「うちのサイト、もう5年くらい放置しているんですけど、そろそろなんとかしたほうがいいですよね」

先日、精密機器メーカーの総務部長からこんな相談を受けました。見せてもらったサイトは、スマホ対応されておらず、会社概要のページには前々社長の名前が載ったまま。採用ページには2021年の募集要項が残っている状態でした。

これ自体は珍しくない話です。むしろ、コーポレートサイトに手を入れていない中小企業のほうが多いくらいです。総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、自社のWebサイトを開設している企業は全体の90.8%ですが、そのうち定期的に更新している企業は半数以下にとどまっています。

ただ、放置サイトの問題は見た目だけではありません。そのメーカーの場合、ハローワーク経由の候補者の辞退率が高いという課題がありました。理由は「ホームページを見て不安になった」。求人票の好条件と、更新の止まったサイトの印象が噛み合わないわけです。

コーポレートサイトは、名刺であり、ショールームであり、面接の第一印象でもあります。この記事では、これから新規制作やリニューアルを考えている企業向けに、コーポレートサイトの作り方を実務目線で解説していきます。

そもそもコーポレートサイトに何を載せるのか

コーポレートサイトに必要なページを考えるとき、「とりあえずテンプレ通りに」で作ると大抵うまくいきません。会社によってサイトの役割が全然違うからです。

ただ、どんな会社でもまず揃えておきたい「基本ページ」はあります。先にそれを整理してから、目的別のカスタマイズに進みます。

基本ページ一覧

ページ内容備考
トップページ事業概要、強み、最新情報への導線ファーストビューが最重要
会社概要会社名、所在地、設立年、代表者、資本金、従業員数、沿革取引先や金融機関が必ず見る
事業内容 / サービス紹介何をやっている会社なのか1事業1ページが理想
お知らせ / ニュースプレスリリース、メディア掲載、お知らせ更新頻度が信頼感に直結
お問い合わせフォームまたは連絡先項目は最小限に
プライバシーポリシー個人情報の取り扱いについて法的に必要

ここまでで6ページです。10人規模の会社であれば、これだけでも十分機能します。

加えて、目的によって追加するページが変わります。次のセクションで具体的に見ていきます。

目的別の構成パターン(3つの型)

クライアント案件でコーポレートサイトを設計するとき、最初に「このサイトの一番の目的は何ですか」と聞くようにしています。返ってくる答えは、だいたい3パターンに集約されます。

パターンA:ブランディング重視型

「会社としての信頼感を伝えたい」「取引先や投資家に安心してもらいたい」という目的です。

このタイプは、上場企業や老舗メーカー、金融・不動産関連に多いです。

追加すべきページは次のとおりです。

  • 代表メッセージ:経営のビジョンや姿勢。ストック写真ではなく代表の撮りおろし写真を使うだけで印象が変わります
  • 沿革(詳細版):年表形式に加え、各時期の写真やエピソード
  • IR情報(上場企業の場合):有価証券報告書、株主総会資料
  • CSR / サステナビリティ:環境対応や社会貢献活動

以前、設立40年の建設会社のサイトを作った際、代表メッセージのページに創業時の写真と現在の比較写真を並べたところ、取引先から「御社の歴史がよくわかった」と直接連絡が来たそうです。数値で測りにくい施策ですが、BtoBの場合、こうした「信頼の積み上げ」がボディブローのように効いてきます。

デザインの方向性としては、余白を多めにとった落ち着いたレイアウト。色数は抑え、写真のクオリティで勝負します。フォントはゴシック体ならNoto Sans JP、明朝体を使うなら游明朝やTP明朝が定番です。

パターンB:採用強化型

「新卒・中途の応募を増やしたい」「採用サイトを別で作るほどの予算はない」という目的です。

中小企業に非常に多いパターンです。というより、コーポレートサイトのリニューアル理由で一番多いのが「採用に困っている」かもしれません。

追加すべきページは次のとおりです。

  • 採用トップ:求める人物像、働く環境の概要
  • 社員インタビュー:最低3名。部署・年齢・入社経路が異なる人を選ぶ
  • 募集要項:職種別に分ける。給与・休日・福利厚生は具体的に書く
  • オフィス紹介 / 1日の流れ:入社後のイメージを持ってもらう

ここで強くお伝えしたいのは、社員インタビューの写真にストックフォトを使うのは避けたほうがいいということです。候補者は「この会社に入ったらどんな人と働くのか」を見に来ています。笑顔のビジネスパーソンの素材写真を見せられても、何も伝わりません。スマホ撮影でも構わないので、実際に働いている人の写真を使うことをおすすめします。

あるITベンチャーのクライアントで、社員インタビューページを追加し、Indeedからの導線を整備したところ、3ヶ月で応募数が月6件から月19件に増えました。サイト全体の制作費は約120万円だったので、採用媒体に毎月10万円以上払っていたコストと比べると、すぐに元が取れた計算です。

デザインの方向性としては、トーンは明るめ。写真を大きく使い、動画があればファーストビューに置きます。ターゲットの年齢層に合わせたビジュアルが重要で、20代向けならカジュアル、30〜40代向けなら落ち着きと誠実さのバランスが求められます。

