去年の秋、あるBtoB商社の経営企画の方からこんな相談がありました。
「リニューアルを頼んだ制作会社と、途中から連絡がつかなくなったんです」
聞くと、サイトリニューアルを70万円で受けてくれた会社があり、最初の1ヶ月はトップページのデザイン案が出てきた。でもそこから2週間、3週間と返信が遅れはじめ、催促しても「確認中です」の一言。結局、デザインカンプ3ページ分を受け取ったところで完全に音信不通。預けた素材データも戻ってこない。仕方なく別の制作会社に一から依頼し直して、トータルの出費は当初の倍以上になった。
別のケースでは、「納品後に聞いていない費用を請求された」という話。制作費80万円で合意したのに、公開段階で「サーバー初期設定費5万円」「SSL設定費3万円」「公開作業費2万円」と次々追加され、最終的に100万円近くに。
こういった話は、残念ながら珍しくありません。多くのクライアント案件を経験してきた中で、「前の制作会社で痛い目に遭った」という理由でご相談に来られる方はかなりの割合で存在します。
ただ、逆に言えば、選び方の基準さえ持っておけば、こうしたトラブルの大半は回避できます。
この記事では、Web制作会社を比較するときに見てほしい7つのポイントを書きます。「なんとなくよさそう」で選ぶのではなく、契約前に確認できる具体的な質問とセットで紹介するので、提案を受ける際のチェックリストとして使ってみてください。
Web制作会社の「種類」をまず把握する
比較ポイントの前に、前提知識としてこれだけ。Web制作会社と一口に言っても、得意領域や規模感はかなり違います。
| タイプ | 特徴 | 費用感 |
|---|---|---|
| フリーランス / 個人事業主 | 小回りが利く。大規模案件には不向き | 10〜80万円 |
| 小規模制作会社(3〜10名) | ワンストップ対応。中小企業のコーポレートサイトが主戦場 | 50〜300万円 |
| 中〜大規模制作会社(10名以上) | チーム体制で大型案件やシステム連携に対応 | 200〜1,000万円以上 |
| マーケティング会社の制作部門 | 集客込みの提案が可能。デザインの自由度は低めのことも | 100〜500万円 |
「5ページのコーポレートサイト」と「EC機能付きで月間10万PVに耐えるサイト」では、選ぶべき会社が全然違います。まず「自分たちが必要としているのはどの規模の制作か」を整理してください。中小企業庁の2024年度調査によると、中小企業のWeb制作外注費の中央値は約150万円です(出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和6年度確報 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/ )。
ポイント1:制作実績は「数」より「中身」を見る
ほとんどの制作会社がサイト上に実績を載せていますが、ここの見方にコツがあります。
「制作実績300件以上」みたいな数字は、正直あまり意味がありません。LPの1枚も大規模ECサイトのリニューアルも「1件」としてカウントしている場合があるので。
見るべきは、自社と似た業種・規模感の案件が含まれているかどうかです。BtoB製造業のコーポレートサイトを作りたいのに、実績が飲食店のLPばかりだと、業界理解や導線設計の感覚が合わない可能性があります。
チェックしたいのは以下です。
- 自社と同じ業種の制作実績があるか
- ビジネスの目的(問い合わせ獲得、採用強化など)に沿った構成になっているか
- 公開後のPVやCVRの変化など、成果の数字が語られているか
実績ページが画像のギャラリーだけで、制作の背景や成果に触れていない会社は、案件を「作品」としてしか捉えていない可能性があります。課題解決としてWebを作っている会社なら、「なぜこのデザインにしたか」「公開後にどうなったか」まで書いているはずです。
ポイント2:提案力はヒアリングの「深さ」でわかる
ここが一番わかりやすい判断基準かもしれません。
良い制作会社は、最初の打ち合わせでこちらの話をかなり丁寧に聞いてきます。
- 御社の事業における、Webサイトの役割は何ですか?
- 今のサイトで、具体的にどんな課題を感じていますか?
- 問い合わせが来たあと、どういう営業フローでクロージングしていますか?
- 競合はどこだと思っていますか?
