に区分
- スマホで入力しやすいフォーム幅(全幅推奨)
- 入力中のリアルタイムバリデーション(送信後にエラーが出るとストレスになる)
- 送信後の完了画面に次のステップを明記(「3営業日以内にご連絡します」など)
- SSL対応(httpsは必須。個人情報を扱うため)
加えて、フォーム以外の応募導線も用意しておくと取りこぼしが減ります。電話、LINE、メール。フォームを入力するのが面倒な層は一定数いるので、複数の窓口を置くことが重要です。
Indeed・Googleしごと検索との連携
採用サイトを作っただけでは、そこにたどり着く候補者は限られます。求人媒体との連携が欠かせません。
Indeed連携
Indeedには「直接投稿」と「クローリング(自動読み込み)」の2つの掲載方法があります。採用サイトをIndeedのクローリング対象にするには、以下の条件を満たす必要があります。
- 各求人に固有のURLがある(1職種1ページ)
- 仕事内容、勤務地、会社名が明記されている
- 応募方法がページ内で完結する(外部サイトへの遷移を挟まない)
- 求人情報が自由にアクセスでき、ログイン不要で閲覧可能
つまり、前述の「職種ごとに1ページ」の構成にしておけば、Indeedのクローリング条件を自然に満たせます。採用サイトの設計段階からIndeed連携を見据えておくと、あとで対応に困りません。
Googleしごと検索(Google for Jobs)
Googleで「〇〇市 介護 求人」と検索すると、検索結果の上部に求人情報がカード形式で表示されることがあります。これがGoogleしごと検索です。
ここに自社の求人を表示させるには、採用サイトの各求人ページに構造化データ(JSON-LD形式のJobPosting)を実装する必要があります。
<script type="application/ld+json">
{
"@context": "https://schema.org/",
"@type": "JobPosting",
"title": "介護スタッフ",
"description": "有料老人ホームでの介護業務全般...",
"datePosted": "2026-03-01",
"validThrough": "2026-06-30",
"employmentType": "FULL_TIME",
"hiringOrganization": {
"@type": "Organization",
"name": "株式会社サンプル",
"sameAs": "https://example.com"
},
"jobLocation": {
"@type": "Place",
"address": {
"@type": "PostalAddress",
"addressLocality": "渋谷区",
"addressRegion": "東京都",
"addressCountry": "JP"
}
},
"baseSalary": {
"@type": "MonetaryAmount",
"currency": "JPY",
"value": {
"@type": "QuantitativeValue",
"minValue": 250000,
"maxValue": 320000,
"unitText": "MONTH"
}
}
}
</script>
構造化データの実装は制作会社やエンジニアに依頼することになりますが、テンプレート化しておけば職種追加のたびに工数はかかりません。Googleしごと検索は無料で表示されるため、対応しておく価値が高い施策です。
採用サイト制作の進め方
採用サイトをどう作るか。選択肢は大きく3つです。
| 方法 | 予算目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 制作会社に全面委託 | 50〜300万円 | 品質安定・工数削減 | 費用が高い・更新に依頼が必要 |
| CMS/SaaSで自社制作 | 無料〜月数万円 | 低コスト・短期立ち上げ | デザインの自由度が低い |
| 既存サイトに採用セクション追加 | 10〜50万円 | 最も手軽 | ターゲットが混在しがち |
制作会社への委託は、撮影からコーディングまで一括で任せられるので、採用に本気で取り組む中堅企業に向いています。CMSを入れておけば更新の依頼頻度は減らせます。
CMSテンプレートやSaaS(engage、採用係長、Airワーク 採用管理など)は、コストを抑えたい場合に現実的です。ただしテンプレートそのままだと他社と見た目が被りやすい点は注意してください。
既存サイトへの追加は、まずはこの形で始めて、採用が事業課題として大きくなった段階で独立サイトに移行するという段階的アプローチが現実的でしょう。
運用と改善
採用サイトは公開がゴールではなくスタートです。公開後に最低限やっておきたいことを書きます。
