少し前に、ある不動産系クライアントの担当者から「Claudeに変えたら逆にアウトプットの質が落ちた気がする」と連絡がありました。

その会社はちょうどChatGPTからClaudeに乗り換えたばかり。聞いてみると、プロンプトはChatGPTで使っていたものをそのまま流用しているとのこと。画面共有してもらうと、プロンプトが全部、自然言語のべた書きでした。Claude特有の機能を一切使っていない状態だったのです。

Claudeには、Claudeに合ったプロンプトの書き方があります。ChatGPTで培ったスキルはベースとして活きるのですが、Claudeの設計思想に合わせたチューニングをしないと、性能を十分に引き出せません。車を買い替えたのに、前の車の運転クセのまま乗っているようなものです。

ここでは、クライアントワークでClaudeを軸に運用してきた中で見えてきた、プロンプト設計のノウハウをまとめます。当メディアの記事「プロンプトエンジニアリング入門」で基本の4要素(ロール・コンテキスト・出力形式・Few-shot)は解説済みなので、ここではClaude固有のテクニックに焦点を当てます。

Claudeが「指示を読むAI」と言われる理由

まず、Claudeの特性を押さえておきます。

Anthropicの公式ドキュメントによると、Claudeは長い指示文の中にある制約条件を正確に拾うことに注力して設計されています。実際、クライアント案件で感じている最大の違いは「プロンプトの後半に書いた条件を無視しにくい」という点です。

ChatGPTだと、長いプロンプトを書いたときに、後半に書いた「ただし〇〇は避けてください」系の制約が抜け落ちることがそれなりにあります。Claudeは大きなコンテキストウィンドウを持っていて、長い入力への対応が得意です。そのため「条件を細かく書けば書くほど、それに応えてくれる」という感覚があります。

逆に言えば、Claudeには「雑に投げてもいい感じにしてくれる」という器用さが薄い面もあります。書いた通りに返してくる。だからプロンプト設計の精度が、そのままアウトプットの品質に直結します。

これが、冒頭のクライアントが「質が落ちた」と感じた原因でした。ChatGPTのときは曖昧な指示でもそこそこの出力が返っていたのが、Claudeでは「曖昧な指示には曖昧な出力」がストレートに返ってきていたのです。

XMLタグ。これがClaude最大の武器

Claudeのプロンプト設計で最も特徴的なのが、XMLタグによる構造化です。

Anthropicの公式ガイドでは、プロンプト内の情報をXMLタグで区切ることを推奨しています。HTMLのタグと同じ書き方で、任意のタグ名を使えます。

どういうことか、具体例で見てみてください。

まず、タグなし(ChatGPT式のべた書き)の例です。

あなたはBtoBマーケティングの専門家です。以下のデータをもとに、来月のコンテンツカレンダーを作ってください。月間PV: 35,000、主要流入キーワード: MA 比較、MA ツール おすすめ、マーケティングオートメーション 導入、ターゲット: 従業員50-300名の製造業マーケ担当、直近3ヶ月で成果が良かった記事: ① MA導入事例5選(PV 4,200/月)② リード育成の基本(PV 3,800/月)③ 展示会フォローメール術(PV 2,100/月)。カレンダーは記事タイトル、想定キーワード、記事の切り口、優先度を含めてください。8記事分お願いします。

次に、XMLタグあり(Claude最適化)の例です。

あなたはBtoBマーケティングの専門家です。
以下のデータをもとに、来月のコンテンツカレンダーを作ってください。

<site_data>
月間PV: 35,000
主要流入キーワード: MA 比較 / MA ツール おすすめ / マーケティングオートメーション 導入
ターゲット: 従業員50-300名の製造業マーケ担当
</site_data>

<high_performing_articles>
1. MA導入事例5選(PV 4,200/月)
2. リード育成の基本(PV 3,800/月)
3. 展示会フォローメール術(PV 2,100/月)
</high_performing_articles>

<output_format>
以下の列を含む表形式で8記事分:
- 記事タイトル
- 想定キーワード
- 記事の切り口(100字以内)
- 優先度(A/B/C)
</output_format>