「どんなデザインがいいですか」「ページ数はいくつですか」しか聞かない会社と、事業構造やユーザーの行動パターンまで聞いてくる会社では、提案の質がまるで違います。Webサイトは「ビジネスの目的を達成する装置」だから、そのための情報をヒアリングで取りに来ているかどうかが判断基準になります。
あるメーカーのクライアントの話ですが、最初に声をかけた制作会社は、初回打ち合わせがほぼ「会社紹介+料金プランの説明」で終わったそうです。別の提案では、初回に1時間半かけて事業の話を聞き、競合3社のサイト分析を持参して仮説をぶつけた。「提案書の前の段階で事業を理解しようとしてくれた」のが決め手だったと後から聞きました。
ポイント3:技術スタックが自社の要件に合っているか
技術の話は難しく感じるかもしれませんが、最低限これだけは確認してください。
何で作るか。大きく分けるとこの3パターンです。
| 構築方式 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| WordPress | 自分で更新しやすい。テーマやプラグインが豊富 | セキュリティ対策が必須。カスタマイズに限界がある場合も | ブログやお知らせの更新が多いサイト |
| フルスクラッチ(React、Next.jsなど) | 自由度が高い。表示速度を最適化しやすい | 開発コストが高い。更新に技術者が必要な場合がある | 独自のUI/UXが必要なサービスサイト |
| ノーコード / ローコード(STUDIO、Wixなど) | 初期費用が安い。構築が速い | デザインや機能の拡張に制約。SEOの細かい制御が難しい場合がある | 予算が限られた小規模サイト |
ここで大事なのは、「最新の技術を使っているから良い」ではなく、自社の運用体制と合っているかどうかです。
社内にWeb担当者がいなくて自分たちで更新したいのに、Reactで作られたら更新のたびに費用が発生します。逆に、会員機能が必要なのにWordPressで無理やり作ると後から苦労する。
提案段階で「なぜこの技術を選んだのか」を聞いて、自社の運用体制まで考慮した回答が返ってくるかどうか。技術ありきではなく、課題ありきで技術を選んでいるかを見てください。
ポイント4:保守運用体制は「納品後の図面」
「サイトが完成したら、次は自分たちで何をすればいいのか」——ここまでイメージできているでしょうか。
ここは見落とされがちですが、長期的にはここが一番大事だと考えています。
Webサイトは「作って終わり」ではない。公開後にやることは山ほどあります。
- ドメイン・サーバーの管理
- CMS(WordPressなど)のアップデート
- セキュリティパッチの適用
- コンテンツの追加・修正
- SSL証明書の更新
- バックアップの管理
これらを誰がやるのか、月額いくらかかるのか、契約前に確認しておくことが重要です。
よくあるトラブルが、納品後に保守契約を結ばず、WordPressが3年間放置されてセキュリティ事故が起きるケース。WordPressは世界のWebサイトの約43%が使っているCMS(出典:W3Techs https://w3techs.com/technologies/details/cm-wordpress )で攻撃対象になりやすく、IPAの脆弱性報告も年々増加しています(出典:IPA https://www.ipa.go.jp/security/reports/vuln/software/index.html )。
確認すべき項目はこのあたりです。
- 保守運用の月額費用(相場は月額5,000円〜5万円)
- 対応範囲(テキスト修正だけか、デザイン修正も含むか)
- 対応速度と緊急時の連絡手段
- サーバー・ドメインの名義(制作会社名義になっていないか)
特にサーバーやドメインの名義は事前に確認しておくことが重要です。制作会社名義だと、契約終了後にサイトの引っ越しが困難になったり、最悪の場合ドメインを人質にされるリスクがあります。自社名義で契約することが望ましいです。
ポイント5:料金の透明性——見積書の「行間」を読む
冒頭で書いた「納品後に追加費用を請求された」というトラブルは、見積書の確認不足が原因であることが多いです。
Web制作の費用は、ざっくりこういう構成になっています。
| 費目 | 内容 | 相場感 |
|---|---|---|
| ディレクション費 | プロジェクト管理、進行管理 | 総額の10〜20% |
| デザイン費 | ワイヤーフレーム、UIデザイン | 1ページあたり3〜10万円 |
| コーディング費 | HTML/CSS/JS実装 | 1ページあたり2〜8万円 |
| CMS構築費 | WordPress等のセットアップ、カスタマイズ | 10〜50万円 |
| レスポンシブ対応 | スマホ・タブレット表示の最適化 | デザイン・コーディング費の20〜50%増 |
| サーバー・ドメイン | 初期設定、年間費用 | 年1〜5万円 |
| 素材費 | 写真撮影、ストックフォト購入 | 案件による |
チェックポイントは「見積書に書いていないこと」です。修正回数の上限(「デザイン修正は2回まで、3回目以降は1回3万円」等)、公開作業費、原稿ライティングの有無、納品後のCMS操作レクチャー。これらが含まれているか含まれていないかで、最終的な総額が大きく変わります。
「同じ条件で見積もりを依頼して、半年間の総額で比較する」方法をお勧めします。制作費+保守費+その他の費用を含めた総額を出してもらう。月額の安さだけで比較すると、「想定外の費用」が積み上がります。
ポイント6:コミュニケーション体制は「スピード」と「窓口」
冒頭の「途中から連絡がつかなくなった」ケースのように、コミュニケーションの問題はWeb制作の最大のストレス要因です。
制作プロジェクトは通常2〜4ヶ月かかります。その間のやり取りがストレスフルだと、完成物のクオリティにも影響します。確認が遅れれば遅れるほど、スケジュールが押して、最後にバタバタと作り込みが甘くなる。