パターンC:問い合わせ獲得型

「Webから商談につながる問い合わせを増やしたい」という目的です。

BtoBのサービス業、SaaS、コンサルティング会社に多いタイプ。ここが一番「成果が数字で見える」構成です。

追加すべきページは次のとおりです。

  • サービス詳細:料金表または料金の目安。「要問い合わせ」だけだと離脱率が上がります
  • 導入事例 / お客様の声:業種・課題・成果をセットで。最低5件は欲しい
  • よくある質問(FAQ):問い合わせの心理的ハードルを下げる
  • 資料ダウンロード(あれば):ホワイトペーパーやサービス概要PDF
  • ブログ / コラム:SEO流入を獲得するための受け皿

このパターンでは導線設計が命です。サービスページ下部のCTAボタン、事例記事末尾の「同様の課題をお持ちの方へ」導線、ヘッダーの問い合わせボタン。この3つは最低限設置することをおすすめします。

デザインの方向性としては、CTAボタンが目立つ配色。ページの流れは「課題提起 → 解決策 → 実績 → CTA」が王道です。あまりアーティスティックにせず、情報が読みやすいことを優先します。

この3パターンは排他的ではなく、実際は「ブランディング60%+採用40%」のように組むことが多いです。ただ、メインの目的を1つ決めてから広げるほうが結果は出やすいです。

デザインで押さえたい5つのポイント

構成が決まったら、次はデザインです。ここでは見た目の好みではなく、「成果に影響するデザインの判断基準」を5つ挙げます。

1. レスポンシブ対応ではなく「モバイルファースト」で

レスポンシブ対応は当たり前です。問題は、PC版を作ってからスマホに縮小するやり方がまだ多いこと。Googleのモバイルファーストインデックス(MFI)では、検索順位の評価対象はスマホ版のページです。

ワイヤーフレームは必ずスマホ版から作ります。PC版はそれを横に広げるだけなので、逆よりスムーズです。

2. ファーストビューに「何の会社か」を3秒で伝える

Nielsen Norman Groupの調査では、閲覧時間の57%がスクロールなしで見える範囲に集中します。ファーストビューをイメージ動画で埋め尽くして「何の会社か」がわからないサイトは多いです。動画は使って構いませんが、キャッチコピーと事業領域のテキストは必ず重ねて表示してください。

3. 配色は3色以内。コーポレートカラーを軸にする

デザインに慣れていない方がやりがちなのが、色を使いすぎることです。コーポレートカラーをメインに、アクセントカラーを1色、あとはグレー系のテキストカラー。この3色で十分です。

CTAボタンにはアクセントカラーを使い、他の要素と視覚的に区別する。これだけでページの回遊性が変わります。

4. 写真は「撮る」ことを予算に組み込む

コーポレートサイトの印象を最も左右するのは写真のクオリティです。

素材写真だけのサイトはどうしてもテンプレート感が出ます。特に代表挨拶・社員紹介でストック写真を使うと逆効果になりがちです。

プロカメラマンの半日撮影は5〜10万円。100カット以上撮れるので、サイト全体で使い回せます。制作費100万円の案件で撮影10万円をケチる理由はありません。

5. 表示速度は「3秒以内」を死守する

Googleの調査によると、モバイルページの表示に3秒以上かかると53%のユーザーが離脱するとされています。

画像圧縮、不要プラグインの削除、キャッシュ設定。地味ですが、1秒の改善でコンバージョン率が数%変わることもあります。制作会社には「PageSpeed Insightsのモバイル80点以上」と具体的に伝えると認識がそろいます。

CMS選定(WordPress + SWELLを推奨する理由)

コーポレートサイトを自社で更新できるようにするなら、CMS(コンテンツ管理システム)の選定は避けて通れません。

結論から言うと、中小企業のコーポレートサイトなら、WordPress + 有料テーマ「SWELL」の組み合わせをおすすめしています。

理由は3つあります。

1つ目は、圧倒的なシェアと情報量です。WordPressのCMS市場シェアは世界で62.6%、日本では約80%です。困ったときに検索すれば解決策が出てくる。運用フェーズでは大きなメリットになります。

2つ目は、SWELLの操作性です。日本製テーマでブロックエディタに完全対応しており、HTMLの知識がなくてもお知らせ更新やブログ投稿ができます。買い切り17,600円(税込)で複数サイトに使い回し可能です。

3つ目は、SEO内部対策が標準装備されている点です。構造化データ、パンくずリスト、目次自動生成、OGP設定などが組み込まれており、プラグインを最小限に抑えられます。表示速度の面でも有利です。

もちろん、WordPress以外の選択肢もあります。

CMS向いているケース費用感
WordPress + SWELL中小企業の標準コーポレートサイトテーマ17,600円 + サーバー月1,000円前後
WordPress + オリジナルテーマデザインの自由度を最大化したい制作費に+30〜50万円
Wix / Squarespace5ページ以下の超小規模サイト月1,300〜3,000円程度
ShopifyECサイト兼コーポレート月33ドル〜
フルスクラッチ(React等)大規模・高機能・特殊要件300万円〜