情報量は同じです。でもClaudeに渡したときの出力品質がはっきり変わります。

理由は単純で、XMLタグがあると、Claudeは「ここからここまでがサイトデータ」「ここからが出力形式の指定」と構造を正確に把握できるからです。べた書きだと、どこまでがデータでどこからが指示なのか、モデル側が推測する必要があります。その推測コストが、出力のブレにつながります。

よく使うXMLタグのパターンをいくつか挙げておきます。

  • context:背景情報、状況説明
  • data:分析に使う数値やテキストデータ
  • instructions:具体的な作業指示
  • constraints:制約条件(やってはいけないこと)
  • output_format:出力形式の指定
  • examples:Few-shotの例示
  • tone:文章のトーン指定

タグ名は自由に付けられるので、自分がわかりやすい名前で構いません。重要なのは「情報のブロックを明示的に区切る」ことです。

冒頭の不動産クライアントにXMLタグの書き方を伝えたところ、2週間後に「全然違います。レポートのドラフトが一発でほぼ使える状態で出てくるようになった」と連絡がありました。やったことはタグで構造化しただけ。プロンプトの中身自体は変えていません。

System Promptの設計。プロジェクト単位で「人格」を作る

ClaudeにはSystem Prompt(システムプロンプト)という仕組みがあります。API経由で使う場合は直接設定できますし、Web版でも「プロジェクト」機能でカスタム指示を設定すると、実質的にSystem Promptとして機能します。

System Promptとは、会話の最初にClaudeに渡す「前提設定」のことです。ユーザーが送るメッセージとは別のレイヤーで、Claudeの振る舞いのベースラインを定義します。

これが想像以上に強力で、クライアント案件ごとにSystem Promptを作り込んでいます。

たとえば求人メディアの改善提案をしているプロジェクトでは、次のようなSystem Promptを設定します。

あなたはシニアマーケティングコンサルタントです。
夜職系求人メディアのグロースハックを専門としています。

<project_context>
クライアント: 夜職求人プラットフォーム
KPI: LINE応募のCVR、エリアピック商品の販売数
現在のフェーズ: A/Bテスト実施中、UI改善の提案段階
</project_context>

<output_rules>
- 提案には必ず数値的根拠を含める
- 「〜だと思います」ではなく「〜のデータに基づくと〜です」
- 最終アウトプットは日本語、ビジネス敬語
- 改善案は優先度(高/中/低)×工数(小/中/大)のマトリクスで整理
</output_rules>

<constraints>
- 競合メディアの具体的な内部データを推測で語らない
- 法的に微妙な施策(景品表示法グレー等)は提案しない
- クライアントのエンジニアリソースは限定的。大規模な開発を前提とした提案は避ける
</constraints>

こうしておくと、日々の会話で「このLPのCVR改善案を3つ出して」とだけ打っても、Claudeはプロジェクトの文脈を踏まえた提案を返してくれます。毎回「あなたは〇〇で、このプロジェクトは〜」と書く必要がありません。

System Promptを作り込むかどうかで、Claudeの実用度はかなり変わります。最初にしっかり時間をかけて設計する価値があるところです。

ポイントは、System Prompt内でもXMLタグを使って構造化すること。プロジェクトの文脈、出力ルール、制約条件を明確に分離しておくと、Claudeが混同しにくくなります。

Opus・Sonnet・Haikuの使い分け

Claudeには複数のモデルがあります。2026年6月時点のラインナップを整理すると、次のようになります。

モデル特徴向いている業務API入力単価(100万トークンあたり)
Opus 4.8最高精度。複雑な推論、長大なコード生成、高度な分析戦略レポート、複雑なコーディング、マルチステップの分析$5
Sonnet 4.6バランス型。速度と品質の最適解日常的な文章生成、提案書ドラフト、コードレビュー$3
Haiku 4.5高速・低コスト。シンプルなタスクを大量処理要約、分類、データ抽出、チャットボット応答$1

(出典:Anthropic「Models overview」、2026年6月時点)

実務では、業務の8割ほどをSonnetで回しています。残り1割強がOpus、数%がHaikuくらいの配分です。

それぞれ、どういう場面で使い分けているかを具体的に書きます。

Sonnet:日常業務のメインエンジン

クライアントへの提案書ドラフト、メールの下書き、ブログ記事の構成案、LPのコピーライティング。こういった日常タスクは基本的にSonnetです。

Sonnetは速度と品質のバランスが良く、コストパフォーマンスの面でも扱いやすいモデルです。Claudeをこれから使い始める人は、まずSonnetだけで十分だと思います。

