去年の秋、あるクライアントとの定例ミーティングで、ちょっとした気づきがありました。

1時間のオンライン会議が終わって、いつものように議事録を書き始めたときのことです。録画を聞き返しながら、発言を拾って、要点をまとめて、決定事項とToDoを整理して。気がついたら45分が経っていました。1時間の会議に対して、議事録作成に45分。会議そのものより議事録のほうが疲れる、という状態が続いていました。

フリーランス型の体制で複数のクライアント案件を並行で回していると、週に10本以上のミーティングをこなすこともあります。そうなると、議事録の作成だけで週5〜6時間が消えていく計算になります。その時間があれば、もう1件クライアントワークができる。

これがAI議事録ツールを本気で検討し始めたきっかけでした。

会議の「その後」に、どれだけ時間を取られているか

具体的な話に入る前に、まず数字を見てください。

パーソル総合研究所の調査によると、日本のビジネスパーソンが社内会議に費やす時間は、メンバー層で年間154時間、部長級で434時間を超えます。そして、その約4分の1が「無駄だ」と感じられている。1万人規模の企業では、無駄な会議による損失が年間約15億円に達するというデータも出ています。

ただ、この数字には「会議そのもの」の時間しか含まれていません。議事録の作成、共有、確認、それに伴うやりとり。いわゆる「会議の後処理」の時間は、ここにカウントされていないのです。

実感としては、1時間の会議に対して、議事録作成に30分〜1時間。内容が複雑だったり、決定事項が多かったりすると、それ以上かかることもあります。しかも議事録を書く作業は、ただの文字起こしではなく、「何が重要だったか」を判断して構造化する知的作業なので、脳のリソースをかなり持っていかれます。

Acall社の2024年の調査では、ビジネスパーソンは1日の業務時間のうち約3割を会議とその調整に充てており、年間で約600時間にのぼるという結果が出ています。600時間。フルタイムで働く3ヶ月分以上です。あなたの会議の「その後」にも、似た時間が溶けていないでしょうか。

AI議事録ツールを選ぶまでの試行錯誤

「AIに任せよう」と思い立ったのが2024年の夏頃です。ただ、いざ調べてみると選択肢が多すぎて、逆に迷いました。

最初に試したのはOtter.aiです。英語の会議ではかなり評判が良く、無料プランがあるのも魅力でした。実際に使ってみると、英語の文字起こし精度は確かに高い。ただ、当時のミーティングは8割が日本語で、Otter.aiの日本語対応は物足りなさがありました。話者識別もうまくいかない場面が多く、1ヶ月ほどで使わなくなりました。

次に試したのがNottaです。これは日本語に強いという評判通りで、文字起こしの精度はかなり良かったです。58言語対応で、日本語と英語の混在にも対応している。料金もプレミアムプランが月額1,185円(年払い)と手頃です。ただ、求めていたのは「文字起こしの精度」だけではなく、「要約の質」と「アクションアイテムの自動抽出」でした。Nottaの要約機能も悪くはないのですが、「この会議で何が決まって、誰が何をやるのか」を正確に拾ってくれるか、という点では物足りなさがありました。

CLOVA Note(現在はLINE WORKS AiNoteに移行)も検討しました。LINEのエコシステムに乗っているので日本語の精度は高く、β版の段階で登録者数100万人を突破していたサービスです。ただ、個人やフリーランス向けというよりは法人のチーム利用を前提にした設計で、月額19,800円〜のチームプランは、ひとり規模の体制には重すぎました。ソロプラン(月額1,440円)もありますが、Web会議の自動参加機能がチームプラン以上に限定されていて、用途にフィットしませんでした。

tl;dvも2週間ほど使いました。無料プランが充実していて、録画・文字起こしは無制限。UIもきれいで、動画のクリップを共有できる機能は面白いと思いました。セールスチーム向けの機能が充実していて、CRM連携やコーチング機能など、営業組織には刺さりそうです。ただ、ディレクター業務では「動画クリップの共有」より「テキストベースの議事録とアクションアイテム」のほうが重要で、そこのフィットがいまひとつでした。