確認しておきたいのは、窓口は誰か(営業ではなくディレクターが直接窓口だとベスト)、連絡手段(メールだけだと遅い。Slackなどのチャットツール対応があるか)、レスポンスの目安(翌営業日以内が基準)、定例の頻度(週1回あると認識ズレが起きにくい)です。
ある食品メーカーのクライアントは、前の制作会社の窓口が営業担当だったため、デザインのフィードバックが正しく伝わらず3回修正しても意図と違うものが上がってきた。4回目で直接デザイナーと話して1回で解決。最初からディレクターが窓口であれば、3回分の手戻りは不要だったわけです。
ポイント7:SEO・マーケティングの視点を持っているか
最後のポイントは、ここ数年で急速に重要度が上がっている項目です。
Webサイトは「作る」フェーズと「使う」フェーズがあります。多くの制作会社は「作る」までが仕事で、公開後に検索エンジンからどう集客するか、問い合わせをどう増やすか、といった「使う」フェーズの知見がない。
これが何を意味するかというと、デザインは綺麗だけど検索にまったく引っかからないサイトができあがる可能性があるということです。
Googleのアルゴリズムはどんどん高度化しています。2024年以降はAI Overview(旧SGE)の導入で、検索結果の表示形式自体が変わってきている。こうした変化に対応したサイト設計ができるかどうかで、公開後のパフォーマンスが大きく変わります。
制作会社に確認してほしいのは、見出し構造(h1〜h3の設計方針)、metaタグの設定、表示速度(Core Web Vitals)対策、内部リンク設計、公開後のSEO相談の可否です。全部に「はい」でなくても構いませんが、最低限、見出し構造とmetaタグは制作段階で設計しておかないと後から修正が大変です。
モバイルからのアクセスが全体の約60%以上を占める現在(出典:Statcounter GlobalStats )、「モバイル対応している」だけでは不十分で、「モバイルを基準に設計している」レベルが求められています。
「作って終わり」の制作会社と、「作ってからが始まり」の制作会社
7つのポイントを書いてきましたが、根っこにある違いはシンプルです。
サイトを「納品物」として捉えているか、「改善し続ける資産」として捉えているか。
前者は綺麗なサイトを期日通りに納品したら仕事は終わり。後者は公開後のアクセス解析やCVR改善まで視野に入れて設計する。
多くの中小企業にとっては後者のほうが投資対効果が高い傾向にあります。作ったサイトを放置して3年後にまたリニューアル、を繰り返すのは費用がかさみます。公開後に定期的にデータを見て少しずつ改善していくほうが、長い目で見たときの成果は大きいです。
選定チェックリスト
最後に、提案を受ける際にそのまま使えるチェックリストを置いておきます。
| # | チェック項目 | 質問例 |
|---|---|---|
| 1 | 制作実績の質 | 「同じ業種で、公開後の成果まで把握している事例はありますか?」 |
| 2 | 提案力(ヒアリングの深さ) | 「うちの事業について、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」(※自分から聞かなくても向こうから聞いてくるかを見る) |
| 3 | 技術スタックの適合性 | 「この構築方式を選んだ理由を教えてください。うちの運用体制を考えたとき、他の選択肢はありましたか?」 |
| 4 | 保守運用体制 | 「公開後の保守運用はどういう体制ですか?月額費用と対応範囲を教えてください」 |
| 5 | 料金の透明性 | 「制作費、保守費、その他の費用を含めた半年間の総額を出してもらえますか?」 |
| 6 | コミュニケーション体制 | 「プロジェクトの窓口は誰になりますか?連絡手段と定例の頻度は?」 |
| 7 | SEO・マーケ視点の有無 | 「SEOを意識したサイト設計はどの程度やってもらえますか?」 |
複数の制作会社に見積もりを依頼するときは、この7つの質問を全社共通で投げてみてください。回答の具体性と深さを横に並べるだけで、かなり比較しやすくなります。
ティーラが大事にしていること
ティーラはデジタルエージェンシーとして、「制作 × 改善」を掲げています。サイトを作る段階から「公開後に何を計測して、どう改善するか」を設計に織り込む。問い合わせフォームやCTAの文言は、ABテストで検証する前提で設計します。公開して終わりではなく、データを見ながら改善を続ける。
社内にWeb専任の担当者がいない中小企業にとって、「制作だけ頼んで、あとは自分たちで運用してください」は負担が大きいです。だから弊社は、制作から改善まで地続きで対応しています。
もしいま、Web制作会社の選定で迷っている段階であれば、お気軽にご相談ください。サイトの現状をざっと見た上で、リニューアルが本当に必要なフェーズなのか、部分的な改善で済む話なのか、率直にお伝えします。
参考文献
- 中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和6年度確報 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/
- IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況」 https://www.ipa.go.jp/security/reports/vuln/software/index.html
- W3Techs「Usage statistics of WordPress」 https://w3techs.com/technologies/details/cm-wordpress
- Statcounter GlobalStats「Platform Comparison Chart」