あるWebメディアのSEO記事を月に十数本制作している案件では、構成案の作成から初稿生成までをSonnetで進めています。1記事あたりの土台づくりの時間が、人間がゼロから書いていた頃より大幅に短くなりました。品質チェックと専門的な加筆は人間が行いますが、土台を作る工程が速くなっています。

Opus:ここぞという場面の切り札

Opusを使うのは、たとえばこんな場面です。

  • クライアントの事業戦略に関わる分析レポート(ロジックの一貫性が重要)
  • 大規模なコードベースを読み込ませたリファクタリング提案
  • 複数の資料を横断して矛盾や抜け漏れを検出するレビュー作業

OpusはSonnetと比べて応答速度が遅く、API単価も高め。そのため「量を回す」タスクには向きません。でも、1回のアウトプットで高い精度を確実に出したい場面では、Opusの精度がものを言います。

あるクライアントの数年分の売上データ(月次・商品カテゴリ別・チャネル別)を分析して、成長ドライバーの特定と来期の投資配分提案を作る案件がありました。元データが複数のExcelシートに分散していて、それらの関連性を読み解く必要があった。Sonnetでは途中で論理が破綻したため、Opusに切り替えたところ、データの矛盾(あるシートの合計値と別シートの内訳が一致しない箇所)まで指摘してくれて、レポートの質が上がりました。

Haiku:大量処理のワーカー

Haikuの出番は、APIで自動処理を組むときです。

たとえば求人原稿の一次チェック(NGワードの検出、文字数の過不足、表記ゆれ)をHaikuで自動化するケースがあります。1件あたり数秒で処理でき、コストもごくわずか。月に数百件の原稿を処理しても費用は限定的です。

Web版だけを使う方にはHaikuを意識する場面は少ないですが、APIを使った業務自動化を考えている方にとっては、コスト設計の肝になるモデルです。

使い分けの判断基準を一言でまとめると、次のようになります。

  • 迷ったらSonnet
  • 「これは失敗できない」と思ったらOpus
  • 「同じ作業を何度も繰り返す」ならHaiku

実務で効くプロンプト設計テクニック5つ

ここからは、クライアントワークで実際に使っている、Claude特有のプロンプトテクニックを紹介します。

思考プロセスの明示指示

Claudeは「考える過程を見せて」と頼むと、推論のステップを段階的に示してくれます。これはOpusやSonnetに搭載されている拡張思考(Extended Thinking)機能とも相性が良いです。

<instructions>
以下の売上データを分析し、来期の重点施策を3つ提案してください。

分析を始める前に、まず以下のステップで思考を整理してください:
1. データから読み取れるトレンド(上昇/下降/横ばい)
2. トレンドの要因として考えられる仮説
3. 仮説を裏付ける/否定するデータポイント
4. 上記を踏まえた施策の方向性

その上で、具体的な施策を提案してください。
</instructions>

これが効くのは、Claudeがいきなり結論に飛ぶのを防げるからです。人間のコンサルタントが分析するときも、まずデータを眺めて仮説を立て、検証してから提案を組み立てます。そのプロセスをプロンプトで指定すると、提案の根拠が格段にしっかりします。

ネガティブ指示の明確化

「やってほしくないこと」を明示するテクニックです。Claudeは制約条件をよく守るので、特に効果があります。

<constraints>
- 「いかがでしたか?」「〜ではないでしょうか」等の定型フレーズを使わないでください
- 根拠のない数字(「約80%の企業が〜」等)を使わないでください
- 見出しは体言止めにせず、内容が伝わる完全な文にしてください
- 箇条書きは1セクションにつき5個以内に抑えてください
</constraints>

ChatGPTだと、ネガティブ指示(〜しないで)を入れても無視されることがありました。Claudeはここの遵守率が高い傾向にあります。実際に同じプロンプトを繰り返し投げて比較すると、Claudeのほうが制約を守る回数が多いという結果になりました。