Circlebackを選んだ理由

最終的にたどり着いたのがCirclebackでした。Y Combinator出身のスタートアップで、2024年末にTechCrunchにも取り上げられたサービスです。

決め手になったのは3つでした。

1つ目は、アクションアイテムの抽出精度が段違いだったことです。議事録ツールの多くは「文字起こしの精度」を売りにしていますが、2025年の時点でどのツールもそこそこの精度は出ます。差がつくのは、そこから先の「要約」と「アクションアイテム抽出」の品質です。Circlebackは、会議の中で誰が何を約束したか、いつまでにやるのか、をかなり正確に拾ってくれます。「来週金曜までにワイヤーフレームを共有する」といった発言が、ちゃんとアクションアイテムとして拾われて、担当者と期限つきで整理される。これが他のツールとは明確に違いました。

2つ目は、対応プラットフォームの広さです。Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsはもちろん、Webex、Slack Huddles、GoToまで対応している。しかもデスクトップアプリでローカル録音ができるので、対面の打ち合わせにも使えます。クライアントによってZoomとGoogle Meetを使い分けることもあれば、ちょっとしたやりとりはSlack Huddlesでやることもある。プラットフォームを選ばないのは、実務上とても大きいです。

3つ目は、自動化の設計思想です。CirclebackはGoogleカレンダーやOutlookと連携して、予定されている会議に自動で参加してくれます。会議が終わると5分以内に議事録が生成される。さらにHubSpot、Salesforce、Notion、Linearなどとの連携で、会議内容を自動的にCRMやプロジェクト管理ツールに反映できます。

実際の運用ではNotion連携を使っていて、会議が終わると自動で議事録がNotionのデータベースに格納されます。クライアントごとにフィルタをかければ、過去の会議内容を一覧できる。これだけで「あの件、前回なんと言っていたか」の検索時間がほぼゼロになりました。

主要ツールの比較を整理する

ここまでの実体験を踏まえて、主要なAI議事録ツールを比較表にまとめます。これは実際に使った上での評価なので、公式サイトのスペック比較とは多少ニュアンスが違うかもしれません。

項目Circlebacktl;dvOtter.aiNottaLINE WORKS AiNote
月額料金(個人・年払い)$20.83$18(Pro)$8.33(Pro)1,185円1,440円(ソロ)
無料プランなし(7日間トライアル)あり(月10回AI要約)あり(月300分)あり(月120分)あり(300分)
日本語精度良い(100言語対応)良い(30言語対応)英語が得意、日本語はやや弱い非常に良い(58言語)非常に良い
要約・アクションアイテム非常に優秀良い普通良い普通〜良い
対応プラットフォームZoom/Meet/Teams/Webex/Slack Huddles/GoToZoom/Meet/TeamsZoom/Meet/TeamsZoom/Meet/TeamsZoom/Meet/Teams/Webex/LINE WORKS
対面会議の録音デスクトップ/モバイルアプリ対応非対応モバイルアプリ対応モバイルアプリ対応音声アップロード対応
CRM/外部連携HubSpot/Salesforce/Notion/Linear等6,000以上のアプリ(Zapier経由含む)基本的な連携Zapier経由で1,000以上限定的
特徴アクションアイテム抽出が秀逸動画クリップ共有、セールスコーチングリアルタイム字幕が強い日本語特化、コスパが良いLINE WORKSとの親和性

どのツールが「最強」かは、使う人の状況によって変わります。

日本語の文字起こし精度を最優先にしたいなら、NottaかLINE WORKS AiNoteが候補になります。とくにNottaは月額1,185円からで、日本語の認識精度はトップクラス。予算を抑えたいフリーランスや個人事業主には向いています。

セールスチームで使いたいなら、tl;dvの営業特化機能は魅力的です。商談の録画をクリップして共有する文化がすでにあるチームなら、かなりハマると思います。

「議事録の先の業務フロー」まで自動化したいなら、Circlebackが現時点での有力候補だと考えています。

実際にどれだけ変わったか

Circlebackを導入して約半年。具体的に何が変わったかを書きます。

議事録作成の時間は、週5〜6時間からほぼゼロになりました。正確には「ゼロ」ではなく、生成された議事録を5分ほど確認・修正する作業は残っています。ただ、それも「ゼロから書く」のと「出来上がったものをチェックする」のとでは、認知的な負荷がまるで違います。