GAでの計測設定を、まず整えます。ページビュー、スクロール率、フォーム到達率、フォーム完了率。この4つは最低限取れるようにしておいてください。どのページで求職者が離脱しているかがわからないと、改善のしようがありません。
応募者へのヒアリングも有効です。面接時に「採用サイトのどこを見ましたか」「何が応募の決め手になりましたか」と聞いてみてください。定性データは数値だけではわからない改善のヒントをくれます。
コンテンツの定期更新も忘れたくないところです。社員インタビューは半年〜1年に1回は追加する。募集要項は条件が変わったらすぐに反映する。更新日が古い採用サイトは、それだけで「この会社、もう採用していないのでは」という印象を与えます。
A/Bテストの活用も効果的です。ファーストビューの写真、CTAのラベル、フォームの項目数。ひとつずつ変数を変えてテストすると、何が効いているのかが見えてきます。
求人プラットフォームの運用に関わるなかで実感するのは、採用の成果はサイトの見た目よりも「情報の質 × 導線の設計 × 改善の回数」で決まるということです。最初から完璧なサイトを目指すよりも、まず公開して、データを見ながら改善し続ける。この姿勢のほうが成果に近づきます。
事例から学ぶ改善プロセス
参考になる事例をひとつ紹介します。
飲食チェーンの採用サイトをリニューアルした案件で、公開前後の数値比較です。
| 指標 | リニューアル前 | リニューアル後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 月間応募数 | 8件 | 27件 | 約3.4倍 |
| フォーム到達率 | 12% | 31% | 約2.6倍 |
| フォーム完了率 | 34% | 68% | 約2.0倍 |
| 面接辞退率 | 42% | 18% | 約57%減少 |
やったことは以下の通りです。
- ファーストビューをストック写真から社員の実写に変更
- 募集要項ページを全職種まとめから職種別ページに分割
- 社員インタビューを0件から6件追加(調理・ホール・店長それぞれ2名)
- 応募フォームを15項目から6項目に削減
- Googleしごと検索の構造化データを実装
- モバイルでの固定CTAバーを追加
デザイン自体はそこまで凝ったものではありません。WordPressにSWELLテーマをベースにして、採用向けにカスタマイズした形です。成果を分けたのは装飾ではなく、情報の充実度と導線の設計でした。
採用サイトの事例について、もう少し詳しく知りたい方は採用サイトの事例記事もあわせてご覧ください。業種別の構成パターンや、デザインの方向性を事例ベースで解説しています。
採用サイトで成果を出すためのチェックリスト
最後に、確認項目をまとめます。
- 求職者が知りたい4情報(仕事内容・社風・待遇・選考フロー)が揃っているか
- 職種ごとにページが分かれているか
- 社員インタビューが掲載されているか(最低3名以上が理想)
- ファーストビューに実写の社員写真があるか
- CTAボタンが目立ち、すべてのページから1クリックで到達できるか
- スマートフォンで快適に閲覧・応募できるか(読み込み3秒以内)
- 応募フォームの入力項目は7個以内か
- フォーム以外の応募手段(電話・LINEなど)があるか
- Indeedのクローリング条件を満たしているか
- Googleしごと検索の構造化データが実装されているか
- GAの計測設定が完了しているか
- コンテンツの更新担当者と更新頻度が決まっているか
ひとつずつ潰していけば、高額な求人広告費をかけなくても応募数を増やせます。採用は企業の成長に直結する課題です。サイトの作り方ひとつで、来てくれる人の質も量も変わります。
株式会社ティーラでは、採用サイトの企画・設計からデザイン・実装、公開後の改善運用まで一貫して支援しています。現状の採用課題のヒアリングから始めますので、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 株式会社ONE「求職者の動向・意識調査2022」
- エン・ジャパン「転職者の本音アンケート」 https://corp.en-japan.com/newsrelease/
- マイナビ「転職動向調査2024年版」
- リクルートワークス研究所 https://www.works-i.com/
- Indeed Japan「採用市場レポート」 https://jp.indeed.com/press/releases
- Indeed「採用企業向けヘルプ」
- Google検索セントラル「求人情報」 https://developers.google.com/search/docs/appearance/structured-data/job-posting
- Wistia https://wistia.com/learn