WixやSquarespaceは手軽ですが、SEOの拡張性に限界があります。5年以上の運用を見据えるならWordPressが安定的です。

制作会社に依頼する場合の進め方

コーポレートサイトは会社の顔なので、プロに任せる判断は妥当です。ただし丸投げするとほぼ確実に失敗します。依頼から公開までの流れを整理します。

フェーズ1:事前準備(依頼前・2〜3週間)

制作会社に声をかける前に、以下を社内で整理しておくことをおすすめします。

  • サイトの目的:ブランディング/採用/問い合わせのどれが最優先か
  • ターゲット:誰に見てほしいのか(取引先、求職者、エンドユーザー)
  • 掲載したいコンテンツ:サービス紹介、事例、社員インタビュー等
  • 参考サイト:「こういう雰囲気がいい」を3〜5サイト
  • 予算感:上限金額と、その中でどこに重点を置きたいか
  • 希望納期:いつまでに公開したいか

これが揃っているかどうかで、提案の質が変わります。「お任せで」だと、テンプレート的な提案しか出てきません。

フェーズ2:制作会社の選定・契約(2〜4週間)

複数社に見積もりを取り、提案内容を比較します。このフェーズで見るべきポイントについては、「Web制作会社の選び方|失敗しないための比較ポイント7つ」で詳しく書いているので、合わせて読んでみてください。

1つだけ追加すると、契約書に「修正回数の上限」と「追加費用の条件」が明記されているかを必ず確認してください。これがあれば後のトラブルを防げます。

フェーズ3:設計・デザイン(3〜5週間)

サイトマップ作成 → ワイヤーフレーム → デザインカンプの順で進みます。

ワイヤーフレーム(ページの骨組み)の段階で、情報の過不足と導線を徹底的にチェックしてください。デザインが完成してから「やっぱりこのページも必要だった」と言い出すと、スケジュールも費用も大幅に膨れます。

フェーズ4:実装・コーディング(3〜5週間)

デザインをもとにHTML/CSSへのコーディング、CMSの組み込みを行います。ここは制作会社の作業がメインですが、途中でテスト環境(ステージング)を見せてもらい、実際の操作感を確認しておくと安心です。

フェーズ5:テスト・公開(1〜2週間)

ブラウザチェック、スマホ実機確認、フォーム動作確認、リンク切れチェック。チェックリストを制作会社に出してもらいましょう。

全体を通して、制作期間は2〜4ヶ月が標準です。10ページ以内のシンプルなサイトなら2ヶ月、20ページ以上で撮影や取材が入ると4ヶ月は見ておいたほうが安全です。

費用相場(50万円と300万円で何が違うのか)

「コーポレートサイトっていくらかかるの」は、もっともよく聞かれる質問です。

正直に言えば、「ページ数」「デザインの自由度」「機能」の3要素で費用は大きく変わるので、一概には言えません。ただ、目安として次のように整理しています。

費用帯内容の目安向いているケース
30〜50万円テンプレートベース、5〜8ページ、写真素材使用とにかく早く・安くサイトが欲しい
50〜120万円セミオーダー、10〜15ページ、一部オリジナルデザイン中小企業の標準的なコーポレートサイト
120〜200万円フルオリジナルデザイン、15〜25ページ、撮影込みブランディングや採用に本気で取り組む
200〜300万円以上大規模サイト、多言語対応、システム連携、動画制作込み上場企業やグローバル展開

50万円と300万円の差は、デザインのオーダーメイド度とコンテンツ制作のサポート範囲で生まれます。50万円ならテンプレートベースでテキスト・写真はクライアント用意。300万円ならゼロからのデザイン、撮影手配、ライティング、SEO設計、公開後の改善提案まで含まれます。

どちらが正解ということではなく、目的と期待するリターンに見合った投資をするのが判断基準です。採用難で年間300万円の広告費を使っているなら、200万円かけてサイトを強化し自社で応募を獲得できれば、1年で回収できる計算になります。

公開後に「育てる」視点を持つ

最後に、これだけはお伝えしておきたいことがあります。

コーポレートサイトは、公開して終わりではありません。むしろ公開してからがスタートです。

Google Analyticsを入れてアクセス状況を確認する。問い合わせフォームの通過率を見る。採用ページの滞在時間が短ければコンテンツを見直す。お知らせを月に1回は更新して「生きているサイト」であることを示す。

こうした地道な運用が、コーポレートサイトの価値を時間とともに高めていきます。

公開後6ヶ月間、月1〜2回の改善を続けたサイトと放置したサイトでは、問い合わせ数に2〜3倍の差が出ることもあります。

制作に100万円かけたなら、運用に月2〜3万円の予算を確保することをおすすめします。保守管理だけでなく、コンテンツの追加や改善に使える予算があるかで、サイトの寿命がまったく変わります。


コーポレートサイトの設計・制作に関するご相談は、株式会社ティーラで承っています。目的整理から構成設計、WordPress実装、公開後の改善まで一気通貫で対応可能です。お気軽にお問い合わせください。

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参考文献