「言った・言わない」問題も消えました。クライアントワークをしていると、「前回の会議で○○ということになったはず」という認識のズレが時々起きます。会議終了後すぐに議事録が共有されるようになってから、この問題がほぼなくなりました。「あのとき何を話したか」は、横断検索で一発です。

意外な副次効果として、会議中の集中度が上がりました。以前は「この発言は議事録に書かないと」と思いながらメモを取っていたのが、その必要がなくなった。結果として、会議中の議論に集中できるようになって、発言の質が上がった実感があります。クライアントから「最近、打ち合わせの密度が上がった気がする」と言われたこともありました。

月額の費用は約$25、日本円で約3,800円。週5〜6時間の節約を時給換算すると、投資対効果は十分に見合います。

導入する前に知っておくべきこと

良い点ばかり書いてきたので、注意点も正直に書きます。

まず、完璧ではありません。AIの文字起こしも要約も、100%の精度ではありません。とくに複数人が同時に話す場面や、専門用語が飛び交う場面では、誤認識が発生します。「確認なしでそのまま使う」のはリスクがあり、必ず人間の目でチェックする工程は残しておくことが望ましいです。

次に、録音の同意は必須です。AIツールが会議に参加する(Botが入る)ことに抵抗感を持つ人は一定数います。クライアントとの会議でCirclebackを使う場合は、事前に「会議の記録にAI議事録ツールを使わせていただいてもよいですか」と確認するのがマナーです。初回のミーティング冒頭で必ず伝えるようにしています。ほとんどの場合「便利そうですね、いいですよ」と言ってもらえますが、中には「会社のルールで外部ツールの録音はNG」というケースもあります。

最後に、日本語環境特有の問題です。Circlebackもtl;dvも、開発元は海外の会社です。日本語への対応は年々良くなっていますが、やはり英語と比べると精度差はあります。敬語の微妙なニュアンスを拾い損ねたり、カタカナ英語の表記が揺れたりすることはある。日本語精度を最優先にするなら、NottaやLINE WORKS AiNoteのほうが安定しているのは事実です。

それでもCirclebackを使っているのは、要約の構造とアクションアイテム抽出の品質が、その精度差を補って余りあるからです。ここは完全にトレードオフの判断になります。

議事録の自動化は「入口」にすぎない

最後に、少し視野を広げた話をします。

AI議事録ツールの導入は、業務効率化の「入口」としてはかなり優秀です。導入のハードルが低い、効果が目に見えやすい、失敗してもリスクが小さい。AIを業務に取り入れる最初の一歩として、ちょうどよいです。

ただ、本当に面白いのはその先です。議事録が自動化されたことで浮いた時間を使って、次に何を自動化するか。メールの下書き、レポートの初稿、データの分析、提案書の構成。一つひとつは小さな効率化でも、積み重なると働き方そのものが変わります。

実際、議事録の自動化をきっかけに、ChatGPTやClaudeを使ったドキュメント作成の自動化、Notionへのデータ連携の自動化と、活用範囲はどんどん広がっていきました。

ただ、この「広げていく」過程で一番むずかしいのは、ツールの使い方そのものではなく、「自分の業務のどこにAIを当てはめるか」を見極めることです。同じ議事録ツールでも、使い方次第で効果は大きく変わります。

そうした「自分の仕事に合ったAIの使い方」を探っていきたい方に向けて、RIALA(リアラ)というAI活用コミュニティがあります。フリーランスや個人事業主、小規模チームのメンバーが中心で、議事録の自動化に限らず、AIを業務に組み込む実践的なノウハウを共有しています。「ツールを入れてみたけれど、いまいち活用しきれていない」という方には、刺さる場所だと思います。

オンラインで参加できるので、気軽に覗いてみてください。

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参考文献