出力の段階指定

一度に完成品を求めるのではなく、段階を踏ませるやり方です。

このプロジェクトの提案書を以下の3段階で作成します。

【第1段階】提案のアウトライン(見出しのみ)を出してください。
私が確認してOKを出したら第2段階に進みます。

【第2段階】各セクションの本文ドラフト(各300字程度)を書いてください。

【第3段階】私のフィードバックを反映した最終版を仕上げてください。

まず第1段階から始めてください。

これは特に長文の成果物を作るときに有効です。いきなり「5,000字の提案書を書いて」と頼むと、方向性がズレたまま5,000字が出てきて、全部やり直しになるリスクがあります。段階を踏めば、アウトラインの時点でズレを修正できます。

Claudeの「断り」を制御する

Claudeには、不確実な情報について「わかりません」と正直に返す傾向があります。これは安全性の観点では良い設計なのですが、ブレスト的に使いたいときには邪魔になることがあります。

<instructions>
以下のテーマについてブレインストーミングをしたいです。
この段階では正確性より発想の幅を重視します。
確信が持てない内容でも「仮説として」「可能性として」と前置きした上で
積極的にアイデアを出してください。
明らかに間違っている場合のみ省いてください。
</instructions>

こうすると、Claudeは「これは確定情報ではありませんが」と前置きしつつも、幅広いアイデアを出してくれます。精度重視のタスクとブレスト的タスクで、プロンプトのスタンスを切り替えるのがコツです。

具体的なペルソナへの回答指示

「読者」を具体的に設定すると、文体や情報の粒度が大きく変わります。

<audience>
読者は中小企業(従業員20〜50名)のマーケティング担当者です。
- AIツールは「使ったことはあるが、業務に定着はしていない」レベル
- 技術的な話より「で、何ができるの?」を知りたい
- 年間のマーケティング予算は500万円前後
- 上司への説明に使えるデータを常に探している
</audience>

ペルソナが明確だと、Claudeは専門用語をその人に合ったレベルまで噛み砕いてくれますし、事例も「大手向けの華やかな話」ではなく「その規模感でリアルに参考になる話」を選んでくれます。

Claude運用で意識したいルール

最後に、Claudeをメインツールとして使う中で意識しているルールを共有します。個人で使う方にも、チームで導入を検討している方にも参考になるはずです。

プロジェクト単位でClaudeの「プロジェクト」を分ける。1つの会話ウィンドウに複数案件の話を混ぜない。System Promptも案件ごとに最適化する。これだけでClaudeの回答精度が目に見えて上がります。

プロンプトのテンプレートをNotionで管理する。定型業務のプロンプトはテンプレ化して、Notionのデータベースに格納しておく。新しくプロジェクトに入った人も、テンプレートをコピペすればすぐに一定品質の出力を得られます。

Opusは「レビュー」に使う。Sonnetで作ったドラフトを、Opusに「この提案書のロジックに穴はないか、読み手の視点で指摘してください」とレビューさせる。Sonnetが「作る担当」、Opusが「チェックする担当」という分担です。

Claude Codeで反復作業を自動化する。これはエンジニアリングに踏み込む話ですが、Claude CodeというCLIツールを使えば、ターミナルからClaudeに直接コーディングや分析を任せられます。ファイルの一括処理やリポジトリ横断の修正など、Web版では面倒な作業をコマンドラインで処理できるのが強みです。

まとめると、Claudeは「ちゃんと指示を書く人」を裏切らない

Claudeの性質を一言で表すなら「忠実」です。書いた通りに返してくる。だからこそ、プロンプトの精度がダイレクトに効きます。

XMLタグで情報を構造化し、System Promptでプロジェクトの文脈を定義し、モデルの使い分けでコストと品質を最適化する。この3つを押さえるだけで、Claudeとの仕事は見違えるほどスムーズになります。

AIは、指示の質に比例して出力の質が上がるツールです。Claudeは特にその傾向が強い。だからこそ、プロンプト設計に時間をかける価値があります。

もしClaudeの活用をさらに深めたいなら、弊社が運営に関わっているAI活用コミュニティ「RIALA(リアラ)」を覗いてみてください。RIALAでは、Claudeを含むAIツールの実践的な使い方を、業種別のケーススタディとともに学べます。プロンプトのテンプレート共有や、メンバー同士のプロンプトレビューの場もあります。独学でやるより習得が速い環境です。

参考文献